長い夢を見たのさ

どうも、あなたの勇者ぜろ子でございます。

以前、夢の中で一週間以上過ごした。かなり奇怪で夢なのにはっきり覚えている。今日のnoteはその時の夢をできる限り文字にしようとする試みなのである!

気づいたら古びた民家で寝ていた。隣にはそこまで親しくないフォロワー(以後 A)がいた。なんで貴方がそこにいるのです?
いや、そんなことはどうでもいい。ここはどこだ?パッと見で昭和時代じゃないことはわかった。どこかの資料館で見たことがある古めかしさだ。
壁にかかってるカレンダーを見ると和暦は大正。馬鹿げたことを言ってると思われるが、僕らは大正時代に飛ばされてしまったようだ。

僕はAを起こすと大正時代にタイムスリップしてしまったこと、廃墟然とした民家に不法侵入していることを伝え、住人が戻る前に出ていくことにした。
Aはこれからが不安だからと言い、家にあったよく分からない食べ物を勝手に持ち出しているようだったが、この際もうどうでもいい。いち早く戻らねば(しかし、どこに?)。

2人で街(村?)を少し歩いていると第一村人を発見!ここはどこか?今は何年か?をとりあえず聞いた(こういう時はコミュニケーション能力あるのになぁ…)。
村人の言葉はかなりの訛りでよく聞き取れなかったが東京からかなり離れた場所だということ、少し行けばかなり栄えている集落があること、今は大正36年(大正ってそんな長かったっけ?)ということが判明した。

栄えているところに行けば元の時代に戻れるヒントが分かるかもしれないと思い、僕らは村人にお礼を言ってその場を後にした。

栄えている集落(栄町と呼ぼう)に到着した。集落というより本格的な街だ。大正の地方都市だ。途端にブックオフやはま寿司が恋しくなった。
栄町を歩いていると身なりがやや成金よりの大男に声をかけられ、奇妙な服装と挙動不審さが気に入られ(なぜ?)、お世話になることになった。
大男はかなり傾奇者らしく僕らがタイムスリップしてしまったことを話すとちゃんと聞いてくれた。理解者がいるとこんなに安心するものなのか。ここに来て初めて緊張の糸が緩んだ気がした。

僕らは元の時代に戻れるまで大男の屋敷で掃除や畑仕事などをして過ごすことになった。
最初はきつくてヒーヒー言っていたが慣れてくると不思議なものでやり甲斐やこの町への愛着が湧いてきた。
僕らはこの時代に適応してきたのだ。

一週間ぐらいが経つと元の時代に戻ることを考える時間がかなり減ったような気がした。確かに現代の利器はないが、悪くは無い。ここでなら必要としてくれる人もいる。インターネットのしがらみも無い。もうこのままでもいいのではないかと思っていた。

そんなことを考えていた夜、事態が急変した。
僕とAは夜の町を散歩していた。この時代にしては(大して知らんが)夜でも人が出ている。
繁華街のような地区を飯だ飯だ!と歩いているとなにか違和を感じた。いつもなら「よお!」とか「元気だな!」とか1度は話しかけられるのに今日はない。まぁ、そんな日もあるだろうと思いかけたが、やはり違和感が強い。

違和感の正体に気づくのはすぐだった。町の人々の顔に生気がないのである。皆、死んだような土色や顔面蒼白なのである。それどころか本来目や鼻や口がある場所に何も無いじゃないか!

