「葉っぱ危機/leaves crisis」3
やがて一ヶ月もたたぬうちに、物々交換というルールさえなくなりました。森の動物たちは、至って気楽に欲しいものを受け取り、全くもって気安く作ったものを与えるようになったのです。森はますます活気に満ち、ぞくぞくと新しい店がオープンしているようですよ。
魔王が死んでから一年後には、森の動物たちはもう落ち葉を使ってパンを買っていたことなど忘れてしまっていました。たった一匹、森のカルチャーセンターで花嫁講座を担当しているヘビ先生だけは、物覚えが良い方でしたから、「なんであんなものに手間を取られていたのかしら」とぼんやり思っていましたけれどね。
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「めでたし、めでたし」
りつこ せんせいが さいごの ことばを よみ おえると、
「そんなのありえないよ!」
と、たっくんは いいました。
「そんな ゆめみたいな せかい、おかしいもん」
「わたしには、ちっとも へんだなんて おもわないわ!」
あっちゃんは たっくんに そう はんろんします。
「だって、あらしの あとの もりの ほうが ずっと しぜん じゃないの」
「ぼくも そうおもうなあ」
と、まーくんも いいます。たっくんは、たしかにそうかな、とおもったのですけれど、いいだした てまえ ひくに ひけず、きの よわい まーくんを にらみつけ、
「ほんとうか?ぜったいに そうなるって いいきれるのか?いのちを かけて?」
と、いいました。
まーくんは べそを かきそうな かおで うつむきます。
「わかんない」
「ほらみろ!おとぎ ばなし じゃあるまいし。いいものだらけの せかい なんてありえないよ。わるいやつらが ぜったいに いて、よわいものを くるしめようとするのが この せかいって もんじゃないか。みんなが しあわせになる なんて きれいごとだ」
まーくんが きよわに しょげかえって いるので、たっくんは はなしている うちに どんどん ただしいことを いっている きぶんに なりました。
でも、ここで あっちゃんが だまっているはず ありません。
「きれいごとで なにが いけないのよ!」
あっちゃんは きっぱりと そう いいました。
「あっちゃんって、あんがい こどもだな」
と、たっくんは おとなぶって みせます。
「たっくんの いじわる」
おやおや、あっちゃんも まけていませんね。
「はいはい。そこまで」
にっこり ほほえんで、やさしい りつこ せんせいが、あっちゃんと たっくんとまーくんの あたまを じゅんばんに なでて くれます。
「みんな それぞれの かんそうで いいのよ。この ものがたりが ありえると そうぞうできる ひとの せかいでは おこるし、そうぞうできないと おもうひとの せかいでは おこりません。それだけの ことなの」
「えー、なんだよ それえ」
はなたれの ふーたが いいます。
「ほら、みんな、うんどうかいに UFOが きたことを おぼえている?」
りつこ せんせいが こういうと、こどもたちは いっせいに くちを ひらきました。このことに かんしては、チューリップぐみの えんじたちは みな いっちだんけつ しているのです。
「そう。みんなの パパや ママは、UFOを めのまえで みても、そんなのいなかったって いったでしょう?それと おなじ なのよ。しんじられない ことは おこりません。そういうふうに できているの」
「ふしぎだなあ」
たっくんは おもわず つぶやきます。
「そうね」
りつこ せんせいは そういうと、えほんを パタンと とじました。
そこでグッドタイミング。
「さあ、おやつの じかん ですよ~!」
えんちょう せんせいが、あげたての ドーナッツが のった さらを かかげて みんなに よびかけます。
さっきまで けんか していた ことも わすれて、あっちゃんと たっくんは、
「やった!」
と、ハイタッチ しました。
それから チューリップぐみの こどもたちは、みんな なかよく、おなかいっぱいドーナッツを たべましたとさ。
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