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【第五章】 数多の試練と向き合った大学生活

“The Road to Major League Soccer”
~ Story of Yutaro Tsukada ~

塚田悠太郎:オーランド・シティSC 所属 🇺🇸

- 取材/文: 生田 奈々 -

目次:Table of Contents


【前編】

米国で一番レベルが高い大学サッカーリーグであるNCAA Division 1(D1)での挑戦を決めた塚田。その舞台となるウェストバージニア大学では数々の困難が彼を待っていた。「あれを乗り越えたのは結構でかいと思います。多分この先何があっても大丈夫。」サッカーだけではなく学問やチームでの人間関係でも壁が多かった大学生活は塚田を人としても大きく成長させた。

ウェストバージニア大学はモーガンタウンという古き良きアメリカを感じさせる自然豊かな環境の中、大学を中心に街が発展したカレッジタウンにある大規模な大学だ。「サッカーをするには最高の環境でした。ジムはとても広くて綺麗でトレーニング器具も充実していましたし、ソーシャルメディアもかっこ良くて気分が上がりました。」地域のプロスポーツチームがないウェストバージニアでは地元の人々の大学スポーツへの応援も熱く、とても雰囲気が良かったという。

そんな中、南米系のチームメイトが中心だった短大と違い、ウェストバージニア大学はヨーロッパ系の選手が多くコミュニケーションに苦戦した。「気さくな南米人と比べて、ヨーロッパの人たちは少し壁があって深く友達になるには時間がかかるように感じました。」多様なチームメイトの国民性に対応していくのもスポーツ留学ならではの経験であった。

ウェストバージニア大学での1年目(大学3年生)は思うような結果が出ず、チームメイトとの関係構築にも苦労した塚田。「短大から変わらず、サッカーが上手ければ友達もできるだろうという考えで過ごしていたんですけどサッカーでも結果が出なくて、こいつ使えないなと思われているのは感じましたし、自分から積極的に交流していくタイプでもなかったので馴染んでいくのが大変でした。試合中もパスが回ってこなかったり、あまり信頼を得られていないなというのは実際に感じていました。ウェストバージニア大学での1年目はアメリカ生活4年間で一番苦しかったです。」新しい選手として活躍を期待されて加入したものの結果が伴わず、周りからの評価の低さも感じた。そんな状況は塚田から自信を奪っていく。

大学での1年目は学業での壁にも直面する。「四大での勉強は短大と比べてより専門的になるので明らかに難しかったです。日常生活では英語に困ることはなかったんですけど、授業では普段聞いたことがないような専門的な用語も増えて、家での復習が必要でした。また、短大では課題で補えるようなシステムになっていたんですけど四大はテストの比重が大きくて勉強する時間が大幅に増えたのが大変でした。」チームでも大学1年目の選手や成績不振者にはスタディホールと呼ばれる自習時間が週に5時間から10時間ほど設けられ、アカデミックアドバイザーと共に勉強することが義務付けられていた。アスリート専用のスタディホールは管理が徹底され、集中して勉強することができる環境が与えられる。アメリカの学生アスリートは、学業もおろそかにしないよう学校からの勉学サポートも受けながら生活することで、成績を保ちながらスポーツに励むことができるのだ。「1年目はサッカーや人間関係に加えて、悩む暇がないくらい勉強していたので本当にきつかったです。」

大学1年目は数々の困難にぶつかった塚田。それらを乗り越え、2年目では彼の努力が実を結び始める。ひたむきなサッカーへの想いと共に、自分を信じてまっすぐと進む塚田に希望の光が差し込んでいくのだった。

【後編】

ウェストバージニア大学での1年目(大学3年生)のシーズン後半、不振が続く塚田にチャンスが訪れる。前年度、全米ベスト8の成績を残したウェストバージニア大学サッカー部。塚田加入時は前年度同様のフォーメーションを継続していたが、塚田は上手く馴染めず、ベンチで過ごす時間が多かった。しかしチームも負けが続き、遂にフォーメーションの変更が採用されたのだ。そこから塚田は自分らしいプレーを発揮することができ、スタメンでの起用も増えていく。「フォーメーションを変えた初戦が勝負だとわかっていたので、その試合でアシストをして全体的に良いプレーが出来ました。そこからだんだん信用を取り戻していった感じですね。ギリギリで自分の価値を証明出来ました。」サッカー留学はシビアな面も多く、結果が出なければ大学からの除籍の可能性もあった。全額奨学金で留学していた塚田は不調が続いた際、その後の自身のキャリアも考え、他の大学への編入についてZero-Zero代表の假屋氏に相談をしたことも。その際、假屋氏はウェストバージニア大学に残る場合と編入する場合の具体的なメリットとデメリットを伝えた上で、決断は塚田に委ねた。「假屋さんからの助言もあって、大学に残ることにしました。アメリカ留学を理解している假屋さんだからこそのアドバイスがとても心強かったです。」

