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【試合考察】ファジアーノ岡山vs京都サンガ J1第1節
どうも、ゼロファジです。
「勝った!そして、ホッとした!」
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「勝った!そして、ホッとした!」
・・・・これに尽きるゲームとなりました。
「果たして木山ファジはJ1で通用するのか?」と、ドキドキしたJ1での初陣。京都サンガを迎えての開幕戦はチケットもソールドアウト。当日の空気感もメディアの取り上げ方もJ2とは桁違いで「え?J1になるとこんなに違うの??」と驚くばかりでしたが、素晴らしい雰囲気でこの歴史的な試合を迎えられてよかったなと思います。
スタメン
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岡山は3421。京都は433の布陣。京都に関してはほぼほぼ予想通りというか、意外性のある起用という感じではなかったかなと思います。一方、岡山サイドは「おや?」と思う点がいくつか。
・ルカオの1トップ
去年は一美スタートからのルカオへスイッチという起用法が定着していましたが、開幕戦はルカオがスタメン。彼の場合守備のプレスのところでやや落ちるところがありましたがそのあたりがどうかというところ。これは【観戦メモ】でもうちょい深掘りします。
・岩渕がベンチ外
大きな驚きだったのが岩渕弘人のベンチ外。彼の場合はやはり左シャドーと右シャドーの違いにまだフィットしていないのかな?と。左には江坂がいるし、江坂がベストチョイスなのはこの試合でもハッキリしました。さて、”岡山のヒロト”はどうするか。楽しみですね。
・末吉の代わりに加藤
末吉がスタメンと思っていた左WBには新加入の加藤聖。いきなりアシストを記録して驚かせてくれましたが、めっちゃよかったですね!やっぱり岡山はサウスポーのチームなので、周りの味方とうまく連携してプレーできる選手は一枚欲しい。髙橋諒も高木友也も去りましたが、加藤聖がいる。たぶん、クロスからズドン!みたいなシーンも見られるんじゃないかなと思います。去年そこはなかなかできなかったので。
・立田が右CBでスタメン
最終ラインの右は立田か阿部海大かというところですが、ここはやはり立田。それと中央もやっぱり田上ですね。そうなるだろうと思っていました。この試合だけでもこの選手の能力はたぶん過去岡山に在籍したCBでも1、2を争うレベルでは?と。
試合の流れ
開幕戦で緊張感もあるということで、序盤は両者ロングボールを蹴りあう展開からスタート。岡山としては前から守備に出て持ち味を出したいところでしたがなかなかそうはさせてもらえず、我慢の時間帯。
15分くらいまでは明らかに京都ペース。CKをはね返しても拾われて2次攻撃につなげられる展開でしたが、ここをよく耐えたなと。8分の川﨑の左足のミドルは枠を捕らえていたし、もっと言うと序盤の平戸の裏抜けは、こちらの守備のマークの混乱をついたもの。誰が誰を見るのかあやふやになってしまった。
しかし、13:30あたりから岡山も自分たちのコートから組み立てていく。ここの組み立て素晴らしかった。エリアスを挟むようにダブルボランチが立ち、藤田がボールを引き出すと、京都は右IHの川﨑が寄せる。藤田→田部井と渡ると、田部井を封じるべく今度は左IH平戸が寄せる。しかし、その次。シャドーの江坂が下りてきて平戸の後ろで「前向き」を作りGOサインだ。最終的にルカオのシュートは大きくそれたものの、自分たちでボールを動かして攻撃の形を作れたのはリラックスする意味でも大きかったかもしれない。
そして、22分京都の右サイドでウィリアムがボールを持つところに、加藤が絡んでいく。処理にもたつきCKをゲット。押していた京都がミスからCKを与えてくれたということで、「これ京都からしたら嫌な流れのCKだよね」と思っていたら!加藤のCKを田上が蹴り込み先制!
