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【試合感想】神戸vs広島 スーパーカップ


どうも、ゼロファジ(https://x.com/ZeroFagi)です。


秋春制移行があるためどうやら最後のスーパーカップとなるそうで、今年も優勝候補のトップに予想される2チームの対戦となりました。J2ならともかくJ1についてはほとんど知識を持っていないので、「J1の予習や!」とばかりに試合をチェックしてみました。

生放送で1回流しただけなので分析的な精度は高くないですが、「岡山と対戦する時にはここは要注意」というポイントをいくつか拾えたらなと。それにしても岡山サポとしてスーパーカップで予習しようなんて思う日が来るとはな!

スタメン


神戸は433、広島は3421のフォーメーション。神戸は守備のときには433→442に変えて構える形。

広島はどうやらかなり主力を先発させてきたようで、これに対し神戸は主力を温存したメンバー構成になっている模様。両チームともこの先ACLを含めた過密日程に入っていくので、そのあたりの考え方の違いがスタメンにでていたのかなぁと。

注目は岡山から移籍した本山遥の神戸デビュー。「おお、出番早かったな!」と少し驚きましたが、彼については後ほど触れるとしましょう。


試合の流れ


試合を通じてペースを握ったのはやはり広島。主力組で構成されたメンバーはスムーズにチームを機能させ、ずっと優位でゲームを進めていたかなと思います。前半の早い時間に右WB中野のクロスをトルガイ・アルスランが頭で合わせて先制。前線からのプレスで神戸の組み立てを邪魔し、ボールを回収。逆にボールを持つと押し込む。はね返されても丹念にボールを拾って二次攻撃三次攻撃につなげていく。


神戸はなかなかボールを前に運ぶことができず、シュートまでたどりつけない。スタッツをみるとシュートの数で大差がついており「さもありなん」という感じでした。

神戸とてこの試合を捨てたわけではなく、後半に大迫・武藤・酒井を投入し挽回をしようと試みる。大迫のキープを軸に広島コートへの侵入を試みる。あ、そうそう、この3枚投入の直前に神戸の決定機があったのでこれは覚えておきたい。これについても後述しておきましょう。ここはちょっと勝負を分けた感あるシーンでした。

70分にはCKから荒木のヘッドが決まって0-2。優勢にゲームを進めしっかりと追加点を奪った広島のゲーム運びは安定しておりそのまま試合終了。見事最後のスーパーカップを制したのはサンフレッチェ広島ということになりました。

感想


どうしてもメンバー的にもゲーム内容的にも広島の良さが目立つのは致し方のないところだったかなと思いましたなあ。神戸についてはこのゲームでどうこう言うのはちょっと違うのかなと。したがって、どうしても広島中心の感想になるのはやむを得ない感じ。以下、覚えておきたい印象的なポイントについて。

・広島はヘッドが鬼強いな!


ボックス内でのヘディングの強さなんなの??荒木のゴールもそうだけど、ジャーメインも難しいボールに合わせるし、先制点もトルガイ・アルスランのヘッドだったし。とにかくボックス内で相手より先に触るシーンが多かったイメージが強く残りました。これは怖い。

・左右から精度高いクロスがあがってくる


先制点は右WB中野のすんごいクロス。追加点も左WB菅のコーナーキック。ということで、左WBでスタメンだった東も含め、左右から良質なクロスが上がってくる。ボールスピードも速いし、精度も高いし、それでヘッドが強い味方もいて。クロスから頭でズドン!という攻撃もかなり脅威だなと。セットプレーがめんどくさいぞこれは。

・広島のプレスが試合終盤まで止まらない

そこまでめちゃくちゃハイプレスに出るわけでもなさそうだけど、試合の終盤までプレスの足が止まらない印象。ボール保持率も高く休む時間も多かったこともあるのかな。あと、冬だし気温が低いので息が続くということもあったかも。過密日程で身体的な負担が大きい中でこれをどこまで維持してくるのか?はちょっと注目したい。

