見出し画像

【試合考察】ファジアーノ岡山vs清水エスパルス J1第4節

どうも、ゼロファジです。

死闘だったね

今季最初の3連戦。その最後の相手は清水エスパルス。ゲームは最後までヘトヘトになりながら戦う死闘となりました。J2では2度敗れた相手だけに、なんとか勝ちたいところでした。結果的には勝利することはできませんでしたが、監督をはじめ選手も「成長」を感じる実りあるドローとなりました。

清水さんなんか好き

これまでそんなにたくさん対戦してきたわけではないですが、清水エスパルスや清水サポさんに対しては個人的にかなり好印象を持っています。J2での対戦があるせいか、他のクラブよりも岡山を好意的にとらえてくれている方をお見かけることも多いですし、試合後のSNS等の反応を見てもほっこりすることが多いなと思います。なんだろう。リスペクトを感じるというか。

一方、岡山サイドからも清水さんを好意的に見る背景もあって、乾選手が岡山で練習参加していた縁もあるし、岡山の元GMだった原さんのころから、清水ゆかりの選手を獲得する傾向もある。ミッチェル・デュークや、石毛秀樹とかね。竹内、神谷、藤田、立田など元清水の選手が現チームの屋台骨を支えてくれてますし、古くは石原崇兆を育ててくれたのも清水さんでした。

個人的には2016年にはじめて遠距離アウェイに行ったのが清水だったんですよ。あの時見た試合日の光景。祝日に日の丸を掲げるように、試合日に民家に掲げられたエスパルスのクラブフラッグを見て衝撃を受けたことをいまでも覚えています。これは相当にすごいことだな、と。サッカーがこのように受容されている土地柄に深いリスペクトの念を抱きました。

ライバルとして肩を並べる、というところにはまだもう少し実績と歴史を積み上げる必要はあるのかなと思いますが、勝負は譲れない。今後もいい試合を続けていきたい相手だなと改めて思った試合でした。

スタメン


4231か?と思われた清水ですが、ここは3421を継続してきました。メンバーはほぼ予想通り。もしかしたら、広島・岡山の2試合は3枚で行こうというプランがあったのかもなと思ったり。

岡山は前節のメンバーをキープしつつ、左CB鈴木喜丈がスタメン復帰。そしてなんといっても松本昌也がいきなりスタメン出場。これはちょっと驚きましたが非常に賢く・経験のある選手なので、移籍してすぐですがゲームに入れて問題ないという判断でしょう。ルカオ・木村がベンチスタートということで、後半の味変モードにも期待したいところでした。

試合の流れ

前半

開始早々から山原が内側にポジションを取るのが目立つ。左CBの高木はSBのような位置取りをして、左WBの山原はボランチやシャドーなど1つ内側でプレーするので、岡山の選手はとまどっていた。イメージ的にはほぼ4バックのような形なので、清水はやりやすそう。

また、連携にスムーズさが欠けていたガンバと違って清水は練度が高くショートパスが滑らかに通る。配置のギャップでとまどう上に、連携・技術が高いのでプレッシャーをかけきれず押し込まれる。

7分。右サイドを押しこんで宇野-乾のスルーパスで、宇野をボックス内に送るシーン。左は山原がシャドー化することもあるせいか、この試合では乾が右サイドで関与することが多い。

9分。CKをはね返した後だったので、選手の配置がお互い整わない状態だったが、ここの宇野のロングフィードは狙い・ボールともすばらしい。岡山の左サイドの奥を中原を使って狙いたいという意図を続けて感じる。

10分。ずっと我慢の時間だったが、中盤のセカンド勝負に勝って、裏に抜ける岩渕に立田からの浮き球のスルーパス。いいですね。岡山の特徴がでている。しんどいときこそ「自分たちがやりたいこと」を出せるかどうかが大事。

16分。はじめていい形で攻撃ができた。清水のミスパスを拾って、ワンタッチで田上がタテパス。一美がおさめ、江坂からラストパス。奪って早く前にが形になっている。

18分のGK、つづく19分もバックパスさせてGK沖からのロングフィード。さらには吉田のロングフィード。前からハメていき、ボールを捨てさせ回収するいい守備。マークの受け渡しも問題なく、適応してきたことをうかがわせる。ここから岡山の逆襲。清水コートで押し込み始める。

