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誤解の多い「関係性コーチング」を、パーソナル・コーチングとの対比で解説
私は、「関係性のコーチング」を一つの仕事としてやっている。
分かりやすさ重視で、「関係性のコーチング」と呼んでいるが、その技術の正式名称は、Organization & Relationship System Coaching(通称: ORSC、もしくはシステム・コーチング)であり、私はその資格者ORSCC(Organization & Relationship System Certified Coach)である。
国際コーチ連盟に認定されているコーチング手法である。
この「関係性コーチング」というもの、とても誤解されやすい。かといって、言葉で説明してもなかなか伝わらない。かといって「なんか面白そう」というだけで、飛びつく人はむしろ少数である。
大概は、その実態が何なのかを説明しないと、体験さえもしてくれない。そして「今度こそは!」と思って説明すると、ドツボにハマる。(だからガチの営業活動の時は、クライアントのニーズがそこにあれば、全体提案の中にこっそりと忍び込ませ、あまり説明せずに導入したりする…笑)
過去、何度経営者に説明を試みて、顔に「????」が見えて傷ついてきたことか…笑
10年間、関係性コーチングのわかりやすい解説を試行錯誤してきた結果、現段階で最もわかりやすい説明の仕方を、ここにまとめてみた。
パーソナル・コーチングが行っていること
関係性のコーチングとは、物凄く分かりづらい概念なので、「パーソナル・コーチング」を例にとり、それとの対比で捉えると、イメージがつきやすいのではないかと思っている。
なので、まずは「パーソナル・コーチング」が何をやっているのかをイメージしてもらいたい。
朝起きた時、「あなた」の中に、「起きなきゃ!」と思っている自分と、「もっと寝たい!サボっちまえ!」と思っている自分がいたりしないだろうか?
これは、どちらも「あなたの声」である。リトル自分。天使な自分。悪魔な自分。呼び方はなんでもいい。便宜上、「天使な自分」と「悪魔な自分」と呼ぶ。
(会社員時代の僕は、8割型「悪魔な自分」に忠実だったが、)普段、我々は「天使な自分」の声を聞こうとするだろう。遅刻したり、無断欠席したりすることは、査定にも響くし、何よりも倫理的に自分を許せないからだ。
そして、仕事の忙しさに追い込まれ、身体が限界に来ているにも関わらず、ずっと「天使な自分」の声を聞き続けたとする。
身体は、どうなるか?
身体を壊してしまうことがあるだろう。
では、「悪魔の声」は本当に悪なんだろうか?いいや、「無理すんな!身体が悲鳴を上げているぞ!休んだ方がいいぞ!」と叫んでくれているイイ奴だ。
どちらも「あなた」にとって、大事な声なんだ。
どちらか一方だけ聴き続けていると、いつか「あなた」の何かが破綻する。
だから、あなた自身が持続的に活躍していくためには、両方の声が大事。
両方の声があることをちゃんと受け止めて、受け入れることで、「朝、起きる!」のか、「サボる!」のかという二択ではなく、「今週末の予定をキャンセルして、体を労ろう」とか「今日は、残業せずに早く帰って休もう」とか「今日は、新しい仕事の依頼は丁寧に断ろう」というより創造的な選択肢が生まれてくる。
とてもシンプルな話なので、きっとこれはイメージできるのではないだろうか?
