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【試合考察】ファジアーノ岡山vsガンバ大阪 J1第3節
どうも、ゼロファジです。
最高のシナリオ
もしかしたらやれるのでは?と思っていたガンバ大阪戦でしたが、やれました!しかも、内容的には完勝に近いゲーム。去年までの良さに今年プラスしたかったクオリティを発揮できて、「J1をこう戦いたい」と新たに示す一戦になったんじゃないかと思います。いやー、すごい!
また、ゲーム展開的にも前半の終わり際に先制して、後半の開始まもなくに加点するという願ってもない試合運び。ほんと言うことなし。スタジアムの雰囲気も最高で、水曜の夜の寒い中、駆けつけたファジサポに忘れられない勝利をプレゼントしてくれたなと思います。
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スタメン
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中3日で続く3連戦の真ん中ということもあり、両者ともにメンバーを少し入れ替えて迎えた試合。ガンバは4231。岡山は3421
ガンバの方はやはりFWとSHのところ、ジェバリではなく南野。そして倉田・山下の両SH。
岡山の方も、古巣対戦となる一美がスタメン。そして待ちわびた岩渕が初先発。ボランチも藤田・神谷のコンビも公式戦でははじめて。さらには、左CBに工藤孝太がスタメン。はたしてどれだけやれるのか?大変注目でした。
ルカオ・木村太哉はベンチスタートとなりましたが、この2人は後半から投入して変化をつけられるカードなんですよね。実はスタメンで同時起用すると、後半タテにいけるカードを持てなくなるというのが若干ウィークでもありました。さらに、今は末吉もいないですからね。
そういう意味では、彼らをいい形で送り出せるようになれば、というのが理想だなと思ったメンバー編成でありました。
試合の流れ
前半
ガンバは4231。守備時は442あるいは4411でミドルブロック、行けるときは前からプレスという構え。
岡山は3421で、守備時に523。ミドルブロック、行けるときは前からというスタンスは同じ。
序盤からペースを握ったのは岡山。1分、奪ってから早くタテに!という意識が強く、いきなりチャンスメイクし優位にゲームを進める。
大きな展開から跳ね返されてもセカンドボールを拾ってゴネていく。9分のシーンはそのあたり顕著で、ハイボールを競り勝ち岩渕がセカンドを拾って、迷いなくSB裏へ走る江坂へという形。チームの狙いを感じる。
ガンバは食いついてきた岡山のプレスを剥がしながら左サイドの奥へスルーパスを狙う形を再三トライしていたかなと。倉田が落ちてCBを釣り出し、その背後に南野や黒川を走らせる形。
14分の加藤聖のアーリークロスはガンバのウィークを狙い撃つ。WBに対してどうしても外寄りにSBが構える分、CB-SBの間が開きやすい。そこへピンポイントのボールを送る。
ガンバはなかなかに有効な攻撃が組み立てられない。宇佐美や倉田がポジションを移動して変化を加えたいが、なかなか岡山コートの奥まで侵入することは叶わず。
43分。ここも中盤でのガチャガチャした展開からダイアゴナルにCB-SB間を抜ける柳。落としを受けた一美のシュート。
そして続くCK。神谷のキックが神すぎた。ゾーンで守るガンバの隙間に落とすボールで一美がヘッド。ガンバがブロックしたボールを柳貴博がプッシュして先制!!前半終了間際の先制点という願ってもないゴールでした。
倉田のシュート。再三狙っていた岡山の右サイドを攻略する形から江川→南野という攻撃、以外では有効な形を作らせなかった前半。ガンバのシュート数2がそのへん物語っているな、と。
ガンバは後半ネタ・ラヴィを投入。
後半
鈴木徳真を最終ラインに落としたり、なんとか岡山のプレッシャーをかいくぐりたいガンバだが、どうしても岡山の523の23のところで前向きをなかなか作れない。
47分。ガンバのロングフィードを跳ね返したセカンドを拾っての展開。藤田→江坂フリック、3人目の動きで右サイドを抜け出した柳貴博へ。中は一美・岩渕の2人。ガンバの守備者も2人と数的同数のビッグチャンス!柳貴博が完璧なグラウンダーのクロスを送り、一美がプッシュして2点目!後半開始早々に追加点と、加点タイミングも最高。
