【Gas Hero】Web3事業者必見!!秀逸なトークノミクスを徹底解説します
STEPNを開発したFind Satoshi Lab(以下、FSL)が2024年1月にリリースした注目のタイトル、Gas HeroがXを中心に非常に盛り上がりを見せています。
しかし、下記のような問題を抱えている方も多いのではないでしょうか。
・Gas Heroがなぜそんなに盛り上がっているのかがわからない
・ホワイトペーパーを読んでも経済圏がよく理解できない
Gas Heroの経済圏は非常に複雑に構成されているため、エコシステムを理解するには膨大なリサーチコストがかかってしまいます。
そこで本記事では、Gas Heroの基本的なゲーム概要と複雑に構成された経済圏について詳しく解説していきます。
この記事を読むことで、Gas Heroの経済圏を理解し、今後のWeb3プロジェクトの開発に生かすことができるので、ぜひ最後までご覧ください。
基本ゲームシステム
プレイヤーは1〜6体のヒーローで構成されるパーティーを組みます。
敵のパーティを全滅させることで、勝利となり報酬が獲得できます。
プレーヤーの収益ポイント
①アドベンチャーでアセット(NFT)を稼ぐ
組んだパーティーでアドベンチャーに挑み、クリアするとアドベンチャーに応じた報酬が獲得できます。
よりレベルの高いアドベンチャーをクリアすると、高い報酬が獲得できます。
アドベンチャーには、ソロで挑戦できるものとクランやギルドといったプレイヤー組織を作って挑戦するものがあります。
クランやギルドで挑戦できるアドベンチャーの方が報酬比率が大きいので、より強く大きい組織に所属することで、よりレベルの高いアドベンチャーがクリア可能となります。
更にその中で高い貢献をすることによって、多くの利益が得られます。
アドベンチャーで獲得できるアセット(NFT)は、下記のようなものがあります。
よりレベルの高いアドベンチャーをクリアするためのヒーロー強化アイテム
アドベンチャーに挑むためのエネルギー強化をするのに必要なアイテム
武器やペットを生み出すのに必要なアイテム
②組織から税収を徴収して利益を得る
組織は5階層用意されています。
下から クラン / ギルド / 地区 / 都市 / 世界 となっていて、それぞれ以下のようになっています。
世界には175の都市がある
1つの都市には、2以上の地区がある
1つの地区には、最大9つのギルドがある
1つのギルドには、最大9つのクランがある
1つのクランには最大9名のベース(プレーヤー)が所属している
つまり、世界に地区は少なくとも350個あり、1つの地区には729のベース、81のクランがあるということになります。
プレーヤーはいずれかのクランに属することとなっており、所属したクランに応じて、上位層が自然と決定します。
クランは自身で選択することも可能ですが、システムに自動で選んでもらうことも可能です。
各組織のリーダーとなると、組織の税収を得ることが可能となるため、リーダーとなって税収を得ることでも利益を得られます。
各リーダーの選出方法は、アドベンチャーでの活躍度合いや投票など、各層で決定方法が定められています。
③オークションでトークンを安価で仕入れる
ギルドの階層にてギルドメンバーが参加できるオークションハウスが設けられており、様々なアセットが取引されています。世界で取引されている価格の80パーセントで出品されるため、その価格で落札して、世界のマーケットにてマーケット価格で売れば、20%の利鞘が獲得できます。
しかし、そのためにはマーケット価格より低価で落札する必要があるため、ギルド内で協力して順に落札するか、仲間を出し抜いて落札を独占することで利益を獲得することができます。
④PvPで勝利して報酬を手に入れる
PvPには3種類あります。
個人戦
クランマッチ
ギルドマッチ
それぞれで勝利すると、上位階層のオークションハウスの総収入の内から収益が得られます。
プレーヤーがより多くの収益を得るためには、高いレベルのアドベンチャーをクリアできるようにしたり、各組織のリーダーになったり、PvPで勝利できるようになったりする必要があり、より強力なパーティおよびメンバーを揃えるのを目指すことになります。
トークノミクスの特徴
Gas Hero経済圏の特徴について、解説します。
