連載ユーザビリティ講座第1回 選びにくいメニュー
上図は、note会員登録フローで提示される「関心のあるジャンル」選択画面です。今回はこの画面をレビューします。
問題
「関心のあるジャンル」として提示されている選択肢の意味、互いの区別が、わかりませんでした:
* 「カルチャー」と「エンタメ」の区別
* 「カルチャー」と「ライフスタイル」の区別
* 「カルチャー」と「モノ」の区別
利用のコンテキスト
スティーブ・ジョブス&ウォズニアック伝記漫画『スティーブズ #01|投げ銭版』に投げ銭するために会員登録しようとしました。
思考
* このマンガは面白いし、続きに期待しているので、投げ銭したいから、会員登録しよう。
* こんなマンガなら、ほかにも読みたい。ここで選択したジャンルのコンテンツは、今後自動的に推薦されてくるだろうと期待できる。だから「関心のあるジャンル」を選択しておきたい。
* これらの選択肢が「ジャンル」と呼ばれるからには、相互に排他的な分類になっているということだろう。しかし、そうだとすると、「カルチャー」「エンタメ」「ライフスタイル」「モノ」の区別がわかりにくい。
※説明のために思考を言葉にしましたが、こういうメタ認知的な自己言及は、当時の実際の思考とは異なる可能性があります。鵜呑みにすることはできません。
実際の行動
「本、カルチャー、エンタメ、ライフスタイル」を選択し、しばらく様子を見ることにしました。どんなフィードになるかを見てから変更してもいいだろうと考えました。
※しかし、実際には、会員登録後に「関心のあるジャンル」を変更することはできませんでした。 また、上記の「選択したジャンル」を確認する方法はなかったので、記憶に頼って列挙しました。したがって、間違っているかもしれません。
※私と違って多くのユーザーはこういう場合に「よくわからないから、選択しない」という行動をとりそうです。私は裏側の仕組みを類推して多めに選択しましたが、ふつうのユーザーはそういう行動ではなく「余計なことはしないでおこう」という保守的・防衛的な行動をとると思われます。
改善の方針
a. 相互に排他的な分類方式ならば、それが分かるようなラベリングや説明文によって改善することが可能だと思われます。
b. もし相互に排他的な分類ではないのであれば、「タグ」のようなラベリングによってそのことを明示したほうがよいかもしれません。「タグ」であれば、より気軽に、重複を考慮せずに選択することもできます。タグは「分類の重複」を前提としているので。
c. ラベリングだけの問題として考えず、もっとスコープを広げて改善することもできます。例えば、ラベルごとに紐付いている作品を並べることで、そのラベルがどのような作品群を象徴しているのかというイメージを与えることができます。
備考
この画面の先で気になった点:
* 「関心のあるジャンル」をあとから変更する方法が見当たりませんでした。
* 「関心のあるジャンル」の設定がどのように利用されているのかわかりませんでした。
* 投稿する作品に「ジャンル」を設定することはできないようでした。
このサイトでの「ジャンル」という概念は、いったいどういうものなのか。なかなか理解できませんでした。問題の核心はここにありそうです。「ジャンル」という概念を明確に定義し、それにもとづいて適切に設計にすることで、もっと分かりやすくなると思われます。
あとがき
情報アーキテクチャに関する専門的なコンテンツを試しに投稿してみました。反響次第で継続しますので、もし気に入ったら、何らかのリアクションをください。