嘘の日記「母の鮭」
みかんとデカデカと書かれたダンボールが届いた。実家の母からの仕送りだ。
頑丈に閉じられたダンボールを開けると懐かしい畳の匂いとパンパンに詰められた食べ物がでてきた。
その中の一つに保冷パックがあった。私の大好きな鮭が入っていた。
学生時代からこうやって定期的に母から鮭が送られてきた。あのころも実家や懐かしい風景を思い出していたな。
調理らしい調理を全くしてこなかった学生時代に比べたら多少包丁や火を扱えるようになった。
ただ、同期と料理をすると手元の危うさですぐに包丁を奪われてしまう。私はポンコツなのだ。
グリルのないキッチン。フライパンで酒を焼くことにした。
一人暮らしにとって魚は滅多に食べることのない貴重品だ。母には感謝しかない。
いただきます。
しょっぱ!!
母が送ってくる鮭はいつも通り塩辛かった。また懐かしい風景を思い出す。
ダンボールにはまだ何か入っていた。封筒?
母からの手紙だった。珍しい。
中身は最近のことと私がしっかり料理できてるか心配という内容の手紙と家族の写真が入っていた。
同じ日の繰り返しを塩辛すぎる母の鮭が優しく包んだ。
今度実家に帰ってちゃんとありがとうって伝えよう。
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