そんな場面に遭遇したら普通ならパニックになってヒィ…と弱々しい声を上げてしまうのだが、冷静に顔のない人々の流れを眺めていた。
畑仕事の疲れで頭がおかしくなってしまったのだろうと同じく違和感の正体に気づいたAに「今日は家に帰って寝よう」と話しかけた。Aも静かに頷いて僕らはすぐに帰った。
帰路の途中、大男に町であったことを話そうか考えていたが、いや、辞めておこう。

家が見えてきた。いつもならまだ灯りがぼんやりついているが今日はない。心臓の音が大きくなる。やっと恐怖を思い出した。僕らはここに帰っては行けないと本能的に感じたのか顔を見合わせて帰ることをやめた。

その晩は、小川の脇にある小屋に止まった。朝になったら元通りなのだ、と淡い希望を抱きながら意外と早く眠れた。
しかし、そんな淡い希望はすぐに消え去る。生気のない町、顔のない人々は変わりない。Aはかなり疲れているようだ。僕はかける言葉が出てこなかった。
顔のない人々は僕らを襲うわけでもなくいつも通りの生活をしている。いつもと違うことと言えば、町に提灯や出店のようなものがある。祭りか?こんなときに……

僕らはどうしようもなく町の中心部にある階段に腰をかけて死んだ空間を眺めていた。元に戻ってほしい。僕らは元の時代に戻るということをすっかり忘れていた。
すると、前の方から大柄でひょろひょろの男(?)が歩いてきた。顔のパーツもある!この状況から抜け出せるかもしれないと少しの期待が出たが、そいつの様子は明らかにおかしかった。
歩きつつその長い手で顔のない人々を掴み食べながらこちらに向かっている。
今すぐ逃げないと!と思って腰を上げたがAは気づいていないようだ。
おい!なんかやばいのが近づいてきてるぞ!と声をかけても何言ってんだよ。いつも通りじゃないか。と返すだけ。
いや、たしかにいつも通り(住民の顔がないこと以外)だが、これはまずい!
Aの腕を引っ張って無理やり連れていこうとしても、動かない。
そんなことをしているとそいつがもう目の前にいた。生気のない顔でAを覗き込んでいる。Aは気づいていない。もうなにがどうなっているのかわからない。ただ呆然と眺めていることしかできなかった。

そうしているうちに、そいつはAをバリバリ食べ始めた。Aは何も反応せず「酷い顔してるな」とふざけながら食べられていく。酷い顔はそっちだ。もう半分もないじゃないか。
食べ終わるのに時間はかからなかった。肉片のひとつや血の一滴もない。
Aを食べ終わったそいつがブルブル震え出すと顔が膨らんで赤い液体が吹き出したと思ったら巨大なダルマになった。
ダルマは「次はお前だ」と僕の目をしっかりと見て宣言した。ようやく僕の体は動くようになった。
ひたすら逃げた。どれぐらい逃げたのかもう分からないが、不思議なことに疲れはない。ダルマはずっと追いかけてくる。ここはどこなんだ?あいつは何者なんだ?もう殺してくれ。

気づくと僕は地元の路地裏を走っていた。元の時代に戻れた!とか喜びの感情はなかった。ただダルマから逃げることしかできない。どこまで行っても景色が変わらない路地裏をただひたすら走る。ダルマは一定の距離を保って追いかける。

路地裏の終わりが見えてきた。やっとだ!何がやっとなのかはわからないが、ここから抜け出したら何か起こるかもしれないと希望的観測をしたのかもしれない。
抜け出すと栄町と現代が入り乱れた空間に出た。ダルマはいない。
やった!やったぞ!もういいんだ!
僕はひたすら喜んだ。もうここがどこなのか、自分が誰なのか、なんてどうでもよかった。

何日ぐらい逃げ回ったのかわからないが、いきなり疲れがきた。近くに神社がある。今日はここで休もう。少し場所をお借りしますと賽銭箱に大男からもらった給料を収め、寝た。

起きると僕の周りには小さなダルマがいた。もう何が起こっているのかわからない。どうしたいんだ!
僕は何も出来ぬままダルマに全身を食われ終わった。


悪夢だな。
夢から目覚めると安心とともにここは本当に現実なのか?と不安に駆られた。ここが現実で僕らがここに存在している根拠なんて実は浅いんじゃないか。
とりあえず、家にダルマがないか確認した。

良い夜を

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