映画感想『ヒューマン・ボイス』
原題「THE HUMAN VOICE」
ジャン・コクトーの戯曲『人間の声』をアルモドバル監督が映像版として自由に翻案し現代にアップデートした作品。
別れた恋人が荷物を取りに来るのを待ち続け、3日後にかかって来た彼からの電話に歪みを埋めるが如く喋り続ける事だけで表現し演じるティルダ・スウィントン。
その立ち居振る舞い、言葉の抑揚で彼女の心情の移り変わりが描かれるが彼からの電話以前の行動から始まる今作は思い詰めた人間のなり振りの幅が短い時間にしっかり描かれているのが面白い。
自分を捨てた男への怨念から電話に出た直後の彼女の誇り高い言動、その後時間と共にそれが崩れ、愛を取り戻そうとする孤独の背景が見え隠れする。
そしてラストの決意!
鮮やかな色彩と細部にまで拘り洗練さを持ってスタジオに組まれた部屋のセットとその無機質な裏側も隠さず映し出す辺りはこの女性の気高さやプライド、愛の渇望と孤独と言う心の表裏の様でもあり興味深い。
30分と言う短編にも手抜き無く監督の美学が見て取れる。
失った愛を吹っ切る時人はどう行動するのか?
彼女の中の不安と激しさは誰もが持つ人間の二面性なのかもしれない。
唯一の共演者↓↓↓
2022/11/05