【第六章】 想い続けた夢への挑戦
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【前編】
2023年12月19日におこなわれたメジャーリーグサッカー(MLS)ドラフト。塚田は日本へ帰省しており、家族とテレビの放送でその発表を見ていた。塚田の名前が呼ばれたのは第一巡の25番目、フロリダ州に本拠地を置くオーランド・シティSCからの指名だった。「名前を呼ばれた瞬間は耳を疑いましたが、本当に嬉しかったです。間違いなく人生で一番嬉しかった瞬間でした。」その後の展開は慌ただしく1月にはプレシーズン、3月にはシーズンが開幕し、塚田のプロ生活がスタートした。
プレシーズンで対戦した元ブラジル代表ダヴィド・ルイス選手が所属するブラジルの強豪クラブCRフラメンゴとの試合、塚田の出場はなかったもののスタジアムの迫力に圧倒されたのを強く覚えているという。「自分たちのホームスタジアムでの試合だったんですけど、会場に入ると360度フラメンゴサポーターに囲まれていて、ブラジル人のサッカーに対する熱狂が伝わってきました。今までは見る側だったのが遂に見られる側になったんだとリアルに感じて、鳥肌が立った瞬間でした。」プロの世界へ飛び込んだことを実感した塚田。チームメイトも各国の代表経験者や代表レベルの選手たち、そんなオーランド・シティSCでプレーを始めてから感じた最初の印象を聞くと思わぬ答えが飛び出した。「単純にインテンシティの高さやフィジカル面の強さは感じたんですけど、意外とレベルに圧倒されたとかはなくて、自分のドリブルは高いレベルでも間違いなく通用するなと思いました。」塚田は持ち味であるドリブルがプロの中でも劣ることなく武器になると確信した。また、他の選手の印象についてはこう答える。「これから自分がプロの世界で馴染んで、自信を持ってプレーをして成長を続ければ、間違いなく超えていけるなというのは感じました。」正直な感想で今後の成長に意欲を燃やす塚田だが、チームのベテラン選手からの刺激は多い。「長年プレー出来ている選手は身体のことをすごく考えている印象です。例えば練習開始の1時間前には来てアップを始めていたり食事も色々と気遣っていたりとか…意外とそういう部分がプロになって一番の刺激かもしれません。」こうして始まったMLSでのプロ生活。チームについては、「オーランド・シティSCの本拠地フロリダは自分がアメリカで生活を始めた最初の地でしたし、偶然ですが代理人も元オーランドの選手で何か運命的なものを感じました」と語る。オーランド・シティSCはドラフトに定評のあるチームで、若手選手の育成にも特化しているという。チームの中でもヨーロッパのチームへの移籍予定の選手がいたりと目標としているレベルに近い環境でのプレーは塚田に日々インスピレーションを与えている。
チーム加入から順調にBチームでの活躍を重ねた塚田。2024年5月16日にはリオネル・メッシ選手が所属するインテル・マイアミCF戦で念願のトップチームデビューを果たした。「当日は出場を予想していなくて、名前を呼ばれてから緊張する間もなくピッチに入りました。でも会場で自分の名前がコールされて大きな歓声を聞いた瞬間はとても嬉しかったですし、やってやろうという気持ちになりました。」残念ながらメッシ選手の出場はなかったものの世界レベルのスーパースターたちとの対戦は果たした。「スアレス選手は動物が獲物を狙うようにずっとゴールを狙っていますし、ブスケツ選手は本当に落ち着いていて相手が来てもびくともしないのが印象的でした。特にディフェンスがすごくて自分にチャンスがきた時もすぐに危険を察知してチャンスを回収されました。」プロの実力と厳しさを体感した塚田。「改めて、自分がこの舞台に立っているのかと思いました。なんか一つやり遂げたなと。」夢の舞台を踏んだ塚田はその感触を踏み締め、静かに野心を抱く。その後も更なる成長へと着実に歩みを進めていくのだった。
【後編】
念願のトップチームデビューを果たした塚田だが、その歩みは止まることはない。今後の目標を聞くと「たくさんボールに関わって、ゴールするというのがもちろん目標ですけど、今はとにかくBチームで結果を残し続けて、早く自信をつけることが一番大事かな。 Bチームでは自信を持ってダイナミックなプレーができるんですけど、トップチームにいくとやっぱりまだ周りに気を使っていたり、ミスをしたらそれを引きずってしまったりっていうのがあるので…自分のドリブルやスタイルをトップチームでも確立することが大切だと思います」と意欲的に答えた。トップチームとBチームのハイブリッドで両チームを行き来しながらプレーする塚田。トップチーム、Bチーム、アカデミーの選手たちが同じ場所で練習し高め合う環境での練習は塚田の刺激になっているが、本番の試合ではまだ自分の力を出しきれていないと感じることも多い。
