0xCトークンエコノミクスセミナー|「社会変容を加速させるトークンエコノミーの可能性 -日本発グローバル展開事例と将来の展望-」を開催しました
3月5日(火)、0x Consulting Group主催によるトークンエコノミクスセミナー「社会変容を加速させるトークンエコノミーの可能性 -日本発グローバル展開事例と将来の展望-」を開催しました。
今まさにWeb3の事業開発をされている3名にご登壇いただき、生の情報を共有、議論できる場を目的として開催しました。
ご参加の皆さまからは、「プロダクト開発の経験のある方々の具体的な内容が参考になった」というありがたいお声をいただいており、本セミナーの動画も公開することといたしました。
お時間のある方はこちらもご覧いただければと思います。
トークンエコノミクスの基本|0x Consulting Group(中田)
1:トークンとは
トークンとは、貨幣や証券、商品などの性質をもったデータで、基本的にはオンチェーンデータです。ポイントやデジタル通貨とは違った性質があります。
トークンという言葉や概念自体は昔からあり、米などの物々交換から始まっています。
2:トークンエコノミクスとは
トークンエコノミクスとは、トークン(暗号資産)を用いて実現する経済圏のことです。
メリットは、法定通貨、株式など、既存の金融アセットやそのルールに縛られず、比較的自由な設計が可能なことです。
その一方で、自由がゆえに、設計や思想にも様々な派閥があり、「何が正しいのか?」がプロジェクトによって違います。
例えば、Axie やSTEPNのような ‟ポンジノミクス” は悪なのか、それとも体験としてよかったから悪ではないのか、などです。
3:トークンエコノミクス設計とは
トークンエコノミクス設計とは、トークンエコノミクスに関わるあらゆるものの定義・計画・数値設計を指しています。
例えば、
・解決したい課題や目的は?
・誰にトークンをアロケーションするのか?
・ユーティリティは?(そのユーティリティに需要はあるのか?)
・目標時価総額は?
トークンエコノミクス設計には次のように「アンチパターン」というものがあります。
過去の統計を見ることも大事ですが、各プロジェクトに合ったトークンエコノミクスを考える必要があります。
NFTを発行しすぎると、ユーザーは「NFTを持っていても意味がない」と思い手放してしまいます。
そして、エコノミクスの継続には、設計・実装の後も、非常に重要です。
事例①|株式会社DM2C Studio「Seamoon Protocol」
加嵜さん:
Seamoon Protocolは、トークンエコノミクスの機能を使ってアプリケーション(ゲームなど)を使用していただくサービスです。
トークンを使ってゲームがプレイできる、というシンプルな構造でも良いのですが、それだけではトークンの活用が広がらないと思い、プラットフォームやインテリジェンス機能を入れて全体を構成しています。
それぞれのサービスは、単体でも、組み合わせても使用でき、幅広い活用のされ方を期待しています。
アプリケーションでのサービスはまず、DMMグループでも実績のあるゲームからはじまり、マンガ、アニメなど親和性の高いエンタメ領域から事業拡大していきます。
将来的には、地方創生、教育などにも展開していきます。
DM2P経済圏の拡大は、3年、7年、10年の3フェーズで構想しています。
事例②|株式会社ナナメウエ「Yay!」
石濵さん:
Yay!については15分では話しきれないので、興味を持ってくださる方がいらしたら、ホワイトペーパーをご覧いただけると嬉しいです。
ここではトークンの話をさせていただきます。
クリプトは、まだ何だかよくわからないと思われる方も多いと思いますが、1日の売買出来高は、現時点ですでに12兆円もあります。
バイナンス(350銘柄)だけでも1日3.5兆円規模の出来高があります。
ちなみに、東証(3,300銘柄)の売買出来高は3.8兆円です。
さらに面白い点でいうと、クリプトはグローバルなので、例えばビットコインという同じ商材をクロスボーダーで売買できて流動性が生まれます。
今の段階でこれだけのお金が日々動いているので、これからすごいことになるかなと思っています。
次に、どのようなコンセプトで「トークン」を入れているのかと、トークンの魅力をご説明します。
Web2はすでに、ありとあらゆるサービスができているため、競合環境が熾烈です。
そのような中、トークンの良いところは、「PayPayのようなマーケティングを持ち出しなしで行うことができる」ということです。
PayPayは、交通系ICやクレジットカードなどの混戦した決済サービスを、キャッシュバックキャンペーンでひっくり返しました。
PayPayが特殊だったのは、多額の資金をソフトバンクから借りることでマーケティングを実施できたことで、スタートアップは普通このやり方はできません。
しかし、トークンを活用すれば似たようなことが可能になります。
トークンを発行してコミュニティのユーザーに渡すとします。
そのトークンが、トークンエコノミクスを通じて取引所で価格がつけば、ユーザーはお金として引き換えることができます。
これは、実質的にその金額をお渡ししているのと同じようなことになります。
PayPayとの大きな違いは、原資を用意する必要がないということです。
これが限りなくイノベーションであると考えています。
パネルディスカッション|DM2C, ナナメウエ, 0x Consulting
-トークンを活用しようと思ったきっかけは何でしょうか?また、何を目指していますか?
