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映画感想『パリタクシー』
原題「仏 UNE BELLE COURSE/英 DRIVING MADELEINE」
◆あらすじ◆
家族を愛しながらも借金のせいで働きづめで、おまけに免停寸前と崖っぷちの中年タクシー運転手シャルル。ある日、住み慣れた家を引き払い、介護施設へと向かう92歳の女性マドレーヌを乗せる。道中、思い出の街に寄り道してほしいというマドレーヌのわがままに、渋々ながらも付き合うシャルルだったが…。
タクシーの車窓から重厚且つ美しいパリの街並みを映しながら1人の老女と彼女を介護施設へ送り届ける使命を担ったタクシー運転手シャルルとの運命的な出逢い。
92歳のマドレーヌの波乱な人生と彼女の正体が回想と共に明かされていくのだがややサスペンス性を帯びた演出に心掴まれる。
シャルルを巻き込みつつ行先を次々と変えながら彼女は自分史を描く様にパリの街を巡る。
戦争、アメリカ兵との恋愛から始まり出産、貧困、DVに至るまで想像を超える彼女の生き様にシャルルも心を動かされ次第に想いを通わせていく二人の姿が微笑ましい。
時代に翻弄されながらも自分を見失わず社会に向き合って来たマドレーヌに象徴される女性地位向上と言う歴史観点からもこの作品は非常に見応えがあった。
そして時代の移り変わりと現フランスの労働者階級の実情がシャルルの背景として垣間見られるのがこれまた一興である。
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ラストはあくまでも想像を脱しはしないがその予定調和的な締め括りさえもこの2人の遣り取りの心地よさと先に生きた者から今後を生きる者への重要な助言として心に留まる財産になる。
大変好みでした!
余談だが改修が完了したオペラ座はとても美しかった。私が訪れた時はまだうす汚れていて外装が黒っぽかったんだよなぁ。
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パリの街は冒頭にも書いたが重厚感が凄い。この作品はパリ観光してるような気分にもなれるのでそういう意味でも楽しかった。火事で燃えたノートルダム寺院も映されていた。
劇中、食事のシーンもあるがランチにコーヒーや紅茶と同じ感覚でワインが付いてくるのが幸せだった記憶がある。
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美味しそうだったな。
そんな美しい街並みと老女が生き抜いた厳しい時代とのコントラストもこの作品の見応えだろう。
92歳まではさすがに生きないだろうが自分の人生に誇りをもって最期は終わりたいね。
こんな風な人への影響の与え方・・・マドレーヌ凄くカッコ良かった!!