大阪大正ベイエリア
観光客よりも、むしろ関西在住ネイティブのかたにご堪能いただきたい出汁昆布のような「隠れ味が味わい深い」散策コースが、大正区にある。
なんばCITY南館へ続く南海ガード下から西へ伸びる蔵前通。
難波米蔵、大阪球場からなんばパークスへと潰しては作り潰しては作りの場所を背に、西へ西へと歩いてゆく。
埋めたなんば新川、なんばJR踏み越えて、阪神高速、環状線をくぐると、大浪橋が見えて来る。
JRトラスと勘助島の渡し碑を右手に渡れば、もうそこは大正勘助アイランド。
左に曲がり三軒家筋、難波八坂の勘助碑、松筒自動車同好会、元祖工場夜景の大阪紡績会社(東洋紡)をなんくるないさと左右に見ながら南へ南へ。
今は工場と宅地だけ。
100年前は木場だった。
200年前なら造船所。
300年前は海だった。
阪神高速に当たったら右へ曲がりひとつ西の大正通へ。「南北に伸びるんなら大正筋やろ」とブツクサ言いながら泉尾の交差点を南へ下がると現れる浄泉寺彌陀院。
「モスクにしか見えなんだ、ようこんなんご門徒を頷かせよったな、真宗の坊んさんときどき無茶しよる、阿弥陀さん怒ってはらへんやろか」
木津川の川底さらったとも地下鉄で掘った残土を積み上げたとも口承残る霊峰・昭和山へ。その標高はなんと33M!果敢にアタックいただきたい。
現地シェルパ不要、ピッケル・アイゼン不要ラッセル不要の通年温暖ぶりも魅力。
登頂達成時の頂上から西の眺望、千歳橋/なみはや大橋/港大橋の海に架けた三連橋は、令和大阪ならではの絶景だ。
区役所を背にさらに西へ、大浪通へ抜けよう。「南北に伸びるんなら大浪筋やろ」とブツクサ言いながら、整った椎並木を千歳橋まで味わえる。
アーチ構造/トラス構造融合の2径間連続非対称ブレースドリブアーチ主橋梁部の千歳橋を渡るさなか、橋の真ん中で周囲を見渡そう。
大阪ベイエリア工場地帯を味わえる。
千歳橋を渡り終え、昭和の埋立地空気ありありの鶴町、地下鉄はいつ来るのやら、IKEA、東京インテリアの家具屋どおりを横目になみはや大橋。
3径間箱型中央部に断面桁橋、足元揺れる橋の真ん中で周囲を見渡そう。
本コース最大の景勝地、港好きにはたまらない大阪ベイエリアのパノラマ風景を視界360°で堪能できる。
目に入るものすべてが人造物の工業港風景は、他をもって代えがたいほど素晴らしい。
なみはや大橋渡り切り、みなと大橋くぐり抜け、運河越えればレンガ倉庫が現れる。
レンガ倉庫前に港の広場、潮の香りにさらされて、ドリンク片手に港風情を満喫しよう。
海岸通をさらに進めばみなと通、右に曲がり千舟橋、朝潮橋。
八幡屋商店街を冷やかしたあとかつてのパラダイス通り、みなと通を東へ東へ。市岡東の交差点・高速下を右に。
尻無川を歩いて渡れる地図にない隠れ歩道を見つけ出し、右には川に架けた虹のような尻無水門。
川を渡りきったらそのまま左手、泉尾の商店街、三泉の商店街へ。
奥まるほど突き進むほど裏ぶれる、令和平成で見られる大正の昭和レトロ。
大浪通に戻ったら再び東へ、なんばを目指してもと来た道を辿ろう。
春に限ればJR湊町を地下に埋め跡地にこしらえた難波塩草敷津公園の桜とローズマリーの並木道が見映えも香りも楽しめ、よりお得な花見スポット。
蔵前通を戻りこの散策はおしまい。
所要時間、ゆっくりのんびり初老の足で歩き4時間ほど。
その地の名のとおり大正時代に華開いた街並み探訪は、何度歩いても四季折々新しく見つかるものがある都市散策ならでは。
飽きが来ず、おすすめコースである。