加嵜さん:
私目線でいうと、利便性、プログラム可能なお金、という部分に魅力を感じています。
今はちょうど確定申告の時期で、申請する側も調査する側も手間がかかり大変ですが、これがすべてプログラム可能なお金として流通して税金などの申告も自動化すれば、費やしていたお金をもっと他のところに活用できると思っています。
DMMとしては、コロナがきっかけで社会が大きく変わったように、Web3の技術が大きく社会を変えて、既存サービスも変わるのではないかという社会変化の危機感もあり、トークンエコノミクスを研究しているところです。
過去にビットコイン決済の導入を試した時期もあったのですが、当時は「今のタイミングではない」となり撤退しています。そこよりも、既存ユーザーを売上の1%でもあげることを優先すべきであるという経営判断によるものです。
ただ、それとは別軸で、今この領域でやっておかないと将来のビジネスが成り立たなくなるのではという危機感があり、Web3事業をやっています。
石濱さん:
私たちは、誰と話すかによってどのツールを使うか決めています。例えば、お母さんに連絡しようと思ったときにはLINE、仕事相手のときにはslackを開くというようなことで、人にツールが結びついています。
Yay!はどういうコミュニティかというと「知らない人が趣味・趣向を軸に繋がる」場所なので、好きなことを話すときに「Yay!を使おう!」と思ってもらえるようになることが重要です。
SNSは数多く存在するので、Yay!も競争が激しい中で戦わなければいけません。
そこで、PayPayのようなマーケティングキャンペーン事例(超後発で成功した)をイメージしていて、それがトークンだと我々でも実現可能ですし、サステイナブルな仕組みになると思います。
自分たちが成功すれば他のいろいろなものに応用ができるので、イノベーションを生むチャンスが目の前にあります。やるかやらないかでいうと、「やるしかない!」と思いました。
-サステイナブルな経済圏を実現していくためにはユーザーにトークンを消費し続けてもらうことは重要になりますが、消費し続けてもらうために心がけていることはありますか?
加嵜さん:
初期は、デベロッパーやパブリッシャーの方々が我々のプラットフォームを使ってサービスを提供してもらうところからで、エンドユーザーは少し先のフェーズになります。
現在は、ビットコインが成功事例と認識されているかと思いますが、ユースケースが増えた(ピザが買えたなど)ことで価値が上がっているわけではないと思います。
実際、価格が上がったものは決済には使いづらくなります。
例えば、会社が車を売りたいと思っていても、その時にガソリンが値上がりし続けていたら、車を買いたい人は増えません。
これを、ゲーム(車)ユーティリティトークン(ガソリン)で置き換えて、経済圏を回すことを考えると、ユーティリティトークンは値上がりさせず、むしろ少しずつ安くなっている状態にあると、ゲームをやってみようかという気分になってきます。
一方、車を売る会社の株(ガバナンストークン)であれば、価格が上がっていくことで株を買いたくなったり、株主優待があったりするように、NFTを持っていることでユーザーが期待できるようなユーティリティの設計を心がけています。
長期的にNFTを持ってもらえるようにです。
ガバナンストークンは、初期は徐々に価格を上げることを目指しますが、最終的には価格が安定すると思います。
たくさんの方に持ってもらって、ユーザー同士の流通が増えれば増えるほど、ボラティリティも落ち着くので、そうすると決済手段としても使ってもらえるようになるだろうと思っています。
石濱さん:
いかにプロダクト全体の品質を磨き続けて、高められるかが重要だと思っています。
これを深く考えるようになったきっかけは、「GasHero」と「マビア(Heroes of Mavia)」というゲームです。
GasHeroはトークノミクスが秀逸でしたが、運営からβ版に戻すとの発表があり、事実上のサービス停止という状態になっています。
一方マビアは、アプリ上ではトークンエコノミクスがなく、ガバナンストークンのみある状況ですが、価格はさておき、引き続きXでも人気を浴びています。
トークンエコノミクスだけに注力しても机上の空論になってしまい、ユーザーはそれだけを理由に使っているわけではありません。
いかに面白い、使いやすいなど質の高いサービスを提供し続けられるか、ユーザーに「サービスを使う価値」を提供できるかということが重要ですね。
-トークンエコノミクスの設計者、専門家はまだまだ少ないと思います。トークンエコノミクスの設計で課題に感じていること、気を付けていることはありますか?
