模倣品対策は、完璧な権利を求めるより、小さいな権利をより多く
模倣品対策を効率よく行うためには特許・実用新案・意匠・商標などの知的財産権を使うことです。
すでに知的財産権を取得している場合は、権利のポートフォリオを模倣品に合わせて最適化していきます。
知的財産権がなければ権利の取得から始めるのですが、どの権利をどのように取得するかという検討が必要です。
新しいアイデア・デザインが生まれたから権利を取得するという一般的な動機と異なり、模倣品の製造・販売をやめるように相手と交渉する、模倣品を製造している工場の摘発を行政に依頼する、という模倣品対策では権利の存在自体が重要ということになります。
意匠や実用新案より特許が強い、無審査の実用新案は使えない、という考えから、特許の取得を目指すことが多いのですが、権利の存在自体が重要な模倣品対策において、取得の難易度が高い特許の取得にこだわる必要はありません。
また早く始めるほど効果がある模倣品対策では、取得までに数年が必要な特許の取得はおすすめできません。
特許以外の知的財産権である実用新案と意匠は、取得の難易度が低く、取得までに必要な時間が短いという点で模倣品対策に適した権利であるといえます。
取得の難易度については、審査の有無が大きく影響します。
実体審査がある特許に対して日本では実体審査なしで権利が付与されるのが実用新案です。
実体審査がないため取得までの時間が短くなります。
意匠については実体審査があるにもかかわらず取得までの時間が短く、日本では出願から登録まで約6ヶ月です。
無審査で登録される権利は安心できないという意見があります。
しかし特許審査は、新規性や進歩性において一応の審査をしたというだけに過ぎず、完全な権利を保証しているわけではありません。
さて模倣品対策は日本だけではありません。
日本税関で差止めされた模倣品の9割が中国からの貨物であるように、特に中国における模倣品対策が欠かせません。
中国の知財制度は、実用新案はもちろん、意匠も無審査制度を採用しています。
どちらも保護対象が物品の形状に係るものですが、明細書の作成が必要なく図面のみで足りる意匠の方が費用の面では優れています。
中国で権利を取得しても意味がないという話を聞くことがあります。
その理由の一つが裁判です。
権利行使、すなわち損害賠償請求や差止め請求を考えれば、たしかに外国の裁判はハードルが高く、司法解決は非現実的です。
しかし模倣品対策のほとんどは司法解決ではありません。
タオバオ等の通販サイトに出品されている模倣品を排除するという身近なことから始めます。
製造工場の摘発は行政に依頼します。
模倣品対策は、早めに、小さく、継続する、ことが大切です。
そのために必要な知的財産権も、完璧な権利を求めるというよりは、小さいな権利をより多くという考えでポートフォリオを拡張していきます。