失点後も流れが変わらずと言うことで、ガンバは3枚替え。岸本、唐山、ジェバリ投入。ジェバリが入って高さと、ポストプレー要素が出てくるので、あんまりいいクロス、パスを蹴らせたくない感じ。
58分。岡山は切り札2枚。ルカオと太哉。江坂、岩渕を下げる。3連戦だしね。これで、江坂が下がる分、中盤の前目で決定的なお膳立てができる選手がいなくなるけど、ルカオ・太哉なので、アバウトでもいいと。そして、一美をシャドーに。
昨年から続く勝ちパターンだ!ここもバージョンアップされていて一美をピッチに残せる。なぜならブラウンノア賢信がいるから。
ガンバは出ないといけないので、ワンマンアーミー的なルカオと、プレッシングの鬼である木村太哉はかなり嫌なはず。
63分。ちょっとミスが続いて嫌な流れだったが、ルカオが相手を背負って右サイドに運びファウルをもらう。ビッグプレーだなあ。
スローインからサイド奥に運びルカオに預けるいつもの嫌がらせが功を奏す。ルカオが持ったときのスタジアムの湧き上がり方がえげつない。石原崇兆、仲間隼斗レベル。
67分。神谷が足を攣ったのでルーキー藤井海和と交代。どこかで早く使ってゲームに入れたかったが、2点リードもありいい形で使えたのがよかった。
連戦、思い通りならないメンバー構成もあってか、時間が経つほどに攻撃の形が作れないガンバ。
81分。疲れが目立つ一美に代えてノアを。脚を攣った柳貴博に代えて阿部海大。逃げ切る。
この日解説だった森崎浩司さんの「なかなかチーム全体で糸口を見出せずにこの時間まで進んでますから」という指摘どおりの展開。
その後も安定して時間を使い。見事勝利。
感想・注目ポイント
・守備力の差が明暗を分ける
中3日でそこまで相手の対策ができない中での試合ということで、ある意味両者の素が出やすいシチュエーションだったのかなあと思います。
内容的に明暗を分けたのは両者の守備力の差にあったなと。【戦前考察】でも思ったとおり、ガンバは守備時にコンパクトさに欠けるところがありました。特に、前からプレスに出ていくときや、中盤でガチャガチャっとセカンドボール争いになり相手にボールを持たれたときには、それが露わになりやすい。さらにCB-SB間が開きやすいという特徴を狙い撃ちできたのは大きかったですね。
・柳貴博大爆発
開幕戦は2ミスショット1アシストでしたが、もうこの日は120点あげちゃう!特に、2点目の形はこの試合の狙いが全部出た素晴らしい流れでしたし、あのクロスは間違いなくJ1クオリティ。これまで確かな戦力ではあるけれど、彼にしてはもっとやれるのでは?という感じがありました。けど、脱帽ですよこんなん。最高。
・昨年の勝ちシナリオを再現
ルカオ・木村太哉をリードで投入するのは、典型的な岡山の勝ちパターンです。それぞれあのシチュエーションで最高に相手を嫌がらせる役割ができる。
J2ではできていたことが果たしてJ1でもできるのか?は大きなテーマですし、ガンバに勝てたから証明できたと結論付けるにはまだ早い。
しかし、昨年までのベースにJ1でも通用するクオリティが付与されて進化しているのは間違いないでしょう。木山ファジはロースコアゲーマーです。去年と同じような勝ちシナリオをどれだけ再現できるか。楽しみですね。
・工藤孝太の岡山デビューがすごい
今季初お目見えとなった工藤孝太ですが、いや、もう、「ええ選手借りてきたな」という思いしかないですよ。一番大きな穴であった鈴木喜丈のバックアップ問題を解決できるタレントであることはこの試合でもある程度示せたのではないかなと思います。
鈴木喜丈はボランチ→左CBなので、ボランチのようなボール扱いのうまさ、パスセンス、そして強化されたつよさ・たかさを持っています。
それに対して工藤孝太は去年北九州で2CBを務めたように、CBっぽい左CBだなあと。対人が強い!そしてキックがうまい。これまた逸材ですね。
鈴木喜丈のバックアップに甘んじる気はないでしょうし、ここの競争が熾烈になるとほんとにおもしろいなと思います。
【観戦メモ】先制点の大事さ
