ゼロノワ不動産のしごと その4
例えばあなたが土地や建物を購入しよう、と思ったときに
果物や文房具を買うように、「これいいね。買おう」ってすぐに決断できますか?
私はできません。ほとんどの方がきっと、そうではないでしょうか?
それはなぜなのか。
金額が大きいから。これは大きな理由です。多くの方が、住宅ローンの融資を受けて購入するわけですから、慎重になるのは当然です。
それから、「そこで暮らすから」。
もちろん投資目的の場合もあるでしょうが、土地建物を売買するときに一番多いのはこれから住まうところとして購入する場合。
「ただいまー」と帰る、その場所を決めるのですから、いろんなことを考えますよね。
だから、
重要事項説明というものがあるのですね。
これは法律で決められています。
売買だけでなく、賃貸の場合でも基本的に義務です。(不動産会社が貸主の場合を除く)
「したほうがいいよ」とかでなく「しなければならない」と決められているのです。
誰でも説明できるわけじゃなくて、「宅地建物取引士」でなければなりません。
その名の通り重要な事項を説明しますが、重要なこと、結構たくさんあります。
なので通常、2時間くらいかかります。映画観るくらいですね・・・
ゼロノワ不動産では、売買契約の重要事項説明をさせていただくことが多いのですが、
この説明は大きく分けて「その対象物件のこと」と「取引の条件に関すること」の二つです。
1.対象物件のこと
まずは物件の権利関係。
前回の記事で「不動産登記」について触れました。
購入しようとする土地や建物が、登記上誰の持ち物なのか? 面積(地積)は? 抵当権の設定はあるのか? といったことを確認します。
また、法的な制限についても重要です。これから建築をする土地であればもちろん、建物がある場合でも将来建て替えや売却の際に重要になります。
土地は、一つとして同じものはなく、それぞれの場所でかかる制限も違います。
土地利用の大枠を定めた「用途地域」※による制限。
※土地の利用に関して大枠を決めておかないと用途の混在が起こってしまいます。閑静な住宅地だなー、子育てにいいなーと思って購入したすまいなのに、突然隣地で工場が建てられたら「えっ!」となりますよね。そういったことがないように決められているのが「用途地域」です。
さらに前面道路の幅によっても敷地面積に対する建築面積の割合(建ぺい率)や建築延べ面積(容積率)が変わったりします。
それ以外にも様々な条例などで建築に制限がかかることがあるので、すべて確認します。
さらに、これから暮らすうえで大事なライフライン。
上下水道にガス、電気・・・これらの配管などの状況は非常に重要で、「土地を安く手に入れた!」と思っても実は上下水道の配管が近くに無くて高額な費用がかかってしまった、ということが起こり得ます。
2.取引の条件
さて、物件のことは充分に分かりました。
ここからは、どんな条件で契約をするのか、という内容です。
まずもちろん、価格やその支払い方法です。
総額の確認と、多くの場合契約時に取り交わされる手付金の額。
不動産を所有しているとかかる固定資産税などの税金についてどのように清算するのか。
支払方法としては、買主さまが融資を予定していればその総額などもしっかりと明記されます。
また、万が一契約が解除になった時の規定などもここで確認しておくことになります。
ざっと紹介しただけでもこのくらいのことを説明させていただくので、資料も多くなりますし、時間もかかります。
なるべくスムーズに、とは思いますが、それよりも売主さま買主さま双方がしっかり納得したうえで契約していただくことのほうがはるかに重要です。
また、契約のときに初めて売主さまと買主さまがお会いすることも少なくないため、重要事項説明書のなかには書かれないけれど直接聞いてみたいことを尋ねたり、
売主さまにとっても「どんな方がこの場所に住むのかな」というお気持ちから買主さまのご家族の話になったりと、会話が盛り上がることも多いです。
売主さまから「うちも子どもたちが小さい頃は・・・」などのお話をお伺いできたり、買主さまから「この土地を譲っていただいてありがとうございます」とお伝えしている場に立ち会うと、とても嬉しくなります。
取引しているのは「土地」や「建物」ですが、
そこには必ず「人」がいて、その先の「暮らし」がある。
説明は緊張感をもって臨みますが、ご契約はそのことをより実感できる時間でもあるので、売主さま買主さまのみならず、私にとってもすごく大切な時間です。
これからも、一人でも多くの方のお手伝いができるよう、さらに精進したいと思います!
高山 裕佳