加嵜さん:
難しさはいろいろとありますが、情報の流れや社会の変化が早いのでいかにキャッチアップするかも大変ですね。
また、我々の会社のように既存ビジネスがあったり、日本の法律の中でトークン発行したりしている場合は、既存のシステムとの接続、インターオペラビリティなども考慮しないといけないところが大変に感じます。
石濱さん:
日本ではクリプトの市場がかなり小さいです。
日本の取引所1日の取引高は500億くらいしかなく、中国系が約6兆円、韓国系が1.5兆円、アメリカ系が約2兆円です。
これだけ流動性に差があるということなので、いかに中国や他の国のマーケットで勝ち切るかが極めて重要になりますが、難しいポイントです。
クリプトではコミュニティが重要なので、例えばまず中国KOLに声をかけて、最終的にバイナンス上場することを考えたとき、言葉を含め日本の中だけで留まっていると難しいですよね。
中田さん:
数値のバランス設計も難しいですが、「プロジェクトと経済圏がフィットしているかどうか」がトークンエコノミクスで非常に重要だと思っています。
それから、ユーザーや投資家の体験です。
コンテンツが最も重要ですが、トークンエコノミクスとしても体験が良くなければ市場から評価されません。
そして、新規性のあるトークンエコノミクスを生み出し続ける必要があると思っています。
まだ世に出ていない新しいトークンエコノミクスの成功例を見つけて実装すると、市場から高い評価を得られます。
それを見つけ出して、プロジェクトにフィットさせて、世の中に出していかなければと思っていて、これが面白い部分でもあります。
- 登壇者の皆さんはトークンエコノミクスの先駆者だと思いますが、皆さんが考える「こんな企業はトークンエコノミクスを活用すべき」という企業はありますか?
加嵜さん:
これまで、銀行からなかなかお金を借りられない、ビジネスモデルとしては成り立たないと思われていても、トークンを活用すれば実現できる企業があると思います。
トークンを発行してビジネスを発展させていくとなると、ビジョンに共感して応援してくれる人が支えてくれると思うので、今までは難しかったことも、人の心に刺さる&共感性のある領域であれば、トークンとの親和性があると思います。
石濱さん:
ほぼ全部の領域でいけると思います。
重要なのは、既存にある「利益」という考え方でなくなるということです。
というのも、トークンエコノミクスでは基本的に、サービスがもたらす利益はユーザーに還元するものという考え方がベースになります。
企業側は、BSでの評価額によってサービスの良し悪しを判断できるような組織になれるかどうかです。
プロジェクトの売上や利益ではなく、トークンの価値がどのくらいなのかで判断する。
とはいえ、トークンで発生する売上や利益は基本的にすべてユーザーに還元されるもの、とする構造的な部分に対応できるかですね。
それが可能であれば、基本的にはどんな企業でも活用できると思います。
中田さん:
まずは国家、日本にトークンエコノミクスを採用してほしいです。
ブロックチェーンを活用することで透明性が担保されるので、正しく実装する難易度は高いですが、税金や確定申告、契約など、自動で簡潔に行えるようになる未来がみえてきます。
いろいろな国で採用していってほしいと思っています。
-最後に、この先の市場を見据えてどんな取り組みをしていきたいですか?
加嵜さん:
今日はトークンエコノミクスの良い面をプッシュしてきましたが、市場が不安定だったり、技術も発展途上だったり、国家ぐるみのサイバー攻撃で盗まれたり、やはりリスクもあります。
そのような安全性は、これまで国やプラットフォーマーがセキュリティを担保してくれていましたが、Web3ではそれを自動化・効率化して、最終的には自己責任で実行しようとしています。
ただ、すべてのユーザーがそれを求めているわけではなく、安心・安全を求めている人が多いと思うので、Web3時代に求められる新しいプラットフォームの姿を模索していきたいと思います。
その上で、いろいろな企業とアプリケーション領域で協業していけたらと思います。
石濱さん:
とにかく全力で、「自分たちがしくじったらもう他にないぞ」と思えるくらいやり切ります。
中田さん:
日本から新しいトークンエコノミクスを作り、世界から評価されることを目指したいと思っています。
いろいろなプロジェクトはありますが、まだこれがベストだというトークンエコノミクスは出てきていないと思っているので、それを自分たちで生み出していきたいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
0x Consulting Groupでは、Web3事業に参入を検討されている企業様を一気通貫で全面的にサポートさせていただいております。
今回のセミナーに登壇していた中田をはじめ、専門知識を持つスタッフも多く在籍しており、常にWeb3業界の最新トレンドを追っております。
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