【難民認定率0.5%】日本に来た難民が直面する現実とは...?
※本投稿はオフィシャルブログの内容を加筆・修正したものです。
こんにちは、ピープルポートの香織です。
私は以前から、難民問題に興味がありました。でもそれは、映画で見た、テレビで見た程度の漠然としたものに過ぎません。ピープルポートという会社に出会い、ここで働く難民申請中の人に出会い、日本の難民申請者が置かれている厳しい状況を初めて知りました。
今回は、日常ではあまり出会うことのない難民ついて、お話したいと思います。
難民ってどんな人たち?
そもそも難民とは、どんな人たちなんでしょうか?
2020年の国連の発表によると、難民・避難民などとして故郷を追われたの数は世界中で8,240万人となり、統計を取り始めてから最多となりました。毎日、30,000人以上もの新たな難民・避難民が生まれていることになります。ちょっと想像しにくいですが、広島カープの本拠地・マツダスタジアムの収容人数が33,000人ですから、あの大きなスタジアムが毎日ほぼ満席になるくらいの大変な人数です。
ちなみに難民と避難民の違いは、避難している先が国外か国内かの違いです。国境を越えていれば難民、越えていなければ避難民です。正式には国内避難民と呼ばれます。
日本にはどれぐらい難民がいるの?
日本は難民条約に加盟しているので、難民を受け入れることが求められます。世界中で8,000万人以上の人々が助けを求めている現状で、日本には難民がどれぐらいいるのでしょうか?
出入国管理庁によると、2020年の難民認定数は、47人でした。
・・・47人!たったの47人です!!!
難民申請を行った外国人の数は、新型コロナウイルスの影響で減少しましたが、3,936人。認定率は、国際的基準に基づいた算出方法を参考にすると、わずか0.5%。
難民に寛容な国として知られるドイツは2019年の難民認定率が23%でしたから、日本の認定率は桁外れの低さです。
なぜ日本を選んでやってくるの?
では、なぜ難民の人たちは、認定率が低い日本を選んでやってくるのでしょう?理由のひとつは、「避難先を選ぶ余裕がない」からです。
彼らは、紛争や迫害、災害等の理由で母国を離れざるをえない状況に追い込まれ、時は一刻を争います。命の危険があるので、避難先を自由に選ぶ余裕はありません。複数の国にビザを申請し、「たまたま一番早く下りたのが日本の観光ビザだった」という理由で、日本にやってくる人が多くいます。もちろん中には、「大学で日本の文化について学んだ」、「アジアの先進国というイメージがある」など、日本にポジティブなイメージを持って選ぶ人もいます。日本を選ぶ理由は人それぞれですが、彼らにとって言葉も文化も食べ物も、不慣れな国であることは変わりません。それでも、なんとか自腹で渡航費をまかない、命からがら日本に辿り着くのです。
難民申請はいばらの道のり
日本で難民申請手続きをして結果が出るまでは、平均で3年、長くて10年もかかるそうです。こんなに長くかかって、認定率が0.5%なんて…もう絶望しかないですね。
難民申請者はまず、法務省の管轄である出入国在留管理庁で面接をします。出入国在留管理庁がなんのためにあるかというと、日本に入国する外国籍の人が、日本に滞在しても危険はないか?ということを判断する機関です。日本への入国を制限したり取り締まる重要な機関ですが、難民の「保護」を目的としていません。難民を「保護する」よりも「管理する」視点が強いのが、認定率が低い一因と言われています
そして、ここでの面接がとても辛いそうです。例えば、家族や友人が殺されたとして、その時の状況を根掘り葉掘り聞かれます。
さらに、自らの命が危険であることの証拠を提出しなければなりません。え?証拠なんてあるの?と思いますよね。例えば、反政府デモの主導的立場にあり、政府からこんな脅迫を受けたとか、政府と敵対する組織の一員であるとか、そんなような証拠です。難民申請者の中で、政府に直接的に命を狙われている人は一部いますが、多くは紛争や迫害のせいで、窮地に追い込まれた一般庶民です。そもそも証拠を準備するのも難しいですし、証拠書類には日本語訳をつけなければならないので、申請を円滑に進めるだけでもとんでもない労力です。