こういった「天使の声」と「悪魔の声」は、我々の中に脳内葛藤を生んでいる。その両方の声があることを受け入れたことで、「あなたという一人の人」から、第三の選択(例: 起きて会社に行くけど、今晩は残業をすべて断って、早く帰って寝よう)をすることができる。
個人に対するコーチングというのは、とても乱暴に言えば、目の前のクライアント(あなた)の中に混在している多種多様なリトル自分の声(天使の声・悪魔の声)一つ一つをないものにせず、ちゃんと耳を傾けてもらう。その上で、クライアントに最も響く第三の選択(例: 起きて会社に行くけど、今晩は残業をすべて断って、早く帰って寝よう)をして、行動をしてもらう。その繰り返しによって、クライアントの中にクライアントをハッピーにする新しい価値観が生まれ、それがクライアントの生き方・働き方を変えていく。
これがパーソナル・コーチングだ。
関係性コーチングが行っていること
パーソナル・コーチングの例え話を、関係性のコーチングに置き換えてみよう。
まず、関係性を絵で表すと、以下のような感じだ。
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この絵を頭に入れながら、以下を読んでみてほしい。
その関係性には、営業部長の「大橋さん」と開発部長の「小林さん」がいるとする。
その「大橋さん」と「小林さん」を含む関係性が、「一人の人」だと想像してみてほしい。「大」と「林」をとって、便宜上「大林さん」とでも名付けておこう。
大林さんの中には、「天使の声」(大橋さん)と「悪魔の声」(小林さん)がある。
そして、「大林さん」の中では、営業部長の大橋さん(天使の声)が主流派だ。いつも大橋さん(天使の声)は、「お客様は神様だ。お客様の要望だ。明日までにやるしかない。」と、開発部長の小林さん(悪魔の声)を振り回している。そんなパワーワードを連発されるものだから、開発部長の小林さん(悪魔の声)はいつもぐうの音も出ない。いつもダンマリして、ただただ従うしかない。
この状態がずっと続いたとしたら、「大林さん」はどうなるだろうか?
大橋さん(天使の声)ばかりが尊重されて、小林さん(悪魔の声)は周縁化(周辺に追いやられた声なき声)に誰も耳を傾けてくれない。
そう、その「大林さん」の何かが破綻するのだ。
例えば…
・小林さんが疲労で倒れてしまう。
・小林さんが仕事が嫌になって辞めてしまう。
・小林さんが鬱になってしまう。
・小林さんがある時、ぶっちぎれて大橋さんの言うことを、全く聞かなくなる。
・開発部門が進めていた次期戦略商品の開発が遅れ、毎年自転車操業のような商売を続ける。
・営業部門との関係性に不満を溜め、上層部に掛け合ったものの上層部からも裏切られ、会社に対するロイヤリティを感じなくなった結果、たまたま発見した商品の不具合を隠蔽した。
…など。
では、どうしたら良いのか?
大橋さん(天使の声)の声を、その裏にある真意と共に、ちゃんと小林さん(悪魔の声)に届くようにする。小林さん(悪魔の声)の声も、その裏にある真意と共に、ちゃんと大橋さん(天使の声)に届くようにする。心理的安全性を高め、お互いが心の底で何を感じているのか、お互いがお互いの真意に敬意を持って、耳を傾けられるようにする。
すると、その二人の間、つまりは大林さんから新たな第三の選択が浮上してくる。
それと共に、大林さんの中から…
古き悪しき価値観・風習(例:営業部門偏重主義)が消え、
古き良き価値観・風習(例:お客様の役に立ちたい)が残り、
新しい価値観・風習(例:開発現場の働きやすさを尊重)が表出し、
…大林さんの中に、新しい価値観が芽生え、新たな文化、新たな働き方、新たな生き方へと変容していく。
大橋さんから生まれている訳じゃない。
小林さんから生まれてくる訳じゃない。
大橋さんと小林さんを包含した、大林さんから生まれてくる。
これが関係性のコーチングのイメージである。
関係性のコーチングというと、「人間関係の構築」や「もつれた関係性を修復すること」だと勘違いされることがあるように思う。それもある側面では間違ってはいないが、核心ではないと僕は思っている。
関係性(大林さん)が、最も創造的で、持続可能な、「響く第三の選択」をできるように、コーチが関わっている。(パーソナル・コーチングが、クライアントが、「響く第三の選択」をできるように関わっているのと同じだ)
これが、関係性のコーチングだ。
コーチングの対象は、個々の人ではない。
コーチングの対象は、関係性(大林さん)そのものである。
パーソナル・コーチングと関係性コーチングの対比
以下が、パーソナル・コーチングと関係性コーチングの対比図だ。
クライアントの対象の違い以外は、ほぼ違いがないと僕は思っている。
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まとめ
関係性のコーチングとは、僕にとって、そのペア・チーム・組織が秘めているフルポテンシャルの創造性を解放する行為だと思っている。
関係性を側から見ていると、無自覚にも足を引っ張りあっている。そこに属しているメンバーを、一つの目的に向かってアラインして、そのペア・チーム・組織の最大出力が出るようにする。
そんな関係性のコーチングに興味がある方は、ぜひ「関係性コーチングの無料体験セッション」を検討ください。
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