改めてシリーズ2「瑕疵」
2020年の民法大改正から4年が経とうとしています。
不動産取引上大きかったのはやはり
「瑕疵担保責任」⇒「契約不適合責任」へ
というところではないでしょうか。
日本語、文字が大好きな私ですが、いいよなあと思うところのひとつが
漢字からその言葉の意味のおおよそを理解できるところ。
なのですが
「瑕疵(かし)」ってまず、あんまり聞かない言葉ですよね・・・
瑕疵というのは、「キズ」や「欠陥」という意味です。
不動産の場合だと、瑕疵には4つの種類があります。
1.物理的瑕疵
目に見える瑕疵のことで、土地であれば地中から埋設物が出てきたとか、建物の場合は雨漏りや白蟻被害などでしょう。
これは分かりやすい瑕疵です。
2.法律的瑕疵
不動産の場合、利用しようとするときには様々な法律の制限がかかります。
「建築基準法」「都市計画法」などがあり、それらの法律でかかっている制限によっては、計画しようとしている建物が建てられないなどの不具合が生じます。
3.環境的瑕疵
周辺の環境に「嫌悪施設」と呼ばれる、火葬場や暴力団事務所などがあることを指します。
なにが「嫌悪施設」となるかは人それぞれというところもあり、
学校が近いことを良しとする子育て世帯もいれば、騒音という観点で嫌悪する方もいらっしゃる、といった具合です。
4.心理的瑕疵
火事や事件など、その土地や建物で過去に嫌悪感を抱くような事象が発生した場合に心理的瑕疵物件などと呼ばれます。
現行民法では、これらの「瑕疵」のうち「隠れた瑕疵」について、買主から売主に責任の追及ができるとされています。
つまり「隠れていない瑕疵」については責任の追及はできないことになり、
売主にとっては把握している瑕疵について告知をすることがリスク減になっていました。
この根本には、「不動産は特定物である」という考え方があります。
A:高山が持っている、このお米
B:北海道産のお米10キロ
AとB、どちらが特定物か。
答えはAです。
北海道産のお米はたくさんありますが、
私、高山が今この瞬間手にしている「このお米」は世界に一つしかないのです。
特定物というのはつまり「かけがえのないもの」ということ。
その物の個性に着目して指定した物、ということになります。
不動産は、土地でも建物でも同じものは一つとしてありません。
すべて、替えのきかない「特定物」なので、瑕疵があったとしても買主がそれを承知のうえなら売主に責任はないとされていたのです。
では「契約不適合」とは、一体なんでしょうか。
こちらは読んで字のごとく。
契約に適合しない場合は、売主にその責任を追及できるということです。
つまり、買主に伝えたかどうかということではなく、
買主がなぜこの不動産を購入しようとしているのか、その目的は?
というところを確認し、その目的に合っていない内容があれば代金減額を請求したり
損害賠償の請求をしたり、契約の解除も申し入れることが可能になるのです。
先ほどの「環境的瑕疵」のところを例にとれば、
買主が介護のためにとにかく一日を通して静かな環境を、と望んでいたことを知っていたにもかかわらず
周辺施設からの騒音に悩まされることになった、などのケースの場合、
この責任の追及を受けてしまう恐れがあることになります。
「特定物」とはいえ、売主は契約に適合した物件を引き渡す責任があるぞ! ということが規定されました。
不動産が特定物である以上に、「不動産売買契約」に同じものはないと思います。
土地や建物を求める買主さんの、目的や未来。
土地や建物を手放す売主さんの、事情や想い。
寄り添いつつ、ひとつひとつの契約をより一層大切にしていこうと思っています。
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