難民申請の結果、日本政府によって難民認定を受けた人には、更新可能な1~3年の定住者としての在留資格が与えられます。国民健康保険加入を申請することができ、必要があれば市・区役所など通じて福祉支援を受けることができます。
一方、難民申請が不認定となってしまった場合は、出入国在留管理庁に再度審査を申し立てることができます。また、人道配慮による在留特別許可をもらえた場合は、日本に滞在することができます。ところが、難民不認定になった人の中には、在留特別許可ももらえず、より過酷な状況に追い込まれる人もいます。在留許可がなく、ビザの期限も切れると不法滞在となり、退去強制の対象になってしまうのです。退去強制の対象になった外国人が行き着くのが、収容施設である東日本入国管理センター。いつまで収容されるのか先の見通しはまったく立たず、強制送還の恐怖に怯え、毎日不安とストレスにさらされるのです。家族も友達もいない、日々の不安を漏らす相手もいない、言葉が分からないので、職員との日常的なやり取りも理解できない…。刑務所でさえ、刑期を終えれば出所できますし、たわいもない会話をする相手もいるでしょう。難民不認定となった人たちは、最悪の場合、刑務所より過酷な環境に置かれてしまうのです。
難民申請中の生活はどうするの?
日本では、難民申請中だからと言って、一律で在留資格や就労許可が出るわけではありません。では、未知の国でどうやって生活していけばいいのでしょう?
① 身銭を切り崩す
② 政府の支援に頼る
③ 特定活動を申請して働く
彼らが生活していくには、大きく分けて3つの方法があると思います。
まず①は、日本への渡航費でお金を使い果たしている人がほとんどなので、あまり現実的ではありません。
②の政府の支援については、申請中であれば保護費(生活費、住居費、医療費等)を受給することができます。でも、保護費を受ける審査に時間がかかる上、受給額も生活保護と比べて3分の2程度と限られているので、保護費だけで生活していくのは厳しいのが現実です。
③については、難民申請してから2か月以内に書類審査が実施され、申請者は4つに分類されます。その結果、「特定活動(6か月)」が与えられた場合は就労することができ、申請期間中は更新できます。かつては、難民申請してから6か月後には、一律で就労許可が与えられましたが、就労目的の難民申請が急増したことで、法務省が制限を強化しました。
(ウクライナ情勢を受け、2022年3月時点で政府は「特定活動」への在留許可の切り替えを進めると発表しました)
就労許可が得られたとしても、言葉も文化も分からない日本で、仕事を見つけるのは至難の業です。環境も条件も違法すれすれ(時には完全に違法)のところで働かされたり、賃金が支払われなかったり、せっかく逃げ延びてきた日本で絶望する難民の人たちが大勢います。
難民の人たちは、観光で日本にやってきたわけではありません。スカイツリーも温泉も寿司も知らず、毎日の生活に困窮し、いつ強制送還されるか分からない不安の中で過ごしています。できることなら、彼らが母国を出国する前に、「日本は難民にとって最低の国だから来ない方がいい!」と伝えたいです。でも、それでは日本に難民申請をする人が減るだけで、難民に対する理解は何も変わりませんよね。
【出典】
日本の難民認定率(令和2年)
https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/07_00003.html
数字で見る難民情勢(2020年)
https://www.unhcr.org/jp/global_trends_2020
難民申請のプロセス
https://www.refugee.or.jp/jar/postfile/QA.pdf
難民申請者の就労許可
https://jp.reuters.com/article/japan-immigrants-idJPKBN1F10MC
ウクライナ避難民への支援
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220315/k10013532071000.html
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