27分。岡山ペースが続く。右サイドから中央へ江坂が運んで、裏に消えていた藤田息吹へスルーパス。江坂からはパスが出るが、どこにどういう風にという江坂のビジョンにマッチしはじめたことを感じるシーン。

28分。清水はCKのときゾーンで守る。一本前のCKもそうだが、岡山の狙いは徹底してニア。そこで合わせる、そらせる。

30分。中央を固める清水を崩していくシーン。一美が体を張って住吉を背負いつつキープ。そして江坂に落とす、ボックスめがけて走る藤田に渡す江坂。住吉がつり出されて中央には蓮川しかいない。藤田が後方にそらして江坂の左足のミドル。すばらしい崩しだ!!江坂が拍手する、サムズアップするシーンが増えてるよ。

36分。清水を後方からの組み立てだが、ここで高木に柳が寄せられている。「高木はSBみたいなもんだ」という整理がついていることをうかがわせる。

42分。右サイド柳のパスをインターセプトされ、山原からスルーパス。北川が抜け出しそうになるがブローダーセンが飛び出してクリア。このはね返したボールを拾って、江坂のスルーパスに岩渕が抜け出しGK1対1のビッグチャンス。しかし、左足のシュートは力なくGK沖がセーブ。惜しかった。ファーストタッチが思うようにいかなかったかなあ・・

実はこれ清水の方はオフサイドだったんだけど、北川のオフサイドをすぐに認められていたら岡山の決定機はなかった。地味だけど大事なこと。

後半

清水は吉田豊に代えて北爪を投入。後半も開始からしばらくは岡山ペース。守備に混乱は見られず。

53分。ロングボールをスペースにという岡山の攻め。一美が絡むも、清水が回収。しかし、これで岡山はハイプレスに移行し、ハメてミスパスを回収する。いい守備だ。

60分。CKをはね返した後の流れ。バイタルエリアから高木-住吉-北川とつなぐが、ここもブローダーセンが壁になる!が、しかし、その後ボックス内で田上が住吉を倒したとして清水にPKを与えてしまう。

63分。田上のファウルが認められ清水のPK。このタイミングで岡山はルカオ・木村を同時投入。この交代はPKを受けてのものではなく、やや清水に押し返されつつあった流れを引き戻そうということかと。

65分。北川のPKはブローダーセンがストップ!

66分。清水の大きなロングボールがDFラインの背後に落ち、田上とブローダーセンがややお見合いのようになり北川にシュートを打たれる。ちょっと嫌な感じ。

67分。CKをはね返したものの、右サイドで高木がボールを追い、倒れ込みながらクロスを上げる。岡山の守備はクロスが上がってくることを全く想定しておらず、完全ドフリーで住吉にヘッドを叩きこまれて失点。もったいない。

70分。神谷がスペースにロングボールを蹴り込み、ルカオ・松本でゴネてキープ。そこに江坂が左足のクロス。これが飛び込んできた木村太哉に。惜しい!しかし、動き出しがマッチしている。

72分。竹内、加藤を投入し神谷、柳貴博を下げる。松本昌也を右に持っていき、加藤が左に。松本昌也は1試合目からユーティリティ性でチームに貢献。竹内、加藤の交代策はかなりハマっており、中盤での攻守に竹内が貢献。加藤はクロスでチャンスメイク。

74分。松本がとったCK。キッカーは加藤聖。ボールはやはりニアへ。江坂がそらして、木村太哉が仕留めて同点!前半から狙い続けていた形が実を結ぶ。

76分。ドウグラス・タンキ投入。江坂とは群馬時代に一緒にやっていたらしい。前線に高さと強さが加わるので注意したい。

77分。清水のお株を奪うような左サイドアタック。スローインを住吉を背負ったルカオにあてて再度スローインをゲット。江坂に投げて落として、加藤のクロス。飛び込んだのは松本昌也。GK沖のビッグセーブ。決定機。

79分。VARもあったしATは長くなりそう。西原、嶋本イン。

90分。江坂に代えて太田龍之介。J1デビュー。岡山のU18出身の選手がJ1で試合に出るのはたぶんこれが初めて。

96分。乾に代えて小塚。

98分。右サイドのクロスを西原がおさめ、切り返してシュートもブローダーセンがブロック。何点止めるん??