・広島の3CB強すぎだろ・・・

とにかく塩谷・荒木・佐々木の3CBが強い強い。高さもあるし、対人も強いし、ボールも運べるし、パスも出せるし。仮に上手くスペースを作ってこのCB陣とタイマンに持ち込めても出し抜くのは相当大変そうな気がする。しかし、これだけ強い3枚だとバックアップも大変だと思うけどそのあたりはどうなんだろう。

・トルガイ・アルスランがうますぎる

この試合ではじめて見ましたけど、もうファンになっちゃいそう。好き。シャドーに求めたい資質を兼ねそろえた見ていて楽しい選手だなと思いました。まず、ボールを失くさない。周囲が見えていて味方を活かせる。裏のスペースを見つけて侵入してくれる。こりゃ大変だ。トルガイにボール預けると、相手は中に足止めされるのでその分大外のWBが空きやすくなるなど。よくできてんなあ・・・

・中島洋太朗がやばすぎた

高校在学中にプロ契約するわなそりゃというプレーぶりでした。トルガイが「つぎのソニー(ソン・フンミン)になる」って言ってましたけど、そりゃそう言いたくもなるわな。特に視野・認知に関してはとびぬけていて「はあ?」って思うようなパスを出してくる。上から見ていて「そんなパスコース想像してなかったな」ってところに出してくる選手は普通じゃないです。まだ体の線の細さは感じるものの、なんか立ち姿とかプレーする姿がエレガントよね彼は。生で見てみたいな。すごい選手になるんだろうなあ。

・唯一の被決定機はセカンドボール争いから

神戸に運ばせず、打たせずと。非常に安定していた広島の守備でしたが、唯一決定機を許したのが後半の9分でした。中盤でのセカンドボール争いを神戸が制し、うまく広島のプレッシャーを剥がしてなだれ込んでいくというシーン。

中盤でのセカンドボール争いではボールの行方が読みにくく反応がどうしても遅れることや、ボール回収に人を割く分守備陣形が局地的に崩れやすいということがあります。まさにそこを突かれた格好。でも、ここは佐々木大樹かな?荒木を交わしたプレーがすばらしかったですね。広島の強固な守備をどうやって崩すか?はどのチームも悩むところでしょうが、広島と言えどもこういうパターンは難しい。ここは覚えておきたいポイントかなと。

本山遥の神戸デビュー

最初の公式戦でいきなりスタメンデビューとなった本山遥ですが、初戦はかなり悔しいスタートとなりました。初瀬?の移籍で左SBが薄くなり、その代役を務めそうな選手たちもこの日は温存ということで「本山遥を左SBで」という起用になったのかもしれないですね。

3バックの左CBで試合に出たことはありますが、左SBはプロでは初めて。右利きの選手なのでどうしても右サイドで使ってあげたいところですが、チーム事情なら仕方ないでしょう。早めに出番がもらえたことを良しとすべきかなと。

どうしてもひいきする気持ちが出て「なんで右で出さないんだよ!?」と怒るファジサポさんもあるようですが、もう神戸の選手なんでね。そりゃ神戸の台所事情で起用されますし、「右のがもちろんいいのはわかってる」状態で出してるわけだから、そこから何を読み取るか?じゃないかなと思います。

基本的には走力をベースとした守備力、複数ポジションをこなせることに強みがある選手なので、ボールを持ったときに展開のしにくい左SBでは苦労するのはやむを得ないかなと。序列的にはかなり下からのスタートになりますが、やるしかないでしょう。がんばってほしいなと思います。後半酒井高徳と交代して退きましたが、神戸は左SBが手薄になったところをどうするんだろう。気になりますね。

林陵平さんの解説を追い解説してみる【観戦メモ】


こちらのマガジンで解説していることをベースに、試合の中からシーンを抜き出して、サッカー観るのがもっとうまくなる知識を記憶していこう!という【観戦メモ】のコーナー。

