ビジネスは「答え」ではなくていつも「問いかけ」から始まる
すべてのビジネスマンはコンサルタントであるべき
コンサルをお仕事にしていると、若い世代の人からよく(おお……自分もついにこういう言葉を使うようになった……。若くないんだなぁ)こんなこと聞かれます。
「コンサルってかっこいいですね」
「どうやったらなれるんですか」
「私もなりたいです」
気持は良くわかります。
コンサルっていうのは、大きな会社のプロジェクトでも花形。その場を仕切るっていう役割が多いので、時にはお客さんまでも引っ張って、お客さんが一番偉いはずなのにコンサルやっている人間が全体のトップみたいになる瞬間もありますから。
でも、それはコンサルの一面だけにすぎないですし、本質的なことではありません。
私はそういう「コンサルになりたい」っていう気持ちは、商売をやる人全員に持って欲しいなと思います。
なぜかというと、コンサルの本質は「お客様に正しく問いかける」ことだからです。
コンサルというと膨大な知識を持っていて「答えを出す」人だと思われるケースもあるのですが、これは、端的に言って間違いです。
知識も必要なケースはありますが、それははっきり言っておまけです。なければ極端な話、お客様に教えてもらえばいいんですから。
これから有能な店員さんはコンサルタントだって言う話をします
マーケティングでよく例に使われるドリルを例にしましょう。
ホームセンターにお目当てのドリルを買いに来た人が、店員さんにこう言うシーン。
「ドイツ製のこのドリルこれってさあ、ちょっと高いよね。もう少し安くならないの?」
よくあるケースです。大体そのドイツ製のドリルがいい、と目星をつけて来店するのですが、最後の踏ん切りがつかないワケです。
ここで、コンサルマインドのない店員さんだとこうやります。これは、けっこうやっている人が多いのではないでしょうか。
「確かに〇〇社製のドリルは高いんですよ、でもその代わりこのドリルはこんなこともできて、あんなこともできて、やっぱりプロ指向の方はこれじゃないと満足できないっていう方は多いですね」
この接客のどこがまずいのか、どうするのが良いのか
YES-BUTですよね。ちゃんと一回肯定して、相手を受け止めて、そして新しい価値を気づかせてあげている。ビジネス書を読んだだけで、こういう接客が良いんだという知識を試し始めた人は、これで100点だと思うでしょう。しかし、コンサルマインドという点から言うと、この接客は0点です。
この店員さんがコンサルの大切さを知って、コンサルも勉強していたらこうなります。
「確かに〇〇社製のドリルは高いんですよ。普通のに比べるとバカ高いと言ってもいいくらいです。でもお客さん、どうしてこの馬鹿高い〇〇社製のドリルに関心があるんですか」
これが「問いかけ」です。
お客さんはこう言うはずです。
「いやね、家の外壁のモルタル部分に穴開けたいんだけどさ、家にあった安物のドリルで穴を開けようとしたら、なかなか開かなくて、無理に開けようとしたら、塗ってあるモルタルがベリっと剥がれちゃったんだよね」
「あー、やっちゃいましたね。安物のドリルだと、無理に穴をこじ開けることはできるんですけど、モルタルみたいに、表面に分厚く何か塗ってあると、その塗っている部分まで破壊しちゃって、穴を開けようとした部分から亀裂が入っちゃって、壁の塗装が剥がれる。失礼ですけど、それほとんどの人が「ヤバい!やっちまった」ってなるところですよ」
「そーなんだよ!まさにそれなんだよ!やっちまったの、この間の日曜……」
話し好きのお客さんであれば、ここで「それで女房に怒られてさ……」と続くかもしれませんが、もうここまでで十分ですよね。
「普通の日曜大工だったら、いいんですけど、お客様の場合だったら多少高くても、このドイツ製の〇〇じゃないと、また同じことになりますよ。また奥さんに……」
「それは勘弁して欲しい!そうだよね、それもらうわ」
「まいどありー」(^▽^)
という感じです。
一回相手を肯定してから自分の新しい価値を提案する。
最先端のマーケティングや心理学はコンサルマインドを理解していないとあまり使えないケースも有る
なんか最先端のマーケティングみたいですが、まるで使えませんよ、こんなの。
だって、形式的に、形だけ、表面だけ相手にうなずいていますけど、結局相手を論破しているじゃないですか。これでは、人は動きません。
「答えを出す」=新しい価値を提供することなんて必要ありません。必要なのは「正しい問いかけ」です。現に、この店員さんは新しい価値なんてひとつも提供していません。しかし、新しい価値なんてものはまったくいらず、お客さんは最大の満足を得て、喜んで大金を支払うはずですよね。
ここに、最先端とか、それからお客様に寄り添うとか、そういう一見なっとくしてしまいがちな接客法であったり、マーケティングの弱点があるのです。
その弱点の正体はなにか。
コンサルマインドがなかったのです。
お客さんは、値段が高いと知っていて、なぜその商品にこだわっているのか。
それを正しく問いかけることができる人がコンサルです。
というわけで、最初に戻りますが、私は花形職業だからという理由でコンサルを学びたい若者だけじゃなくて、ビジネスをやるすべての人がコンサルタントになったら、世界中のお客さんはみんな気持ちよく買い物ができるだろうな、と思っているわけです。
だから、若い人の例をあげましたけど、逆になにか真剣にビジネスをやった、やっている経験のある人なら、自覚すれば今日から、誰でもコンサルになれるということですね。
おまけ
長くなったので、この辺にしますが、本を読んだりした話が実際に使ってみるとそうでもない……というのはよくありますよね。
私は心理カウンセラーの資格も持っているのですが、カウンセリングの定番の「傾聴」っていうのを、ビジネスでも接客方法として勧める人がいますが、あれはまったく使えません。「オウム返し」なんてかえってお客さんを怒らせる場合もあります。
そのあたりもコンサルマインドが欠けていて、形だけ傾聴しているからそういうことになっちゃうのですが、それはまた別の機会に。
では!