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こんな異世界転生は嫌だ
Ⅰ 異世界勇者ゼータの冒険
1.勇者ゼータの召喚
世界が闇に包まれようとしていた。魔王アルファードが復活し、各地の王国が次々と陥落。人々は絶望の中、最後の希望にすがった。
「さあ次の伝説の勇者を召喚するのです!」
大陸最強の魔導士たちが力を合わせ、異世界より100人目の勇者を呼び出す儀式が執り行われた。
光の柱が天を貫き、異世界から一人の男が降り立った。
「……ここは?」
召喚された男は混乱しながら周囲を見回す。彼の名はゼータ。異世界からやってきた勇者である。
「勇者様!あなたこそ、魔王を討ち倒し、この世界を救う存在です!」
ゼータは驚きつつも、自分が伝説の勇者に選ばれたことを理解し、冒険の旅へと踏み出すことになる。
2.戦いの準備とさつま芋の鎧
王国より与えられた剣と、《さつま芋の鎧》を手にしたゼータ。
「……おい、なんでこんな装備が伝説級なんだよ!?」
「申し訳ございません、勇者様!もうこれしか残ってないんです!」
「この剣、剣というよりバーべQにつかう串なのでは?」
嫌な予感を抱えつつ、ゼータは最強の敵との戦いへ向かう。
3.伝説の黒龍使い、ガンマ
ついにゼータは悪の四天王の一人、《伝説の黒龍使いガンマ》のもとに辿り着いた。
「愚かなる勇者よ。我が黒龍が貴様を焼き尽くす!」
ガンマが召喚した黒龍が、ゼータへ猛然と襲いかかる。壮絶な戦いが始まる。
ゼータは奮戦するも機動力に勝る黒龍の爆炎を避けきれず受けてしまう。
「……くっ、!ここまでか……っ!」
ブゥゥゥゥゥ!!
重厚な爆裂音と共に、戦場に異様な空気と匂いが漂う。
ガンマの眉間に皺が寄る。「……貴様、一体何をした?」
ゼータは赤面しつつも、苦悶の表情を浮かべた。「俺の意思じゃない!」
黒龍が次の攻撃を繰り出し、ゼータが防御の姿勢を取る。
ブボボボボッ!
続いて鳴り響く轟音。だが、敵が受けたのは剣ではなく、再び鳴り響く異音。
黒龍が鼻を鳴らし、困惑する。
「な、なんだ……この異臭は……?」
ガンマが目を見開き、距離を取る。
「こ、これは……攻撃するたびに放たれる恐るべき呪いか!?」
ゼータは羞恥で赤らんだ顔を覆いながら叫ぶ。
「違う、たぶんそういう仕様なんだ!」
黒龍が苦しげに頭を振り回す。
「クサスギィ……イキガッ…スエヌッ!」
苦しみだす黒龍、異様な光景が続く中、突如としてガンマが瞳を鋭く光らせた。
「——ふざけるなッ!!」
ガンマの怒号とともに、戦場の空気が一変する。
重圧が場を支配し、黒龍が目を鋭く光らせた。
「我が伝説の黒龍が放つ最大火力の奥義を受けてみよ!」
黒龍が大きく翼を広げ、大地を揺るがせる咆哮を放つ。
ゼータは気圧されながらも、剣を構えた。
「くらえ!『暗黒絶雷炎甚』ッ!!」
未だかつてない雷撃と黒炎がゼータに襲いかかる!
「ちくしょう……ここまでか……。」
だが、次の瞬間——
ブオオオオオオオゥゥゥン!!
鎧の特性は止まらない。
この鎧は燃やすことで伝説の『石焼芋の鎧』へと進化した!
”受けた攻撃を体内にガスとして99%変換する”という特性をもったのだ!
「ギャオオオオオオオン!!」
あまりの異臭に逃げ出す黒龍。ガンマは地面へと叩き落とされた。
「こんな……こんなことが……!」
ゼータは勝利を確信し、聖剣バーべQを喉元につきたてる。
「オナラを笑う者、オナラに泣く!」
「そんなバカな……。」
「なーんてな冗談だよ、ほれバーべQの肉食えよ。さっきのお前の黒龍の炎で焼いたんだ。うまいぜ?」
「あ、ほんとだ、おいしい!」
「今度は一緒に魔王を倒そうぜ!」
こうして、勇者ゼータの勝利が決定したのだった。
——が、
4.エンドロール
「この鎧があれば魔王が相手でも楽勝じゃね?」
ガンマと祝杯をあげながら振舞われたごちそうを堪能するゼータ。
——1週間後——
「な、なんだこの匂いは……?!」
ゼータは息を止めながら、伝説の鎧を見つめた。
最強の石焼芋の鎧は、しおしおに腐り果てていた…。
「いや、これじゃダメだろ!!!!!」