今回取り上げるのは、「広島のWBがめんどくさい問題」です。

この試合の解説を務めていた林陵平さんと槙野智章さんがこんなやりとりをしていました。広島が先制し、その後も押し気味にゲームを進めていた前半15分。

槙野
「逆にどうですか?いま、この難しい状況。先制点をとられた後の神戸がしなくちゃいけないことってどういうところだと思います?」

「なるべく前からプレッシャーかけたいので、442のSHの選手ですよね。神戸で言う飯野と小池が(広島の)3CBの脇にプレッシャーかけられるか。で、プレッシャーかけたときにWBが空いてくる。そこに対してSBもスライドして捕まえられるか?みたいな。やっぱ全体が前から前から行きたいですよね」
槙野
「そこを前に押し出すためには後ろ(SB)の本山と日高が動かさないといけないですよね」

「そうですね。前(SH)を動かしたときに自分(SB)が連動しないと、たぶんSHだけ行っちゃうと(広島の)WBが空いてくるんで」
槙野
「そうですよね」

さて、このやりとりはどういう意味なわけ?というのを追い解説していきましょう。

まず、神戸は守備のとき442で守ります。この形からプレッシャーをかけたい!というのが神戸の思惑。


神戸の2トップは中央を閉じて、ボランチへのパスコースを消そうとします。そうした状況で広島が左右のCBへパスを出すと、神戸の2トップの横で塩谷や佐々木がボールを持てるような状況になります。ここが林さんが言っている”3CBの脇”ですね。


そのままぼーっとしてたら塩谷に自由にプレーさせてしまいます。神戸はなるべく前でプレッシャーをかけたいので、左SHの小池を前に押し出してプレッシャーon!させる。

小池が塩谷をストップしたり、奪えたりすればいいですが、そうそううまくはいかない。しかも、小池単独で行って塩谷の自由を奪えなかった場合パスが出ます。すると、今度は右WBの中野がフリーでボールを受けられてします。林陵平「プレッシャーかけたときにWBが空いてくる」状況です。

右WBの中野に自由を与えてしまっては困るので、そこには左SBの本山がスライドして寄せる。こうすることで広島の組み立てを妨害したいよね、と。槙野「そこを前に押し出すためには後ろ(SBの)本山と日高が動かさないといけないですよね」というのは、本山が小池に対して「塩谷に行け!」と動かして、なおかつ自分も連動して中野をつかみに行く。そうしないと、中野の自由が奪えないということでした。

3バックのチームと4バックのチームが対戦する時には、このような問題が出てくることが多いので、このパターンを覚えておくと別の試合でも「あ、あのパターンか!」となるケースがたくさんあります。


ちなみに、サッカーのスペースは選手と選手のスキマ、あるいは選手とラインのスキマにできるので、本山が中野に食いつくとどうなるか?

本山が動けばその背後にスペースができることになります。そうすると、広島のシャドーが活用できるスペースが広くなるので、ここにボールを流せばさらに運んでいくこともうかがえる。このパターンも頻出です。実際この試合の後半、広島がこのパターンに沿うような攻撃を見せていたのでヒマだったら探してみてください。

本山は岡山では右WBで出ていたんですよね。したがって、この広島の中野みたいな立ち位置で山形や仙台を苦しめていたわけなんですよ。山形戦の先制点とかまさに!という感じで4バックでWBを処理する難しさを突き付けていて。しかし、立場代わって逆にWBを抑えなきゃいけない状況になっていて、果たしてどういうことを思ったろうなあ?というのがおもしろかったです。

ということで追い解説いかがだったでしょうか?リアルタイムで解説者の言うことが「はいはい、そういうことね」と理解できるようになるとめっちゃ楽しくなるので、こういう観戦メモを積み上げてストックしていくといいと思います。

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