4.『ザ・テレクラ回顧録』4発目
~前回までのまとめ~
社会人になって初給料をもらった俺、
鈴木義男(便宜上、私の名前としてください)が
同僚に連れられてテレクラに初突撃。
同僚と俺(鈴木義男)。
他の部屋の見ず知らずの人達も含めて
野郎どもの熱い戦いが始まった。
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コンコン・・
誰かがオレの部屋を
ノックしてきた。
「行ってくるわ」・・ 同僚だった。
「行ってくる?」
「アポ取った!」
「マジか?」
「マジだ」
「がんばれよ!グッドラック!」
「ああ。サンキュー」
(アホ2人組の会話)
この時の同僚は
さながら
大口の取引先とアポを取り付けた
期待の超新星って感じで
メチャクチャ大人に見えた。
きっと会社ってこういうやつが
出世して課長とか部長に
なっていくんだろうなぁ・・
(いや、ならんやろ)
同僚は颯爽と
引き戸を
ガラガラと開け
夜の街に消えていってしまった。
今回が初回の俺は
同僚にいろいろ教わりたいことも
あったが
頼りの同僚はもういない。
1人で何とかするしかないのである。
壁紙に書いてあるサセコの
電話番号を一応メモってみたり
注意事項などを見渡して時間をつぶし
電話が鳴るのを待った。
時間内であれば
何回でも外出していいという事も
分かった。
「なるほどね~」
プルルル・・
ふいに
電話が鳴った・・誰も出ない。
プルルル・・まだ誰も出ない(はよ取れ、俺)
同僚が出て行って
ライバルが一人減り、他のやつも
話し中でもはや
電話に出れるのは
俺しかいないという状況だ。
新人にとって会社の電話に
出るのは恐ろしくいやなことだが
まさにそんな感じ。
なんて出ればいいかわからないし
何を話せばいいかもわからない。
今日も会社で
「新人はどんどん電話に出て慣れろ」
と上司が言っていた。
「電話は鳴ったらすぐ出ろ。
なんコールも鳴らしてお客様を待たせるな」
とも言われた。
もうやるしかない
俺は覚悟を決めた。緊張で手汗はびっしょり。
滑る手で必死に受話器を取った。
「お待たせいたしました。鈴木です。
いつもお世話になっております。」
(なに言ってんねん)
人間というのは窮地に追い込まれると
何をしでかすかわからない生き物である。
やっちまった。
俺の頭の中はもう真っ白だった。
「キャハハうける~
お兄さんおもしろいね~」
「え!」
なんや
こんなんで笑ってくれるんか(*'▽')
俺は一気に気持ちが楽になり
その反動で
矢継ぎ早にしゃべりだした
「いやどうも~
お待たせいたしました。
いえ、お待たせしすぎたかもしれません。
なんちゃって。
実は今日、初テレクラで
なんか運命かんじちゃうよなって感じ。
俺達、もともと
今日ズッコンバッコンする
運命だったのかもね~
今から迎えに・・・」
プーッ プーッ プーッ・・・
相手から聞こえてくるはずの
バカ受けの声が聞こえてこないので
一瞬黙ってみたら
聞こえてきたのは
受話器からのプーッ プーッだった・・
おそらくオレの隣の部屋のライバルは
ガッツポーズをとり
バカ受けしていただろう。
俺は天井を見上げ
きついネクタイをほどき
哀愁のキャビンマイルドに火をつけた。
一体、今の会話の何がいけなかったのだろう。
(いや、すべてやろ(-_-;))
「いや、ど~も~・・・
俺は今の会話を思い出してみた・・・
肺の煙を吐きだし
首をうなだれながらオレは悟った。
全てダメだな・・
(いや、気づくの遅いやろ)
コンコン・・
誰かがオレの部屋をノックした
「ダメだった。
すっぽかされた・・」
同僚だった。
アポを取り付け約束の時間に
約束の場所に行ってみたが
会えなかったらしい。
テレクラではそこそこある
『すっぽかし』ってやつらしい。
「ドンマイ。前だけ見ていこう!」
「そうだな」
(アホ2人組の会話)
つづく・・・