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ルールを徹底するには…
「あそこには物を置かないルールですよ。今期の目標に整理整頓と決めたからにはきちんとやりましょう。ルールを決めてもその通り行動しないと意味がありません。5時の時点で残っているものは全部廃棄します。」
また始まった……。時折、坂口課長のスイッチが入ると、このように朝礼で言い出してくる。
てか、なんであそこのスペースに物置いたらいけないんだろう…と。武下は疑問だった。
そこは、オフィスの一角に机も椅子もないただの空いたスペースなのだが、個人の引き出しに入らないちょっと大きなものや、商品を発送するために段ボールを一時的に置いておく人が多い。
かくいう武下も、仕事帰りにジムに行く日は、荷物が多いのでそのスペースに置かせてもらっている。今日もまさにジムに行く日だったので、めんどくさい日と重なってしまった。
どうせ退社時には持って帰るから、放っておいてもいいと思う反面、そそくさと片づけをする人たちもいるので、どうしようか迷った挙句、荷物を回収することにした。
「また始まったね」と先にダンボール箱を持って帰ろうとしていた和田先輩に声をかけられた。
「ほんとですよ。こんなにスペースがあるのに意味わかんないですよ」
「なんか産業医に整理整頓ができていないと指摘されたらしいよ」
「そうなんですね……。まぁ、整理整頓ってのはわからなくはないですけど、ただ空いたスペースはもったいないですけどね」
「そうよね。災害時に逃げやすいように、非常口とか通路に物を置かないのはわかるけど、ここは別においてもいいよね〜」
「そうですよ。ここに荷物おけないのは不便です」
「ただ物を置かないってするだけじゃなく、棚をおいたり、スペースを区切ったりして、物をおく場所としてきっちり決めたらいいのにね」
「それ、課長に言ってくださいよ〜」
「えー。それはちょっと……」 と、和田先輩は苦笑いしながら答えた。
「えっ、これ?」
武下が指差したのは、意外にも高級そうなブリーフケースだった。皮革の艶やかな質感があり、どう見ても坂口課長のもののようだ。
和田先輩がクスリと笑いながら、「そうそう、これ課長のだよ。昨日の夜、急いで帰って、忘れてったみたい。まさか自分のルールで自分が捕まるとはね」と話す。
「それ、課長に見せたらどうなるんですかね?」武下が半分冗談で言うと、和田先輩は少し考える様子を見せた。
「うーん、でもこれを課長に突きつけたら、結構恥をかかせることになるかもしれないね。課長だって人間だし、たまにはミスもする。ただ、これを機に、もう少し現実的なルールにしてもらう良い機会かもしれない」と和田先輩は真剣な表情になった。
「そうですね、課長もこの件で少しは柔軟に考えてくれるかもしれません。でも、直接言うのは難しいですよね。どうせなら、もう少し皆が話しやすい環境を作って、意見が言いやすいようにした方がいいですよね」と武下が提案する。
和田先輩が頷き、「そうだね、課長に直接言うのは難しいかもしれないけど、産業医や人事部を通じて、もっと現実的な整理整頓の提案をしてみるのもいいかもしれない。もっとも、今回のケースを踏まえて、課長自身も自分のルールについて再考する良いきっかけになるかもしれないし」と話す。
二人はそう決め、とりあえずは坂口課長にブリーフケースを返し、場合によってはこの事例を上手く使って、オフィスのルール改善につなげようと考えた。そして何よりも、チーム全体でのコミュニケーションの重要性を改めて認識する一件となった。
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いかがでしたでしょうか?こういうことってよくありますよね。
他人に指摘しておきながら、自分ができていないことって往々にしてあります。
また始まった……
このセリフからも、坂口課長はたびたびこのようなことを繰り返していることが推測されます。
何かのきっかけでスイッチが入り、指摘が始まる。今回は産業医からの指摘かきっかけでしたが、自分ができていないことが原因だったりもします。
物をおいてはいけないと決めたにも関わらず、慌てている時や他のことに意識が向いている時は、つい置いてしまうことがあるかもしれません。
そして後になって、
「あ、しまった。つい荷物を置いてしまった……」と思って片付け始める。
そうすると、他の人が置いている荷物も気になって、その人たちに片付けるように指摘をする。
こういうことって、案外少なくないのではないでしょうか?
そんなとき、坂口課長のように「ルールだからきっちりと片づけてください。」と言っても、言われた人たちの不満が溜まります。
"自分もよく荷物置いているのに"
といった声が聞こえてきそうです。
その指摘に対して納得できないと、人はなかなか行動が変わりません。指摘するからには、まずは自分から率先して行動しなければいけません。
自ら行動で示して、言葉でも伝えていく。
これがリーダーの役割でもあります。
ルールを決めれば勝手に人が動くわけではありません。決めたルール通りに行動してもらうには、”そう行動したい”と思わせることが必要不可欠です。
そのためにも、まずは相手の納得を得ることが大事なのです。
とはいえ、いつも完璧に行動ができるとも限りません。たまには自分もできていないこともあると思います。
そんな時は、自分がルールを守れていなかった至らなさを認めることが大切です。素直に謝ってから、相手の不満を解消してからでないと、聞く耳を持ってもらえません。
自分のミスを認めて素直に謝ること
簡単なことのように見えてとても難しいです。でもよいチームワークを築いていくにはとても大切なことなので、ぜひ頑張ってください。
このストーリーを思いついたきっかけ
※ここからはプライベートな内容なのでメンバーシップ限定(参加型プラン)の記事になります
働く人の心が楽になるための活動に使わせていただきます。