「やればやった分だけ給料を出す」と聞いて思う話
<おじさんDX Vol 84>
本日は、タイトルのように「やれば、やった分だけ給料を出す」という話です。冒頭から申し上げますが、個人的な見解では、いまだにこんな事を言ってしまう会社が、ある事に複雑な気分です。
どういう意図の発言か発言者から聞いておりませんが、そもそも会社員での給与は「就業規則」で決まっているものではないでしょうか?
そして賃金規程の変更は、届出の義務があります。(労働基準法第89条)
労働基準法第89条より抜粋
(労働基準法第89条より抜粋)
第89条(作成及び届出の義務)
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。
次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項賃金(臨時の賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
退職に関する事項(3の2 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項)
臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び裁定賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
② 使用者は、必要がある場合においては、賃金(退職手当を除く。)、退職手当、安全及び衛生又は災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項については、それぞれ別に規則を定めることができる。
給与が増えるのは、働く側として歓迎です。それでも「やれば、やった分だけ給料を出す」と言うのは、漠然としています。発言者としては、人参をぶら下げているつもりなのでしょう。
口約束は、リスクが高い
こうしたケースは、私の在籍していた職場で多く見られた行為です。発言者が、従業員のモチベーションを向上させたい気持ちこそ理解できますが、「口約束」であるケースが多いです。搾取企業(ブラック企業)で常套手段として使われる場当たり的な対応のテクニックの一種でもあるのです。
口約束でも約束は約束です。もっと硬い表現をすれば「契約」です。こうした発言をする人は、経営者かそれなりに役職が高い立場にある人物です。もし、そうした立場にある人が、口約束を守らなければ、どうなるのでしょうか。そして、本当にその口約束は、履行されるのかは微妙です。
出来ない約束はしないことだな(相田みつお)
本来ならば、従業員のやる気を鼓舞しようとした発言が、従業員のやる気を失わせる元になってしまう事も考えられるのです。
数値と具体化の必要性
「やればやった分だけ給料を出す」と発言者は言っていますが、その具体的な数値は示されていません。「どの位やれば、どの位給料が支給」されるのかは、言われた側も良くわからないのです。もちろん言った側も分っていない(決定していない)ケースが多いです。
例
どの位やれば→ 前年比110%達成時
どの位支給 → 10,000円アップ
どの期間で → 来月度から
危険なのは、その発言を聞いた従業員等が、その言葉を信じて自己解釈してしまう事です。
例えば「前年比120%を達成したら、給与も120%になる」と勝手に解釈し、期待値に達しなければ、大きな不満になるのです。場合によっては「嘘をつかれた」「騙された」となるのです。無用なすれ違いや労使トラブルを防ぐためには、きちんと支給条件等を数値で示す必要があります。
賃金関連は、書面にする
口約束は、リスクが高く、お互いの記憶違いや解釈の仕方が異なる場合もあります。約束が、守られなかった場合は勿論ですが、認識違いも信用を失う事になります。
「言った、言わなかったの」水掛け論や「言っていない」という事もあります。こうした事を防止するには「書面」で、きちんと残しておくことです。
「やれば、やった分だけ給料を出す」と言いながら、端から支給しないつもりは論外として、本当に従業員のやる気を鼓舞したいのなら、漠然とした表現や対応は、労使トラブルの元です。お金の事ですから、労使双方に気持ちの良い職場にしたいものです。
そんな おじさんの話でした。