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映画感想『永遠に僕のもの』
原題「El Angel」
◆あらすじ◆
1971年のブエノスアイレス。思春期を迎えたカルリートスは、子どもの頃から他人が持っている物を無性に欲しがる性格だった自分の天職が、窃盗であることに気づいてしまう。新しく入った学校で出会ったラモンという青年にたちまち魅了されたカルリートスは、ラモンの気をひくためにこれ見よがしな対応を取り、2人はいとも簡単に殺人を犯してしまう。次第にカルリートスとラモンの蛮行はエスカレートし、事態は連続殺人へと発展していく。
好き過ぎた!
音楽、めちゃくちゃカッコエエ🎶
満たされない気持ちが【天使】を【悪魔】に…いや【魔性】に変える。
ヘテロの男も変な気にさせる巻き毛ブロンド君❤︎
原題の『EL ANGEL』
これは主人公カルリートスのヴィジュアル。
邦題の『永遠に僕のもの』は彼の心情。
この二つを重ねる事で作品を漏れなく言い表してる気がする。
でも敢えて邦題に【エンジェル/永遠に僕のもの】なんて付けなかったところが良い。
個人的にこの主演の2人とも全然好みじゃないんだけど観てるうちに何だかケミストリーが湧き出て感じるのが不思議。
それにしても…
あぁーなんだろう!?
この胸の中をかき乱すモノは!
あーあーあーあーこっちもさぁ
心地良い【満たされない感】なんだよー!
踏み込むの?踏み込まないの?みたいなね。
物凄く常識的で真っ当な両親に育てられたカルリートスの裏にある【性質】とその確証を得てしまったラモンとの出会い。
序盤、次々と犯す軽い犯罪は自分の【不自由さ】や【親】への反発だったかもしれない。
でもラモンの荒々しい漢臭さに惹かれていく気持ちと失いたくない想いが犯罪を更にエキサイトさせて行く。
他者から奪えば奪う程その対象物の価値は軽くなり、まるで血に飢えた吸血鬼の様にトリガーに掛けられる指は安易に引かれる。
認めて欲しいのと自分の自由の主張。
刹那的な快楽に身を委ねる彼を見てるともどかしさと切なさで未来の破滅しか見出せない。
でもそれを受け入れても尚、その魅力は果てしなくて計り知れない。
シーンの描写、色彩美、どこか懐かしさのあるプライマリーカラー…
カルリートスが自由に生きようとする姿にその色彩が融合してるんだなぁ。
途中の台詞やラストに或る映画へのオマージュが感じられたりで、とにかくスクリーンにガッツリ掴まれた。
しっかし!
金◯袋のドアップとか有りかぁ〜!?
吹き出すの堪えたわぁ(笑)
思い起こすと結構笑えるシーンあったなぁ。
誰も笑ってなくてアタシ1人でクッククック(青い鳥並みに)肩揺らしてたけどねぇ。
あのシーン好きだった。
バイクでのダブルデートでラモンは後ろに乗せた女の子にハンドジョブさせてるんだけどカルリートスは(一応)彼女にそれをさせない。
彼女が同じ様に手を股間に伸ばそうとすると2丁の拳銃が邪魔をするってシーン。
もうこういう粋な設定上手いなぁって思った。
あと、盗んだジュエリーで風呂上がりのラモンの股間を覆うシーン。
簡単に手に入れたもので簡単には手に入れられないモノを覆う・・・永遠に自分のモノにはならない現在進行形の喪失感が物凄く感じられて衝撃だった。
カルリートスは手に入ったものには興味が無いんだよね。
だから大量の札束も自分の手元には置かない。
プロセスを楽しんでる。
永遠に自分のものにならないラモンへの執着はそこから来てるんだな。
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なんかそういう一筋縄でいかない感じがアルモドバル監督製作って言うの納得なのよね〜。
今作のルイス・オルテガ監督はアルゼンチンのローカル映画賞で幾つか賞を獲ってる注目株。
そして俳優陣もアルモドバル作品常連のセシリア・ロスを筆頭になんだか渋めの顔ぶれでその辺りも見応えの一つ。
それにしてもロレンソ・フェロ君は『風と木の詩』のジルベールだと言われてるけど『きのう何食べた』のジルベールとは訳が違う(笑)
もうちょいお顔がシャープだったら完璧かもね。
あーでも全体像は大好きな『ビューティフル・デイ』の時と同じ感覚がある。
犯罪だと分かってても手を汚してしまう、そして逃れられない1つの出会い=運命。
エンディング、あの名曲『朝日のあたる家』が引き出すもう後戻りできない所まで来てしまったと言う寂寥感とそれにも気付かず無邪気に踊るカルリートスの不憫さ。
この作品のラストはそういうエレジー的な要素が多大に感じられる。
本当に音楽の使い方が巧み過ぎた!!
でも、全然2人とも好みじゃないのよー!
2回言いましたけど、何か?(笑)
因みにこちらが本物
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美しい頃のエドワード・ファーロング似?
それか『ベニスに死す』のタジオか?
観終わった後はイケナイ果実を頬張らされた気分だ。
これが事実だってんだから見た目にはマジで気を付けろって事だね。
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