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成年後見制度じゃダメ? ~民事信託②~

家族を信じて託す、第2回(第1回はこちら)。




「いやいや、そりゃ信じてるけど、所有権が移転するってちょっとなあ・・・ほんとに大丈夫?」



のところからですね。



しかしまずは、そもそも「民事信託」とはどういうことなのか、

その制度の目的から考えることにしましょう。




自分で判断ができなくなったりすることで子どもに迷惑を掛けないようにしたい。


多くの親御さんが思っていることではないでしょうか。


しかし、


「そのうち」「今すぐではないけれど」


という前置きが付いたご相談が多いのもまた、事実です。


では実際に、土地や建物を所有している家族の判断能力が低下してしまったら、どうすればよいのでしょう。


ひとつには、「成年後見制度」というものがあります。(リンクは法務省HP)


「判断能力の不十分な方々を保護し,支援するのが成年後見制度」

とあるとおり、この制度を使って成年後見人等になった方が、本人に代わって不動産や預貯金などの財産を管理することが可能になります。



「えっ、じゃあこれでいいんじゃないの?」



たしかに、この制度も非常に有効なひとつの手段であることは間違いありません。


成年後見制度のうち「任意後見制度」を使えば、判断能力が低下する前に備えるということも可能になります。


しかし、いずれにしてもこの制度は「本人の保護」の目的で制度化されたものであり、


言い換えれば「本人の資産を少しでも減らさないように管理すること」を勧めるもの。



「判断能力低下後からと言わず、今からでも娘(あなた)に土地の活用をしてもらいたい」


と考えたお父さんにとっては、「家族信託」のほうが目的に合っていたのです。


なぜなら、民事信託制度の目的は、「柔軟な資産承継および財産の管理・運用・処分」だから。


だからこその、所有権移転です。





さて。父娘のおはなしに戻りましょう。


お父さんから信託について相談を受けたあなた。

かねてより父親の体の不調やこれからの生活を心配していたあなたにとっても、次の世代のことを考えてくれる提案に賛成でした。


信託をするとその内容が登記され、所有権が移転することになると聞き、


「私のものになるって・・・お父さんはそれでいいの?」

と思いましたが、土地の管理の一部を任せていた不動産会社のZさんから、


「所有権が移転しても、受益者としてお父さんは守られるし、移転するからこそ、柔軟に財産を活用することができるんですよ」


との説明を受けました。


所有権というのは、とても強い権利です。




「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。(民法206条)」


自分で使うのはもちろん、貸して利益を得ようが、売ってしまおうが、ほとんど何でもできる権利ということになります。

全面的支配権なんて言われるのも頷けます。


所有権を手にすることで、信託によって託された側(受託者)=あなたは、信託された財産を管理・運用・処分することが可能になるのです。


これこそがお父さんの望む土地活用ですよね。


しかしあなたは、その利益はこれまでどおり、お父さんのためにあってほしいと願っています。


これが、先ほどの「受益者として守られる」の部分です。


信託をする側(委託者)=お父さんは、このケースでは委託者であると同時に「受益者」となります。


そして、「信託受益権」という、信託財産から生じる利益を受取る権利を新たに取得するのです。

例えばこの土地を貸して得た収益はお父さんに渡ることになります。


さて、この父娘のケースは、お父さんが元気なうちに家族信託をすることにより、娘さん(あなた)が土地を有効活用できるようになりました。


ですが、実際にはそうならないケースも多く・・・


この続きは、第3回をお楽しみに。

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