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中国の物流においてL4レベル無人車がついに実用化段階へ

L4級無人車の導入が急速に進行

2025年初頭、菜鳥グループは自社開発のL4級自動運転技術を搭載した新型無人車「GT Pro」を正式に発表しました。L4級とは、車両が人間の介入をほぼ必要とせず、完全自律的に運転タスクを遂行できる技術レベルを指します。GT Proは、都市の道路環境で自動的に障害物を回避し、ルートを計画して走行できる能力を備えています。特に、物流業界で課題となっている「ラストマイル配送」を効率化するために開発されており、ドライバーを必要としない完全無人運行を実現しています。

車両価格は14.98万元(約300万円)からで、購入時には5年間の技術サービス費用も含まれており、非常にコストパフォーマンスの高いモデルです。
GT Proは、外観、航続距離、機能、安全性など多くの面で改良されています。全長3694mm、幅1299mm、高さ2200mmという車体サイズは小型乗用車に近く、都市部の狭い道路や駐車エリアにも適応可能です。

また、車両の内部には5立方メートルの貨物スペースが設けられており、一度に600~800件の荷物を輸送できます。これにより、物流拠点から各配送ステーションまでの日常業務はもちろん、セール期間中の大量配送にも十分対応できる仕様となっています。

GT Proは、1回の充電で最大180kmの航続距離を実現しています。この長距離走行を可能にするため、車両は空気抵抗を減らす流線型のボディデザインを採用しています。また、急速充電機能を備えており、1.5時間でフル充電が完了します。これにより、短時間の充電で長時間の稼働が可能となり、業務効率がさらに向上します。

このL4級無人車の導入が進めば、配送コストの削減や人手不足の解消に大きく貢献することが期待されています。例えば、従来は複数人の配達員を雇用しなければならなかった都市部の配送拠点では、無人車によって労働力コストを大幅に削減できる可能性があります。また、運転ミスや疲労による事故のリスクも大幅に軽減されるでしょう。

無人車の開発においては、車両に搭載される高精度センサーが重要な役割を果たします。レーザーライダー(LiDAR)、高解像度カメラ、ミリ波レーダーなどが周囲環境を感知し、収集したデータを基にリアルタイムで車両の行動を決定する高度なアルゴリズムが導入されています。

自動運転技術と乗用車との違い

L4級無人車が登場したことで、同じL4技術を搭載した乗用車と比較する声も増えています。しかし、無人配送車と自動運転乗用車は、技術面で類似点がある一方、用途や運用条件には大きな違いがあります。

L4級自動運転技術は、乗用車、商用車問わず応用可能な技術ですが、無人車は特定の業務シーンに特化しています。主な用途として、物流配送、街中の清掃、施設内のパトロールなどが挙げられます。これに対して、乗用車向けの自動運転技術は、高速道路での長距離運転支援や都市部での自動車専用レーン走行など、一般利用者が日常的に利用する環境を前提としています。

また、無人配送車の場合、運転操作を完全に自動化するため、規制や法整備が不可欠です。特に都市部の公開道路を走行するには、車両が安全性基準を満たし、事故発生時の責任範囲が明確化される必要があります。

法規制と社会的課題

無人車が広範囲で運用されるためには、法規制の整備が進められなければなりません。L4級無人車は運転手が不在であるため、事故やトラブルが発生した際にどのように責任を負うのか、現行の交通法では十分に対応できない部分があります。また、都市によっては無人車が走行できるエリアが限られており、公共交通や一般車両との共存が求められます。

こうした法的課題に対応するため、中国では一部都市がテスト運用を通じて無人車の実証実験を行っています。2024年までに菜鳥グループは20以上の省・都市で半公開道路を利用した実証試験を実施しており、走行距離は500万キロを超えました。また、これまでに累計4000万件以上の配送を完了しており、無人車が現実の物流業務に適応できることが示されています。

感知技術とAIによる進化

無人車が都市部の複雑な道路環境で安全に運行するためには、センサーやAI技術による「感知」「判断」「制御」の精度が重要です。菜鳥グループは、アリババグループ傘下の研究機関「達摩学院」と協力し、AI技術を大幅に向上させています。同社の無人車は、0.01秒以内に100人以上の歩行者や車両の動きを識別し、即座に適切なルートを選択する能力を備えています。

一方、京東物流(JD Logistics)は、独自のAIモデルを搭載した第6世代無人車を発表しました。このモデルは空間と時間の情報を統合的に処理することで、道路状況に応じた最適なルート選択を可能にしています。こうした技術革新により、無人車の運行効率や安全性が向上し、都市部の配送業務でも実用レベルに到達しています。

通信技術とインフラの課題

都市部では、高層ビルやトンネルによってGPS信号が遮断されることがあります。これに対応するため、新石器(Neolix)は5G通信技術を活用し、無人車が通信遅延や信号喪失を防ぐ取り組みを進めています。5G-A(高度5G)技術を導入することで、車両間のリアルタイム通信が強化され、都市部でも安定した運行が可能となっています。

さらに、移遠通信や高新興といった専門企業が、無人車向けの車載通信モジュールを開発しており、通信インフラの整備が進められています。これにより、無人車は運行中のデータ通信をスムーズに行い、常に正確な位置情報を取得できるようになっています。

商業化におけるコスト課題

無人車の商業化においては、依然としてコストが高いという課題があります。例えば、九識智能の「Z2」モデルは約3.98万元(約85万円)で購入可能ですが、年間6万元(約128万円)の運用費がかかります。これは、現在の配達員の人件費とほぼ同等であり、中小物流企業には大きな負担となっています。しかし、長期的に見れば、無人車の運用コストは次第に低下すると予想されています。また、無人車は人間の配達員を完全に置き換えるのではなく、協力して業務効率を最大化する役割を担うことが期待されています。

結論:無人車の普及がもたらす変革

現在、中国国内では複数都市で無人車の試験運用が進められており、技術開発と法規制の整備が加速しています。今後、菜鳥グループや九識智能、新石器などの企業が競争を続ける中で、無人車は物流業界全体に新たなビジネスモデルと効率化をもたらすでしょう。無人車の普及は、物流業界のみならず都市生活全般に大きな変革をもたらす可能性があります。


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