こちらのマガジンで解説していることをベースに、試合の中からシーンを抜き出して、サッカー観るのがもっとうまくなる知識を記憶していこう!という【観戦メモ】のコーナー。
今回のテーマは「先制点の大事さ」です。
さて、この試合は岡山が勝ちシナリオにのせて見事にガンバを破ったというゲームになりました。内容的にも完勝といえる出来だったと思います。
しかし、サッカーというのはほんとにおもしろいもので、どっちに先に点が入るか?によってゲームの展開が相当に変わるんですね。
そういう意味では、ガンバが先制し岡山が0-3で敗れて2連敗というシナリオもあり得た。いやいやそれは悲観的すぎるでしょ?って声も聞こえてきそうですが、そういう「もしこうだったら?」みたいなシナリオ分岐を考えてみるのも結構おもしろいものです。
では、ガンバ大阪がもし先制していたら?というifストーリーを実際に考えてみます。
ガンバは開幕戦の大阪ダービー、そして2節のホーム福岡戦でそれぞれ2得点しています。本調子とは程遠いにも関わらず得点は取れている。しかし、一方でこの試合でも見受けられたように守備には結構隙があります。
もし、お互いノックアウト上等の点の取り合いをすると、ガンバの方が有利です。なぜなら得点力の高いタレントを多く持っているから。また、殴り合うようなゲームになればお互いガードを下げて打ち合うわけですから、守備力の弱さを攻撃力の火力で誤魔化すという試合を演じる余地が出てきます。
一方、岡山は守備のチームです。先述のとおり、しっかり守って少ない点数でも勝ち切るのが得意です。しかし、火力はリーグで高い方ではない。
もし、そんな岡山がガンバと打ち合いを演じてしまったら、持ち前の守備力での勝負ではなく、火力勝負になってしまうので、明らかに分が悪い。そのシナリオは避けなければなりません。
そこで大事になるのが先制点です。
もし、ガンバが先制すると岡山はリスクを承知で得点を取りにいかないといけなくなります。必然的に守備力をある程度削ってでもいかないと追いつけない。
ガンバはリードがあるわけですから、そのままでも勝てます。さらには、岡山がバランスを崩してくる隙をついて0-2にでもすれば、なおさら有利になる。福岡戦とかまさにそんな感じでした。
守備が強みの岡山から守備力を削らせ、リスクを取らせ、前に出させる効果が先制点にはあります。
後半疲れてきてスペースができてくると、質の高いガンバのアタッカーをしっかりガードを上げて「防ぐ」ことも難しくなり、持ち前の守備力はなおさら発揮しにくくなる。
一方でガンバは守備を固め、逃げ切りをはかってくる。スペースはなくなり、狭いエリアでのプレーを強いられ、なおかつたくさん人数をかけないと点が取れない。そして、虎視眈々とカウンターのチャンスを狙われる。
しかし、そういう悪夢のシナリオではなく、こちらの勝ちシナリオにできたのが前半終わり頃の先制点というわけです。
岡山がリードを奪った分、今度はガンバがリスクを取らないといけなくなる。守備の隙はより指摘されやすくなり、2点目のシーンに結実しました。
さらに、ワンマンアーミー的なルカオがいるので人数をそんなにかけないでもグイグイ押し込んで、なんならCKとかとってくれる。スローインで逃げてもどうせルカオです。攻めたいけど、ルカオにゴネられてしまう。
一方で木村太哉は豊富な運動量があり、前線から追いかけ回していきます。運びたいけど、何度も絡んできて邪魔してくる太哉の存在はうっとおしくてたまらなかったことでしょう。攻めたいけど、太哉にも邪魔される。
攻めなきゃいけないのに攻めさせてもらえない。
着々と時間は減っていくのに攻めの形がつくれない。まさに、岡山の守備力がガンバの火力を鎮火してしまうかのようです。こうしてガンバにとっての悪夢のシナリオになったわけです。
こんなふうに先制点という大きなシナリオ分岐によって、それぞれの強み・弱みがゲームに及ぼす影響も変わってきます。それくらいやっぱり先制点は大事なんですよね。
岡山にとって先制できるかどうかは一番大事な要素と言ってもいいので、次の試合の先制点がどっちになるか?楽しみにしたいと思います。
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