主な特徴は以下の3点です。
1. ゲームプレイに必要なNFTの大部分が消費財である
2. 競争があり、勝者にインセンティブがある
3. グレートリセット
1. ゲームプレイに必要なNFTの大部分が消費財である
下表に示すように、Gas HeroのNFTには大きく3種類あります。
①FT型アイテム(消費財)
FT型アイテムはヒーローのレベルアップやブリード、ペットの進化などに使用され、一度使用するとバーンされる特徴を持っています。
DEXで取引はできませんが、従来のBCGで言うと、ユーティリティトークンのような性質をもつNFTと考えると良いでしょう。
FT型アイテムはゲームで使用するだけでなく、一定数のパックとしてマーケットプレイスで売却することも可能です。(例:ヒーローポーションなら100個単位で販売可能)
②消費型NFT(消費財)
消費型NFTは一度ゲームで使用すると、取引不可となり一定期間で使用不可になるNFTです。
一定期間で使用不可になってしまうため、継続的にゲームをプレイするにはこれらのNFTを定期的に購入する必要があり、常に買い圧が持続されやすい設計になっています。
下の表はヒーローのレアリティごとの寿命を示した表になります。
ヒーローに装備したペットと武器はヒーローと同時に使用不可になります。
③ 永久不滅NFT(資産)
永久不滅NFTは他のNFTとは違い、使用不可になることはなく、ずっと使い続けることができるNFTです。
供給量が決まっているためインフレを抑制することができます。
以上、Gas HeroのNFTは上記の3種類に大きく分類することができます。
FT型アイテムと消費型NFTは消費によって使用不可になることにより、下記状況が発生します。
各リーダークラスであってもそれを維持するために消滅型NFT/FT型アイテムに常に追加課金が必要
ゲームプレイで獲得できるトークンに常に需要が発生する
不要になったNFTが市場に出回らないのでインフレが抑制される
どのタイミングでプレイし始めても、既存プレイヤーとほぼ同条件で始められる
先行者優位となる部分は永久不滅NFTに集約されている
供給制限が無いNFTを消滅させることで、供給制限があるNFTの価値をより高めている
ゲームで使用するNFTが一定期間で使用不可となるため、どのタイミングで参入しても優位性に変わりはありません。
ただし、永久不滅NFTに関しては、先行で保有する人にメリットがあると言えます。
もし、このゲーム経済圏で資産を残そうとするのであれば、供給が限られている永久不滅NFTを獲得することを目指すのがおすすめです。
Gas Heroの経済圏では多くのNFTを消費財として使用することによって、インフレを抑制する狙いがあります。
FSLが過去にリリースしたSTEPNでは、NFTに消費の要素が少なくインフレしやすい構造になっており、結果的に経済圏の崩壊につながってしまいましたが、その教訓が生かされているものと推察されます。
インフレするNFTを消費財にし、インフレしないNFTを資産にするという設計は経済圏の需給バランスを最適化するための一つの重要なキーポイントになり得ます。
2. 競争があり、勝者にインセンティブがある
■治めている地域の手数料の一部がもらえる
Gas Heroは、クラン、ギルド、地区、都市で区分分けされており、それぞれの地域のリーダーになるとその地域で行われる取引の一部を税収入として受け取ることができます。
地域の規模が大きくなるほど税収入が増えるため、プレイヤーにとってはより上のリーダーを目指すための競争が促される仕組みになっています。
■チームの行動を決定できる権限がある
地区のリーダーになることによって、チーム戦でゲームを進めることができます。
Gas Heroはチームでゲームを進めた方が報酬を多くもらうことができるなど、ゲームを有利に進めることができます。
また、リーダーはチームメンバーを編成する権限を持っており、メンバーの受け入れやBanすることもできます。
■PvPで勝利することにより、多額の報酬が得られる
PvP報酬は地区の規模によって変わり、世界のトップになると46万$GMTも獲得することができます。
このPvP報酬のインセンティブが、より多くのNFTの買い圧を高めることに繋がり、アセットの高騰に繋がっています。