これで気持ち的には相当に楽になった岡山。27分にはオフサイドラインの向こうへ消えていた江坂を鈴木喜丈が走らせ、グラウンダーのクロスを右WB柳貴博へ送る決定機。
さらには、35分に中盤のこぼれ球争いを制した岡山が江坂のパスから柳貴博の落とし、最後は木村太哉が押し込んで2-0。プレッシャーから解放され、次第に「いつもの木山ファジ」感をゲームに反映させていく。そのまま前半は終了。終了間際には江坂が蹴りだしたロングフィードをルカオと鈴木義宜が追っかける展開に。ルカオが鈴木を跳ね飛ばし、ボックス内へ侵入し倒されるもPKはなしというシーンも。
後半京都は選手交代して、須貝・福岡を投入。岡山は変更なし。なるべく失点しないでタイトな守備をキープしつつゲームを運びたいなと思っていましたけども、中盤のセカンドボール争いでだいぶ上回れた感がありましたね。拾ってから長いボールを使ってルカオを走らせ、時間を作って押し上げる。ちょうどJ2時代交代で出てきたときのような仕事をしっかりとはたしていたように思います。
守備面でも誰が誰を見るのか整理された分、前から京都の組み立てを邪魔する力が回復し、中盤から前に進ませない。そして変わらずセカンドボールは回収率で上回る。なおかつ、原へのハイボールは立田がことごとく撃墜しており、これはなかなかやるな!と。
岡山はキムタカに代えて一美を投入。これは去年ではあまりないタイプの交代で、FWがルカオと一美2枚に。ただし、一美はそのまま右シャドー。京都は岡山のハイプレスに糸口を見つけ出せずにやはりロングボールが増える。しかし、回収力は岡山の方が高く、間延びした中盤を使われると苦しい後半。
のこり20分。田部井が足を攣ったタイミングで、神谷・竹内・阿部を投入。阿部海大は右WBのポジションに。京都が米本を投入したあたりからより繋いでいこうという意思をみせてきましたが、そこまで脅威となることはなく。むしろ奪って裏のスペースにアタッカー走らせ押し込む好循環。時間をうまく殺す試合運びに。
感想・注目ポイント
・江坂が別格すぎた
もう役者が違うなというしかないでしょう。技術・判断・視野・駆け引き、あらゆる点でハイレベルだなと思いました。いかにもトップ下らしい相手の嫌なところでボールを引き出す力、前向きを作ってから点に直結するプレー選択。そうか、シャビエルを呼んだのはこんな風にプレーさせたかったのかもなと思ってしまった。彼のいる左サイドがストロングなので、右サイドで仕留める形が増えるような予感。あと、味方がみんな江坂を見てるし、江坂が持ったらボールが出てくると確信して走っている。
・立田vs原の空中戦の見ごたえ
今節の大きなポイントとなるだろうと思っていたのが京都の原と立田のエアバトル。大満足です!競れる場面ではことごとくはね返していましたし、京都にポイントを作らせなかった。まだまだ連携面ではGK含めスムーズにしていけそうな余地もありそうです。とはいえ、この試合でも問題になりそうな場面は少なかった。ほんとにいい選手を獲ったなと。
・ルカオのパワーと走力は十分にやれる
果たしてJ1のCB相手にどうか?と思いましたが、ルカオめっちゃやれてましたね。特に並走してねじ伏せてまくっていくルカオ得意のプレーにはかなり京都の2CBも手を焼いていたと思います。ハイボールとか背負うプレーとかこれまであんまりうまくいかないこともありましたが、その辺もうまくなってきているしスタメンは納得。
・左サイドの”うまうまカルテット”がなかなかよい
左CBの鈴木喜丈、左ボランチの田部井涼、左シャドーの江坂、そして左WBの加藤と、上手い選手で固められた左サイドの”うまうまカルテット”に非常に好感を持ちました。まだ、江坂、加藤が新加入ということで連携面で意図が合わない場面も散見されましたがその点は今後よくなっていくでしょう。たぶん、外で加藤が受けて、インサイドを鈴木喜丈が抜けるといういつものやつも出てくるでしょうし、このサイドはボール保持をかなり安定させてくれそう。あとは、末吉じゃないときにルカオをサイドに抜けさせれば左サイドの奥も使える。そこもいいですね。
・セットプレーで点とれたのは大きい
今シーズンの最も重要なポイントはセットプレーだと思っています。この試合でも序盤の劣勢をいきなりCKで打ち破ってゲームの主導権を握ったように、セットプレーでの得点がこのチームの成績に及ぼす影響はかなり大きい。先制点はうまく立田がスクリーン(相手をふさいでマークを外させる)して田上をフリーにしていましたし、加藤のキックも素晴らしかった。身長面で後れをとることはあまりないと思うので、積極的にCK・FKは取っていきたいですね。真ん中らへんでFK取れれば、江坂・田部井・田上とキッカーも揃っていますし。
・「岡山らしさ」を保ちながら
