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映画感想『林檎とポラロイド』
原題「MILA / APPLES」
◆あらすじ◆
突然記憶喪失になる謎の伝染病が蔓延する世界を舞台に、記憶を失った孤独な主人公が、治療のための回復プログラムによって新たな生活を確立していく姿を、哀愁とユーモアを織り交ぜ、ユニークな世界観で寓話的に描き出していく。
原因不明の記憶喪失が蔓延する世界。
身分証も無く保護された孤独な男が病院提供の自立支援プログラムに参加する。
課題を次々とクリアしていく彼の姿に僅かな疑問が浮かび上がる。
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淡いサスペンス香を漂わせながら進行する物語に哀愁と再生が交錯する。
記憶の喪失は深い悲しみや拭えない痛みを忘れさせてくれる人生のリセット。
だがそれと同時に何にも代えられない積み重ねた思い出も消し去ってしまう。
台詞や説明を出来る限り削ぎ落とし観る側の最大集中を促しているようだ。
記憶を失う以前の彼が冒頭数分で描かれるんだがそこに詰め込まれている情報をしっかり見ておく事でこの物語の重要な背景が脳に刻まれる。
観客の記憶力を試している様な一瞬一瞬の描写に意味があり、まるで光量の少ないフラッシュが焚かれる様に切り替わるシーンがこの作品の要点を描いてる。
苦痛では無く、深い悲しみから来る忘れたい記憶も残したくない痕跡も本当は人生の糧であり、次第に憂いは削がれ遺るのは好ましさなのだ。
彼が好む懐メロ、突然目覚めたかの様に踊るツイスト・・・
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そして冒頭で流れる「スカボローフェア」がラストに繋がる演出が憎い!
音楽もこの作品の重要なエレメンツだ。
ここまで【無口な映画】を観たのは久しぶりだがやっぱり好みだな。
シーン運びも見せ方も絶妙で静と動の混在がとにかく素晴らしいと思った。
彼が本来どういう人なのか?
それを想像させる"過去"の描き方が最高に巧い!
観て良かった。
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2022/03/24