こうして一つ一つの壁を自らの力で打破していった塚田。「今思うとそういう経験をして良かったと思います。そこを乗り切ったことによって、考え方が結構変わった感じがするので。人間的に成長出来たかなと。」ギリギリのタイミングで結果を残せた塚田はそこが転機となり、着々と成長を遂げていく。チームメイトからも実力が認められ信頼も回復、チームの主力選手となった。「自分ともう一人フォワードの選手がいたんですけど、チームの中では、そいつらにボールを預けていれば何かやってくれるだろうという感じの中心的な存在になれていたと思います」と語る。

学業や人間関係の面でも多くの苦難を乗り越えた塚田。「今、自分にとってその経験は大きな価値になっています。たくさん失敗できる環境に自分の身を置けたのは、ウェストバージニア大学に行って良かった理由の一つですね。あえて孤独な環境に2年間身を置けたので。サッカーだけでの失敗だとサッカー選手としての成長しかないと思うんですけど、それ以外の人間的な部分での成長もできました。それは最後の最後にサッカー選手のキャリアとしても出てくると思うので、色々な経験ができて良かったです。」サッカー以外の困難も乗り越え、人間力も上げた塚田は当時をそう振り返った。

また、大学での監督やコーチとの出会いも塚田のサッカー留学を充実させた。ウェストバージニア大学出身の監督と4人のコーチ陣は全員が元プロサッカー選手で、常に塚田に将来プロになることを見越したアドバイスを与えた。加えて、その優れた戦術眼で本人では意識の届かない細かな部分の指導もあり、塚田は自身のプレーを客観視する機会にもなったと話す。「自分がウェストバージニア大学で成功できた一番の理由は監督とコーチだと思っています。そして彼らのサポートのおかげでプロになってからも順調に過ごせていると。また、コーチが『毎練習、一番になれ』と指導していたのがとても心に残っています。どんな練習でも質にこだわって、毎回自分が一番だと感じるような練習をしろと指導していて、今でもサッカーでなまけてしまいそうな時はそのコーチの言葉と顔を思い浮かべるようにしています。」アメリカでの貴重な出会いと学びは塚田の経験値を上げ、将来への糧となった。

渡米を決めた時から意識していたMLSだが、ウェストバージニア大学での躍進で、その実現は具体性を帯びていく。2023年11月に行われたジョージア州立大学との試合で2ゴール2アシストのプレーを果たした塚田は、その試合がターニングポイントとなり複数のMLSのチームから興味の連絡を受けるように。最終的にウェストバージニア大学での2年目(大学4年生)は全24試合に出場し12ゴール9アシスト、チームを大学史上初の全米ベスト4へと導く見事な活躍ぶりで幕を閉じる。その成績がアメリカ留学での目標であったMLSへの道を決定的なものとするのだった。ウェストバージニア大学での目覚ましい活躍を経た塚田は、未来へ向けて大きな一歩を踏み出していく。念願のMLSの扉はすぐそこまで来ているのであった。


塚田選手の最初の印象は記事にも書いてある通り、シャイで物静かな青年でした。インタビュー当初はまだ大学生でどこかあどけない表情で語っていた彼も記事作成終盤には正式にトップチームの選手になり、大人な顔つきに。試合での複数得点獲得やトップチームでの初出場、契約など短期間での進化は目を見張るものがあり驚かされました。自分の置かれている状況に対応して、芯はそのままに柔軟に変化していく彼の姿は頼もしく、今後に期待せずにはいられません。そんな彼の躍進は素晴らしく、日々努力を続ける姿はライターである私の刺激にもなりました。サッカーに関して全くの初心者な私のトンチンカンな質問や繰り返される同じ質問にも嫌な様子を一切見せず、分かりやすく真摯に答えてくれて本当に感謝しています。素人が見てもすごいと分かるスーパープレーを放つ彼のサッカーから引き続き目が離せません。これからも塚田選手らしい活躍を楽しみにしています。 

- 取材/文: 生田 奈々 -


假屋さん(Zero-Zero株式会社代表)には入学前の手続きや大学への売り込みなど最初からたくさんのサポートをしてもらいました。自分では出来ないことだらけだったので感謝しています。渡米後も相談をした時はアメリカ留学というものを一番理解してる假屋さんだからこそのアドバイスをしてもらえて助かりました。アドバイスも『こうしろ!』という感じではなく、色々な可能性や選択肢について話してくれるので、とても分かりやすくタメになりました。自分は使っていませんが就活のサポートもあるみたいで、アドバイザーの方に相談出来たりとサッカー引退後のセカンドキャリアまで応援してくれるのは本当に心強いと思います。Zero-Zeroはどんな選手であっても手厚く、サッカー選手としてだけではなく一人の人間として、将来社会に出た時に活躍できるようなサポートをしてくれると思います。

- 塚田 悠太郎 -

Zero-Zero株式会社
アメリカ大学スポーツ留学
https://www.zero-00-zero.com

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