現在の課題についても明確だ。「監督やコーチにも言われていて自分でも自覚しているのはディフェンスですね。守備は意識を変えればすぐにでも変えることができる部分なんですけど、やろうと思っていても習慣になっていなくて実行するのが0.1秒遅れたり…意識してディフェンスをするというのではなく、身体が勝手に動いているくらいになっていくことが重要だと思います。自分の頭の中で更にサッカーや戦術を理解して、アグレッシブにプレーするのが大事なこと。」ディフェンスが強く求められる現代サッカー。今まで以上に自身の弱点をしっかりと理解し、日々の練習で改善していく姿勢も塚田らしい。今後のサッカー選手としてのプランについては「あと2、3年はアメリカでプレーしたいと思っています。そしたら年齢的にもサッカー選手としてピークにくるので、ヨーロッパに移籍して、20代後半はヨーロッパ一部で活躍できていれば。一番厳しいリーグですけど、最終的にはイングランドのプレミアリーグにいきたいですね。ここまでが目標で、日本代表としてワールドカップに出て優勝するというのが自分の一番の夢です」と具体的に答える。自らの目標へとしっかりプランニングをし、真剣に取り組んでいく彼の志は高い。
現在、経済的な規模も大きく、ワールドカップやオリンピックの開催予定もありサッカー熱が高まりつつあるアメリカ。ヨーロッパからの関心も集まりやすいアメリカでプレーできている事は、塚田の中で大きな意味となっている。アメリカでのサッカー留学によってたくさんのチャンスに恵まれ、自らの人生が良い方向へ変化したと感じることも多い塚田だが、そんな彼に今後留学を考える人へ伝えたいことを聞くと、「まずは自分の環境を変えることが一番大事だと思います。環境を変えると失敗したり壁にぶち当たったりすることも多いですが、10代や20代の大事な時期にそういうことに直面すると人間としての成長ができます。そういった経験がサッカー選手としての成長にも繋がっていくので。自分が今いる環境に慣れたら留学するというのも一つの手段ですし、日本国内でも強いチームにいったりだとか…高いレベルにいけばいくほど質の良い人間に出会えますし、自分を刺激してくれる環境にも出会えるので留学だけではなく環境にこだわるということは本当に大切だと思います」と語る。高校卒業後に飛び込んだアメリカでの生活は、サッカー面だけではなく人としての成長も塚田に与えた。異なる環境や逆境の場面でも懸命にサッカーと向き合い続けてきた塚田にサッカーとは何かと質問すると「自分にとってサッカーは人生です。それしかないと思います。3歳からやってますし、SNSもサッカーばかりで友達からもサッカーのない悠太郎は考えられないと言われるので」と少し照れながらもはっきりと答えた。幼い頃からサッカー一筋でひたむきに人生を捧げてきた塚田は、数々の困難を乗り越え、プロのサッカー選手になるという夢を実現した。常に背中で示し、結果を見せていく彼にあったのは一貫したサッカーへの純粋な想いと強い信念だった。インタビュー中も着々と歩みを進めていく塚田。記事作成の後半にはトップチームとの正式な契約(現地時間2024年8月7日)も結んだ。MLSでの彼の躍進は引き続き、我々を楽しませてくれるだろう。未知数の可能性を秘めた塚田は、これからも更なる進化を目指して夢へとまっすぐに突き進んでいくのだ。
塚田選手の最初の印象は記事にも書いてある通り、シャイで物静かな青年でした。インタビュー当初はまだ大学生でどこかあどけない表情で語っていた彼も記事作成終盤には正式にトップチームの選手になり、大人な顔つきに。試合での複数得点獲得やトップチームでの初出場、契約など短期間での進化は目を見張るものがあり驚かされました。自分の置かれている状況に対応して、芯はそのままに柔軟に変化していく彼の姿は頼もしく、今後に期待せずにはいられません。そんな彼の躍進は素晴らしく、日々努力を続ける姿はライターである私の刺激にもなりました。サッカーに関して全くの初心者な私のトンチンカンな質問や繰り返される同じ質問にも嫌な様子を一切見せず、分かりやすく真摯に答えてくれて本当に感謝しています。素人が見てもすごいと分かるスーパープレーを放つ彼のサッカーから引き続き目が離せません。これからも塚田選手らしい活躍を楽しみにしています。
- 取材/文: 生田 奈々 -
假屋さん(Zero-Zero株式会社代表)には入学前の手続きや大学への売り込みなど最初からたくさんのサポートをしてもらいました。自分では出来ないことだらけだったので感謝しています。渡米後も相談をした時はアメリカ留学というものを一番理解してる假屋さんだからこそのアドバイスをしてもらえて助かりました。アドバイスも『こうしろ!』という感じではなく、色々な可能性や選択肢について話してくれるので、とても分かりやすくタメになりました。自分は使っていませんが就活のサポートもあるみたいで、アドバイザーの方に相談出来たりとサッカー引退後のセカンドキャリアまで応援してくれるのは本当に心強いと思います。Zero-Zeroはどんな選手であっても手厚く、サッカー選手としてだけではなく一人の人間として、将来社会に出た時に活躍できるようなサポートをしてくれると思います。
- 塚田 悠太郎 -
Zero-Zero株式会社
アメリカ大学スポーツ留学
https://www.zero-00-zero.com
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