アメリカ、対中国の小口輸入品免税措置を撤廃—越境ECに深刻な影響
2025年現地時間2月4日、アメリカ合衆国郵便公社(USPS)は、中国本土および香港からの小包の受け取りを即時に停止するとの驚くべき発表。この措置は、トランプ政権下で施行された新たな10%の対中関税と、長年続いてきた小口輸入品免税措置の廃止が背景にあります。これにより、越境EC業界、特に中国のオンラインショッピングプラットフォームは、事業運営に大きな困難を強いられることが予見されました。
その後、翌日の2025年現地時間2月5日には、USPSが方針を撤回し、中国からの小包受け取りを再開することを発表しました。前日に発表された方針変更の背後には、同じく4日に発効した中国への追加関税と、小額輸入品に対する免税措置(デミニミス・ルール)の廃止が関連していたとされています。
デミニミス・ルールでは、アメリカに発送される800ドル未満の輸入品が免税対象となっていたため、主にSheinやTemuなどの中国系ECサイトがこの免税措置を利用し、低価格でアメリカ市場に大量の商品を流通させていました。
小口輸入品免税措置の撤廃とその影響
アメリカでは「小口輸入品免税」政策により、価値800ドル以下の国際小包が免税対象となっていました。これにより、越境EC、特に中国のオンラインショッピングプラットフォームにとって大きなメリットが生まれました。2024年にはアメリカが処理した13億個以上の小包のうち、約48%が中国からのもので、SHEINやTemuなどが主導する中国製品が急速にアメリカ市場に浸透していました。
免税措置を利用することで、これらの企業は低価格で効率的な運営が可能となり、急速にアメリカ市場のシェアを獲得しました。しかし、今回の政策変更により、これらの企業は大きな転機を迎えています。
5日発表の方針変更
アメリカの郵政公社は、当初の発表から一転して中国と香港からの小包の受け取りを継続する方針を打ち出しました。この決定の背後には、USPSとアメリカ税関・国境警備局(CBP)が、効率的に新たな追加関税を徴収する仕組みを構築する必要があるという現実的な問題がありました。特に、受け取りを一時停止する理由については具体的に説明されていませんが、USPSは関税の徴収作業が困難になる可能性があることを認識しているとしています。CBPは、すべての国際小包を開封して検査する権限を持っていますが、現実にはすべての小包を一つ一つ確認するのは非常に非効率であり、実際の運用では選択的にチェックされることが多いです。これにより、小包の配達に混乱を最小限に抑えつつ、効率的に追加関税を徴収する体制を構築することが求められています。
新しい政策の影響
1. コストの増加
小口輸入品免措置が撤廃されたことにより、800ドル以下の輸入品にも関税が課せられるようになり、中国の越境EC事業者は運営コストの急増に直面しています。例えば、衣料品を取り扱うオンラインショップは、以前は小額免税措置を活用して安価な服をアメリカに販売していましたが、この政策変更により、1着あたり5ドルの追加コストが発生しました。これにより、利益が圧迫され、価格の引き上げを余儀なくされます。しかし、価格が上がると競争力が低下し、売上にも悪影響が出る可能性があります。
2. 物流の複雑化とコストの上昇
免税措置が撤廃されたことで、すべての小包に税関手続きが必要になり、物流の流れはこれまで以上に複雑になります。物流業者は税関申告や通関手続きに必要なリソースを増強しなければならず、その結果、物流コストは大幅に上昇します。また、税関審査の厳格化により、商品の配送時間が従来の7~10日から15~20日以上に延びる可能性があり、これが消費者にとって不満となり、他の購入チャネルに流れる可能性があります。
3. 市場競争の変化
アメリカ国内企業は、今回の政策変更により、価格競争で有利に立つ可能性が高くなります。これまで中国製品の価格競争力が強かったものの、関税の引き上げにより、価格競争力が低下します。これにより、アメリカ国内で製造された製品、特に衣料品は関税がかからないため、競争力が増し、市場でのシェア拡大が期待されます。
越境EC企業の対応策