AT10分、清水はなんとかミドル、クロスでゴールにせまったが岡山の守備の粘り強さが勝った。

感想・注目ポイント

・ブローダーセンが神すぎた

いやあ、流石というほかないでしょう。PKストップをはじめ、ゴールを飛び出してのクリア、左足一本でのセーブなど、最後の壁として立ちはだかっていました。間違いなくこの試合のMVPだと思います。

・一美がめっちゃいい

この試合の一美はとてもよかったなと。守備はもちろんですが、ボールを収める、落とすとハイレベルにこなしていてかなり預けどころとして機能していました。清水のCBも強いですがここまで一美ができるなら、今後一美が1トップのファーストチョイスになっていきそうな気がします。

・江坂と他の選手のビジョンがマッチしてきている

この試合では江坂からパスを引き出すというシーンがたくさん見られたなと。開幕戦や2節なんかだと、江坂には見えているプレービジョンが他の選手とマッチしてなかったんですけど、この試合ではそこが噛み合ってきているシーンが多かった。いよいよ、江坂を使い、江坂に使われ、崩していく形が本格化しそうな気がします。楽しみだ!

・疲れと判断力・集中力の低下

全体的に清水の決定機もそんなに多くなく、やはり岡山の守備はJ1でもやれそうだという手ごたえを強めるゲームでした。しかし、失点シーンは前のシーンも含めちょっと判断・集中にエラーが起きていた印象が否めない。このあたりは連戦の疲れもあったのかもしれないですね。2つミスが立て続くとJ1は見逃してくれない。そういう教訓となりそうな失点でした。

・いきなり松本昌也がチームを助ける

加入後いきなりスタメンで出場した松本昌也はすばらしかったですね。もちろん日が浅いのでポジション取りとかコンビネーションとか手探りだったでしょうが、チームのやり方を理解してこんなにできるんだからやはりかしこい選手なんだなと。彼がいると選手起用の柔軟性が上がると思うのでほんとに頼もしい味方が増えたと思います。

・清水にこのゲームができる岡山は「やれる」

ドローとはなりましたが、試合を見直していてこの試合が一番「J1でもやれるのかも?」と思わせてくれるゲームでした。清水は序盤戦のボスキャラと思っていましたが、しっかり耐えて自分たちのペースに持ち込む。決定機を作らせずロースコアゲームに持ち込む。セットプレーで仕留める。後半の味変で前線の出力を上げる。現状持てる武器をいかんなく使って戦えていました。でも、まだ強くなれるよね?もっと強い木山ファジが見たい。そう思わせてくれる3連戦でした。

【観戦メモ】想定外なときどうする?

こちらのマガジンで解説していることをベースに、試合の中からシーンを抜き出して、サッカー観るのがもっとうまくなる知識を記憶していこう!という【観戦メモ】のコーナー。

この試合の前半、清水のパス回しとポジションの変化にとまどって岡山はなかなかボールが奪えない入りとなりました。もし、あのまま押し込まれて失点してしまうと清水が優位にゲームを進めることになってしまいます。

ただでさえ一番下から挑戦しよう!という立場なのに、リードされて優位に進められるとなおのことゲームを制するのが難しくなる。したがって、岡山はまず先制させないことが非常に大事だなと思います。

相手が想定外の出方をしてくると、チームが「やりたい攻撃」「やりたい守備」が思うようにできず「あれ?あれ?なんか変だぞ?」となり、そのうち「ヤバイ、ヤバいよこれ!」となっていきます。そうした心理的動揺が余裕をなくし、さらに窮屈なプレーにつながってしまうのがメンタルスポーツであるサッカーの難しさでもあるなと。

こういう試合を見るときは、とにかくチームが失点せず相手の出方を理解してこちらの対応を定められるか?を見ていくのがおススメです。

最初は誰が誰を見るのか?やや混乱気味でしたが、次第に「これは4バックみたいなもんだな」と理解してからは守備がハマりはじめ、岡山のペースに持ってくることができました。「やりたい守備」ができると自然とチームの士気が上がるんですよね。

しかし、それを可能にするのは結構難しい。去年の開幕からずっとそうですが、2024、2025の木山ファジはこうした難しい局面を我慢する力に大変優れています。

そういえば開幕戦の京都戦もそうでしたよね?配置が想定外で押し込まれましたが、失点せず粘ってペースを握り返した。あれはまぐれではない。地力なんだということを証明した清水戦でもあったように思います。


私ゼロファジが作ったサッカー観戦術入門書を公開しています。全17話、冒頭3話まで無料で読めます。もしよかったらチェックしてみてください!(これまでのところ販売総数160部をこえました!)


いいなと思ったら応援しよう!