ということで、去年の終盤の良さをキープしながらさらに磨きをかけるというテーマで今シーズンを戦うわけですが、まず1つ結果が出てよかった。1勝が遠いと自身も持てないですし、自分たちのやり方に疑念も湧いてくるものです。まだ1試合なのでわかりませんが、一定の水準はクリアできそうな手応えのあったゲームでした。「岡山らしさ」を保ち、追及していく試合を重ねていきたいですね。
【観戦メモ】岡山のハイプレスのベーシック
こちらのマガジンで解説していることをベースに、試合の中からシーンを抜き出して、サッカー観るのがもっとうまくなる知識を記憶していこう!という【観戦メモ】のコーナー。
今回は岡山のハイプレスの基本的な考え方について紹介していこうと思います。この試合の特に後半では守備が機能しており、京都になかなか思うように運ばせない守り方ができていました。では、その守備はどういう感じなのか?ルカオの1トップ起用に絡めてしゃべってみたいと思います。
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京都が後ろからボールを繋ごうとしています。これに対して岡山はハイプレスをかけに行きます。その際最初のポイントは1トップの選手が相手のボランチに自由を与えないということです。
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そうすると相手のCBはボランチへのルートを遮断されますから、他のパスコースへ送るしかない。実際の試合でもルカオが守備のとき、誰を気にしているか?見てみてください。この試合だとペドロをかなり消そうとしていますから。
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中央ではルカオがボランチをロックし、両CBに対しては2シャドーが出ていきます。するとルカオを追い越して2シャドーが2トップなのか?みたいな位置取りになります。
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CBからSBにボールが出たら今度はWBが前に出てロックしに行く。これにより、相手がボールが横移動させても継続的にプレッシャーをかけられるようになります。POの2試合でハマりまくっていたのはこのような守備のやり方なんですが、以前はそうではなくて1トップをもっと走らせる形で守ろうとしていたんですね。しかし、最終的にはこのように1トップはボランチ消し役、2シャドーはCBつかみ係、WBはSBをつかむ係という形に落ち着きました。
これにより、1トップはボランチを消せばよいということになったので、守備負担が減ったんですね。2度追い3度追いしつつ、ボランチへのパスコースを背中で消すといった仕事は難しく、これがルカオはあまり得意ではない。したがって、グレイソンや一美では可能だったけど、ルカオを1トップでスタートさせにくい要因になっていたんじゃなかろうかと思います。
次に、この守り方の注意点について考えてみます。
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WBを前に送ってSBをつかませると、こちらの3CBの周囲に大きなスペースが生まれます。ここにボールを流し込まれるとこちらのCBが相手のアタッカーと対決せざるを得ず、そこのデュエルで敗れると”抜け出したルカオ”みたいなことになります逆にね。なので、3CBはより広いエリアをカバーしないといけない。デュエルで敗れてはいけない。WBやボランチの助太刀をあまり当てにできないという結構難しい守り方を要求されます。これが相当上手くいっていたのでJ2では問題になることはあまりありませんでした。さて、その辺がJ1でどうなるか?というのがひとつ。
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たとえば、このように京都がインサイドハーフの川﨑を外に張り出し、右WBのマルコ・トゥーリオを内側にいれる。
そうすると、右SB宮本まで追い込んだものの川﨑が「浮いて」しまいます。宮本→川﨑のパスが通れば岡山は京都の「運ぶ」を阻害できませんからとりあえず戻るしかない。そうなったらハイプレスは不発とみなしてOKです。他の試合でもとにかく相手は「前向き」を作ってボールを「運ぶ」ことができてしまったら岡山の守備はあまりうまくいっていないという感触で見るといいと思います。
上記のシーンは実際には京都の組み立てでこういうことしてきましたよ!というわけじゃなくて、実は岡山のボックス近くまで押し込んでからこういう変化をつけてきてたんですよね。そこで「誰が誰を見るのか?」ちょっと整理しきれなかったこともあって、いくつかいい形を作られたんですが、よくしのいだと思います。
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