独自のレギュレーションに則って開発されたSUPER GTのGT500マシン
世界的にも注目を集めているSUPER GT(S-GT)は、その前身として1994年に始まった全日本GT選手権(JGTC)の時代から、ツーリングカーレースの最高峰、いわゆる世界最速の“ハコ車レース”を目指してきた。その総合優勝を争うGT500はトヨタと日産、そしてホンダの国内ビッグ3が鎬を削りあうカテゴリーとして迫力あるせめぎあいで現在でも人気上昇を続けているが、競技車両も年々進化を続けている。シリーズが始まった当初は、市販モデルのモノコックフレームをベースに補強材を追加して剛性を上げたフレームが使用されていて、サスペンションも市販モデルの形式を変えないよう、改造が制限されていた。しかし数年おきに車両規則が変更され、結果的に緩和される方向に進んでいき、2014年シーズンからはカーボンコンポジットで成形されたモノコックフレームに前後インボード式ダブルウィッシュボーン・サスペンションを組付けたシャシーを採用。市販車輌のシルエットに“似せた”カウルを被せた純レーシングマシンが使用されている。フレームの前部に搭載されたエンジンはトヨタとホンダ、そして日産、3社が共同で企画したNRE(Nippon Race Engine)で各社がそれぞれに独自で開発した2L直列4気筒直噴ターボエンジンで燃料の流量を規制する燃料リストリクターが装着されている。そのことにより、パワーアップするためには、従来のようにより多くの燃料をエンジンに送り込むのではなく、燃焼効率を高めることが必要で、そのことが自動車メーカー3社の、S-GT参戦理由ともなっている。
カーボン製のモノコックを使用するシャシー関係では、そのモノコック自体を含めて多くのパーツが“共通部品”とされていて、例えばZFではクラッチと燃料系に使用されるモーターを供給している。パーツによる競争が展開される“コンペ”な状況でも、パーツ自体の性能は要求されるが、共通部品としてのパーツには、ノートラブルで安定したパフォーマンスを発揮した、イコールコンディションを保つ“性能”が要求されることになる。共通部品として採用されているのは、そうした要求に応えている証でもある。またZFでは2014年シーズンから各レースにおいて最も顕著な活躍を見せたメカニックに対して『ZFアワード』を授与。昨シーズンの最終戦ではGT300クラスでシーズン初優勝を飾った#55 ARTA NSX GT-3のチームARTAが選ばれてアワードが授与されている。またシーズン終了時には年間最優秀賞として『Best Mechanics of the Year』を選出して表彰。これには、ZFの技術に直接触れる機会の多いメカニックを応援する目的があり、昨シーズンはGT500クラスでチャンピオンに輝いた#12 カルソニック IMPUL ZのTEAM IMPULに授与されている。このようにZFは、共通部品の供給というハードのみならずメカニックの表彰というソフトウェア面からも、S-GTを力強く支えている。