7.覇気を放つ彼とオーラをまとう彼女
自己嫌悪の沼に沈む半年前の話。
36歳の年。
経済力のキャパを超える家を
建てました。
頭金などもちろん無く、
ブラックリストに片足を突っ込んだ
夫では全額融資は叶わず、
私も連帯保証人となり、
金利の高い追加融資も上乗せして、
71歳まで続く借金を
金銭感覚パラダイスな夫と共に
背負ったところで、
「これ…大丈夫なのかしらん」
と、
不安を抱くには遅すぎるタイミング、
ようやく、
「お金のことって誰に相談したらいいの?」と
しっかり者の妹にSOSを出しました。
彼女の紹介で来てくれた保険会社の
ファイナンシャルプランナーさんは
私の知っている「営業マン」とは
かけ離れていました。
覇気を放つのです。
「おはようございます!」
と言われただけなのに、
気力の乏しい私との
エネルギー量の差なのか何なのか、
とにかく、でんじろう先生の空気砲で撃たれたのと同等の圧で
どん
と私は揺らぎました。
初めての経験だったので、
それを表す言葉はONE PIECEから
「覇王色の覇気」と
引用してくるしか無く。
そして
追い討ちをかけて、
話せば話すほど出てくる
理解不能な言動。
その人は、
「仕事か趣味かよく分からない」
と言うのです。
「型にハマるのは嫌」
と言うのです。
仕事とは時間や我慢と引き換えに
お金をいただくことでは?
生活とは型に合わせて
順応していくことでは?
ライフプランを作る作業をしている
はずが、頭の中はそんなハテナで
いっぱいになっていきました。
そして同時期にもう一人。
こちらはかれこれ10年近くも
お付き合いのある、
いわゆる「ママ友」が、
急にオーラを放ち出すという怪現象が。
覇気と同様、目には見えません。
そう感じるのです。
こちらもあえて世間から引用すると
俗に言う「キラキラしてる」っていう、あれです。
買い物途中にキラキラ中の彼女に偶然会ったので、
「変わった営業マンが
理解不能な話をする」だの
「仕事とは楽しいものなのか」だの
こぼしていると
彼女は彼女で
「好きなことすれば良いのよ〜」
と、
吐く息に混じっちゃいました、
くらいの自然体で
キラキラワードを放ちました。
何なん!
みんな楽しんでるの?
私の知らない世界で!?
コンプレックスまみれの私が
人とのコミュニケーションを避け、
現実逃避のために浸った
本や映画やゲームの世界の面白さは、
現実には、少なくとも自分の周りには
存在しない、縁がない、と
思っていました。
なのに目の前の彼や彼女は、
現実を、仕事さえも、
どうやら心から楽しんでいる。
自分の頭のなかのものが
崩壊しました。
愕然。
ああいう風になりたいと
望むというより、
正確には
「あ、あれが仮面も鎧もむいた後の、
本来の人の姿だ」と、感じとった瞬間、
ガチガチに抑え込んでいた
言い様のない感情が溢れてきて
どうしようもなくなり、
その夜、夫の前で号泣しました。
なんだかんだ言って、
感情をぶつけられるのは当時、
夫しかいなかったのです。
なぜ泣くのかは説明できないので、
ただただ
「借金怖いよ〜」という
陳腐なセリフと共に
ひとしきり泣きました。
夫が、好物の「ナヨナヨの妻」を見られてご満悦なのが癪でしたが、
このときばかりは彼の根拠なき
ポジティブ必殺技・『ドウニデモナル
ダイジョウブ』に助けられ、
「私だって!」と、
「私だって!!」と、
覇気とオーラの秘密を探ることを
決めたのでした。
次回
8.オーラどころか生理が止まる
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