つまり、新規参入が増えてNFTの価格が上がっているわけではなく、既存プレイヤーが再投資を繰り返すことによる価格の高騰と考えられます。
1/13-1/14に最初のPvPが開催されていました。
PvP開催まではNFTの買い圧がある程度維持されていましたが、PvPが終わると買い圧が下がり、フロアプライスも少しずつ下がってきています。
3. グレートリセット
すべてのエリアの頂点(世界の長老)になると世界中から手数料を徴収できる他に、永久不滅NFT以外のすべてのアセットを消滅させることが出来ます。
この機能はSTEPNのレルムが無限に繰り返せるような役割を果たし、経済圏に下記のメリットを与えます。
行き過ぎたインフレによるゲーム体験の低下を防ぐ
経済のインフレ、停滞をリセット出来る
このグレートリセットがあることで、Gas Heroのトークノミクスがインフレしても、何度でもエコシステムを再生可能にすることができます。
また、経済圏の崩壊が発生したとしても、グレートリセットによって、全てのエコシステムをリセットすることができます。
運営の迅速な仕様変更
Gas Heroは2024/1/3にリリース後、数日以内に迅速な仕様変更をいくつか行っています。
仕様変更の主な理由としては、Gas Heroのエコシステムの最適化と推察されます。
エコシステムに悪影響を与える要素をすぐに排除し、需給バランスを整えていると考えられます。
1.過疎地のオークションハウスでアイテムを買えなくした
初期はプレイヤーが少なく(1,000人くらい)、ギルドのオークションの参加権利を1プレイヤーで独占することができていました。
オークションの開始価格は前回の全オークションの平均価格の80%だったので、オークションを独占し、開始価格で買えるプレイヤーは落札後、即転売することで約20%の利益を得ることができていました。
この状況を良くないと考えた運営が、ゲームリリース後すぐにギルドオークションハウスに新たなルールを設けました。
これにより、独占可能な過疎地のオークションハウスには商品が並ばなくなり独占していたプレイヤーの利鞘が消え去りました。
2.突然のナーフ
Gas Heroで資産に対して最大の収益を得るためには、クリア対象のクエストをギリギリ達成できるパーティーを最安で組むという戦略が必要です。
例えば、ヒーロー1体で、装備なしのアカウントは上図#2をギリギリクリアできるパーティーを採用することで、#1と比較して2〜3倍のヒーローポーションを得ることができていました。
しかし、突然のナーフにより、ヒーローによってはこれが達成できず収益が1/2〜3になりました。
上記のような運営の迅速な仕様変更によって、Gas Heroの経済圏の需給バランスは調整されています。
一方、ユーザー目線では、突然の仕様変更で戦略を変えざるを得なくなるため、FSLのこの動きには賛否両論あります。
トークノミクスのまとめ
Gas Heroのトークノミクスの特徴をまとめると下記の通りです。
■インフレを抑制する要素
インフレするアセットは全て消費財にして、バーンされる
使用しても消滅しないアセットは供給上限があり、少量である
グレートリセットにより行き過ぎたインフレをリセット可能
リーダーに税収があることで、競争する仕組みを作り、買い圧を高めている
■需給バランスの調整
迅速な仕様変更による需給バランスの最適化
本記事のまとめ
本記事ではGas Heroのトークノミクスについて、解説しました。
Gas HeroのトークノミクスはSTEPNでの教訓を生かした設計がされており、今後のWeb3プロジェクトでも、取り入れたいポイントが多く散りばめられています。
Gas Heroはリリースされて間もないですが、この秀逸なトークノミクスが新たな成功事例となり得るのか注目です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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執筆:0x Consulting Group 二井俊也、KA(Xアカウント@kaw3r_8806)
監修:0x Consulting Group CTEO 中田翔平(Xアカウント@nanin678)