制約の中で引き出される創造性を生み出すCHORDxxCODEのテクノワークショップ
みなさん,ワークショップは参加されたことありますか?
ワークショップは体験型の学びの手法で,noteで「ワークショップ」で検索すると10万件以上も検索結果が出てくるくらいポピュラーな学び手法で,さまざまなメソッドが開発されています.
私が参加している女性博士研究者7名で結成されたリサーチ・エンジニアリングユニットCHORDxxCODEではエンジニアリングとデザインの間の立場から,産学の方々にこれまで各回ごとに異なるテクノロジーを使ったさまざまなテーマのワークショップを提供し,テクノロジーを通したアイディアを参加者のみなさんと創出,デザインしてきました.
2022年の10月にもダイヤモンド社のみなさんに機会を頂き,CHORDxxCODE(以下CxxC)のメンバーのソン ヨンアさんの研究テーマであるソフトロボットに関するワークショップをデザイン,実施させて頂きました.
今回のワークショップでは,物理的・心理的に距離が離れている相手とも優しく深くコミュニケーションできる,空気で膨らみふわっと現れる柔らかい分身ロボット(ソフトロボット)を使った未来のコミュニケーションの研究事例を紹介し,実際に,身近な人や体験を想像しながら粘土を使った分身ロボットの作品作りから即席分身ロボットのプロトタイプを使った未来のコミュニケーションのアイディアを2回のワークショップで参加者のみなさんと手を使いながら考え,議論しました.
今回,ソンさんの研究を中心にワークショップを企画し,私はアシスト的な参加をしましたので,ワークショップを俯瞰して観察し,振り返りの記事をまとめてみたいと思いました.
そこで,2022年の11月に私の会社でサービスローンチしたCoMADOというツールを使い,ワークショップ中に個人的な気づきやメモなどを記録し,ワークショップ後にCxxCのメンバーと振り返りの会を実施しました.
noteでは,今回のワークショップのまとめと,これまでCxxCが主催してきたワークショップで提供する学びについてのまとめ,最後にCoMADOを使った観察・振り返りの特徴をまとめます.
「そこにいる感」のコミュニケーションをテーマにしたデザインワークショップ
Day1: 誰もがストーリーテラーに
ワークショップ1日目はソフトロボットの紹介の後,親密さの異なる人(家族,友人,同僚など)を想定し,誰にいつ,どういう風に分身ロボットとして出てきてもらいたいか,粘土で形を作りながら考えを作品として具体化する個人ワークを行いました.
作品制作後,作品の形の意図や誰が身体のどこでどんなコミュニケーションをとるかなど実際に身体にのせてもらいながら発表してもらいました.
発表では,いつも優しく叱咤激励してくれるご両親をイメージした作品,賑やかな友人や市役所の人など,イメージの背景にあるストーリーが作品の性質として具体化され情感的に語られ,参加者のみなさんが全員の発表に共感して聞き入っていました.
自分の体験談を元にイメージした作品を自ら制作し発表することで,全員が自然とストーリーテラーとなり,共感力のある発表ができていたのかもしれません.
「考えやアイディアを立体物に外在化することで,自分の考えを話しやすくなる」という効果はレゴを使ったワークショップ,Lego Serious Play®︎でも実証されています.
今回のワークショップもLego Serious Play®︎で実証されているノウハウと,さらに私的な体験談が重なり合い,創造的思考を刺激させ共感力のある発表につながったように思います.
最近は事業開発においてもビジョンやミッションにストーリーや共感が求められる時代,自分自身の経験を外在化させるトレーニングとしてDay1で手と頭を連携させ考えながら,具体化するプロセスは効果的だったようです.
Day1の最後に次回のワークショップで使うための分身ロボットのプロトタイプ用に,個人ワークで作った複数の粘土の作品の中からチームで2つを選択してもらいました.
1週間後のDay2のワークショップまでに,主催者側で,選択された作品を3Dスキャナーでスキャンしてモデルを作成,型紙を作り,縫製して分身ロボットプロトタイプの作成をしました.
Day2: 動く実体物を通した主観の交差
Day2のワークショップでは,事前に製作した小型のファンと関節を動かす紐を実装した,チームごとの2種類の即席分身ロボットプロトタイプを触りながら,分身ロボットで叶える未来のコミュニケーションサービスをチームで議論しアイディアをまとめ発表してもらいました.
分身ロボットプロトタイプは,個人の作った作品そのものが忠実に再現されるわけではなく,形は縫製のしやすさからデフォルメされ,最大2ヶ所の関節の動きに制限されることで,特定の個人の体験に依る具体化した作品でなく,抽象度が高くなった形として具象化され,Day1で参加者同志で共有した個々人の体験談を交差させながらサービスアイディアを導き出す創造的な議論の発展に効果的に働いていたように思えます.
利用シーンのアイディア発表では,プロトタイプを使った即興演技も交えながらチーム発表してもらいました.
スポーツ観戦などの大好きなコンテンツを友人同士リモートで共有,一緒に観戦する空気感シェアサービスや,必要な時だけ出てきて道案内したりほめてくれる初めてのおつかいをサポートできる,親子での利用を想定した分身ロボットなど誰かと一緒に体験したり成長していくような相手を思いやる優しいテクノロジーのサービスアイディアがみなさんから創出されました.
CHORDxxCODEのテクノワークショップで提案する学びの形
CxxCでこれまで実践してきたワークショップは,参加者のみなさんに何らかのテクノロジーを媒体にしてアイディアを広げる体験学習の機会を提供してきました.
頭で考え議論するアイディア創出の場合,最初の仮説を通して自由にアイディアを探求したり深掘りしたりすることになりますが,今回のワークショップのように粘土というマテリアルの特性だったり,分身ロボットプロトタイプの形や物理的,技術的制約がところどころに入ることでアイディアを考える時に強制的に制約が入ります.
こうした物理,技術の制約の介入により,自分達が持つ持論や考えを半ば強制的にリセットしなければならなくなり,別の視点を生み出さざろう得ない状況を作り出します.この制約により,CxxCのワークショップならではの参加者みなさんの創造的なアイディアに帰結するのではないかと考えました.
CxxCのテクノワークショップのアイディア創出モデルを今回のワークショップの流れで整理してみます.
正解のないVUCAの時代といわれる現在,CxxCの提案する学びの形は考え方のリフレーミングのトレーニングとして有効なのかもしれません.
CoMADOを使った記録と振り返り
オンライン型デザインリサーチツールCoMADOを使って自分達が主催したワークショップの記録と振り返りをしnoteにまとめました.
ワークショップ中に気になるところや興味のある点を指差しをするだけで主観視点を画像で記録したり,文字の記録と同時に場面の記録ができるCoMADOは,時系列に自分視点の記録が容易にでき,振り返りに利用することができました.
ワークショップ終了から3週間後の振り返りでは,思いのほかワークショップのことを忘れていて,私の興味・関心が断片的に記録されたMiroボードをメンバーと見返すことで,断片と断片の間をメンバーそれぞれの記憶で補間しあいながらおしゃべりできるので,その思い出す行為そのものが楽しいとのコメントをもらいました.
動画記録*だと忘れたことを再確認する作業になりますが,断片的記録を使うと記憶の呼び起こしや振り返る時に再度考えるきっかけになるので振り返り行為自体が創造的作業になるようです.
CoMADOの創造的ツールとしてのポテンシャルを新たに発見することができました.
参考記事
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?