アメリカ国内における対応策の模索
特に、中国を拠点とするSHEINやTemuといった主要企業は、これまで国際輸送コストを抑えるために活用していた「小額免税」を失うことになり、物流戦略の大幅な見直しを迫られています。これらの企業はまず、アメリカ国内に分配センターを設立することによって、配送時間を短縮し、物流コストの削減を進めています。従来は中国や香港から直接消費者に商品を送っていましたが、アメリカ国内に中継拠点を構えることで、関税や物流に関連する手続きを効率化し、顧客体験を改善することを目指しています。
また、製品の品質を向上させ、付加価値のある商品を開発することで、値上げをせざるを得ない状況でも消費者に対する魅力を維持しようとしています。これに加え、ブランドイメージの強化を図ることで、単なる「低価格戦略」から脱却し、中長期的な競争力の維持を目指しています。一方で、サプライチェーンの最適化も急務となっています。仕入れコストを抑えるために、より安価な原材料の調達ルートを模索したり、在庫管理を高度化するなど、内部の効率改善が進められています。
アメリカ経済への影響
今回の免税措置撤廃によって、アメリカ国内市場でも様々な影響が予想されます。特に、低所得層の消費者にとっては、価格の上昇が大きな負担となる可能性があります。これまでSHEINやTemuといった中国系ECプラットフォームは、安価な衣料品や日用品を提供することで、アメリカ国内の低収入層にとって重要な購買チャネルとなっていました。これらの企業がコスト増に伴い価格を引き上げれば、低価格帯の商品を求める消費者は選択肢を狭められ、結果として生活コストの増加に苦しむことが予想されます。
アメリカ政府がこうした措置を講じる背景には、SHEINやTemuの急速な拡大に対する警戒感があるとも言えます。これらの企業は、わずか数年でアメリカ市場の一角を占めるまでに成長し、アメリカ国内の同業他社にとって脅威となっています。特に、アメリカの中小規模の小売業者や国内製造業にとって、中国系企業による低価格戦略は市場競争を激化させる要因となっていました。こうした企業保護の観点から、関税引き上げや免税措置の撤廃が行われたと見る向きもあります。
国内企業の競争力向上と物価への影響
免税措置がなくなり、輸入品が価格競争力を失うことで、アメリカ国内の企業は一時的に有利な状況に立つと考えられます。特に、国内で生産される衣料品や日用品は、関税負担がないため、相対的に競争力が向上する可能性があります。そのため、アメリカ国内企業のシェア拡大が進むことが期待されています。しかし、その一方で、アメリカ国内企業がこのチャンスを活かせるかどうかは不透明です。アメリカでの国内生産は依然としてコストが高く、即座に低価格商品を提供することは難しい状況にあります。特に、労働コストや原材料費の高さが課題となっており、短期間での生産能力向上は容易ではありません。
また、アメリカ全体の物価にも影響が及ぶ可能性があります。輸入品に対する関税が増えることで、消費者物価指数に上昇圧力がかかり、インフレーションリスクが高まることが懸念されています。特に、すでにインフレが問題となっている中で、日常生活必需品の価格が上昇すれば、消費者の購買意欲が低下し、経済成長にも悪影響を及ぼす可能性があります。
政策変更への適応と将来の展望
こうした状況の中、越境EC企業は柔軟に政策変更に対応することが求められています。効率的な物流ネットワークの構築や、製品の差別化戦略を進めることによって、依然として競争力を維持する道は残されています。また、アメリカ市場における現地法人の設立や、法規制に適応した新たなビジネスモデルの開発も重要な課題となっています。
一方で、アメリカ国内では、ルールが頻繁に変更されることに対する不満が高まっている可能性があります。特に、トランプ政権下では関税や規制が短期間で度々見直されることがあり、企業や消費者にとって予測不能な環境が続いています。これにより、国内外の企業は長期的な戦略を立てづらくなり、結果として市場全体の不安定性が増すことになります。
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