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映画感想『アナザーラウンド』

原題「DRUK/ANOTHER ROUND」

◆あらすじ◆
冴えない高校教師のマーティン。無気力な毎日を送る彼は、学校では生徒から授業がつまらないと文句を言われ、家でも妻子との溝は深まるばかり。そんな時、同僚から"血中アルコール濃度を0.05%に保つと仕事の効率が上がる"という理論を聞く。そこで、ためしにお酒を飲んで授業を行ったところ、思いのほか気力がみなぎり生徒の評判も上々だった。これに気を良くしたマーティンは仲間の同僚3人とともに、この説を論文にまとめるための実験と称して、勤務時間中の飲酒を実践していくのだったが…。


※"ANOTHER ROUND"とは、居酒屋やバーなど酒を提供する場所で酒をもっと注文するために使う言い回しで「もう一杯!」ってヤツっすね。
因みにデンマーク語の原題"DRUK"は大酒を飲むとか暴飲みたいな意味だそうです。「酒害」って単語も出て来た・・・。



中年期を迎えた教師4人が人生の再生と転落…そしてその途中にささやかな幸せを見出す人生讃歌として巧みに作られた一作。

ある論文から見つけた一定量の酒による作業効率を自分達で人体実験すると言うどうにも人生の中盤でやや倦怠を感じたり気力を失いつつある男性諸君が考えそうな設定が興味深い。ジェンダー差別と言われかねないがあまり女性には無い発想かな?

実際こういうのは嫌いじゃない、嫌いじゃないんだが・・・不幸は招きそうだよね。

酔っ払いのオッサンが主演の作品は幾つかあるがそれらのコメディとは一線を画した内容。
この4人が不良教師だと言ってしまえばそれまでだが、案外大真面目な連中なのがオモシロイんだよね。

でも、その実験に取り組んだらどうなるか?は結構容易に想像出来ると思うわけ。
それでも彼らは自分の授業内容向上や生徒達に支持される授業がしたくてひと口、またひと口・・・と成功例を作って行く。

でもね、常に酒を体内に入れておくって・・・もうその時点で依存じゃない?
いつでもやめられるって思うかもしれないけどその意思より成功例や高揚感が勝ってしまったらTHE ENDだよ。

失う物の方が大きいかもしれないって思わないかなぁ?

まぁ、実際彼等は大きな物を失いそれでもその事に気付けた現実に違う人生を見出す。

その流れの中に彼等を取り巻く家族や生徒達の心の機微まで繊細に映し出された秀作だった事は間違いない。

"他力"が必要な時もあるが自分をコントロールするにはやはり自分の意思が大事だと認識させられる。

ただね、人生の明暗を分ける事象を端的に描いたのは非常に評価するが少し考えればアル中まっしぐらは目に見えてる実験で、元々家庭でなら何歳からでも酒を口にして良いし16歳から酒類を買える国と言う背景を踏まえれば自制が無ければみんなアル中になる要素を持ち合わせてるんだろうななんて事も考えてしまう。北の国は強い酒を飲むからね。
だから劇中にも妻たちの「お酒飲んでるの?」みたいな台詞が結構出て来る。
「この国はみんな酔っ払いよ!」的なのもね。
だから、自分を鼓舞するアイテムが【酒】じゃなくて違うものだったら良かったよね~~とか思っちゃったりするわけ。
だって冴えない中年男性が奮起するんだからそれは良い事じゃない?!
「俺の人生これで終わって堪るか!!」って大抵は思わないでフェイドアウトなんだからね。

でも、馬鹿だなぁ・・・と思いながら鑑賞してもマッツのカッコ良さは決して衰えないのが凄い❤

ラストシーンのマッツはサイコーに魅せてくれる。

マッツのダンスシーン

飲酒には緩めのお国柄故の作品かもな・・・。
要は酒を飲む口実だったりしてね。

🎵サウンドが独特で凄く好みだった。

マッツのダンスシーンで使われたScarlet Pleasure の『What A Life』スカーレット・プレジャーはデンマークのトリオバンドでリードボーカル:Emil Goll、ベース:Alexander Malone、ドラム:Joachim Denckerのと言う構成。R&B、ソウル、ファンク、ポップと幅広いジャンルの音楽を融合させた個性的なバンド。

2021/9/13

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