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映画感想『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』

原題「THE DEATH OF DICK LONG」

◆あらすじ◆
アメリカ南部の田舎町。売れないバンド仲間のジーク、アール、ディックの3人は、いつものように練習と称してガレージで一晩中バカ騒ぎをしていた。ところが翌朝、ディックは変死体となって発見される。警察が捜査に乗り出し、たちまち町中大騒ぎとなる中、ジークとアールは頑なに口を閉ざすばかりか、あろうことか事件と自分たちを結びつける証拠の隠滅を企てるのだったが…。
 



真っ先に思い出したのがあの名作『ファーゴ』だが今作は極寒でも無ければピリッとしたサスペンスでも無い。いや、サスペンス要素はあるが非常にユル~イ。


何処から見ても「アホだなぁ」って思う下手くそバンド仲間が1人の死の原因を考え無しに隠しまくる。その理由が何なのか?隠すにしてもかなりアホ過ぎる動向に、浮かんで来るのは【転落】の二文字。
「もぉっ!コイツ等救いようがないじゃん!」と思いながら付き合って行くと真相が暴かれた時「うわぁ~マジかぁぁ」って想像を超えた愚行に頭を抱えたくなる。

知った時の顔。

そんでもってそうそう大した事件なんて起きないアラバマののんびりした田舎町なもんだからそれを調べる警察もまぁシャキッとしないっつーか多分NYやLAの100分の1くらいのスピード感・・・笑える。

普通のサスペンス映画なら「そこ直ぐに気付くよね?」「いやそれは素人でも判るレベル」ってのが頻発。
でも町の緩さと人の緩さがピッタリマッチしてるもんだからまともなのが主人公の娘と嫁くらいに感じる。

ただね、プロットは上手く出来てるんだよね。
小さなエピソードがギクシャクしながら上手く噛み合わない感にあまり気持ち悪さを感じないのが凄いのよ!
その緩い馬鹿気た展開は緻密に練られた台詞回しや状況で成り立ってる。

そして、そのひた隠しにした彼等の秘密もこの何も起こらないまるで変化の無い日常を繰り返すだけの田舎町で時間を持て余した子供のお遊びが大人になっても止められず常習になってたって事なんだろうね、と思うわけ。それ程【何も無い】んだよ。
だから手近に在るものに手を伸ばす・・・若気の至りでね。

ただ、いくら暇でもやってイイ事とやっちゃイケナイ事の分別は付けましょう。
それは思春期に於ける一時の気の迷いでもダメ!!

奥さん(常識人)の立場から言えば「決して子供には近づかないで下さい」レベルだからね。
毛嫌いされるの覚悟じゃなきゃ踏み入れてはイケナイ領域だったね。

サブタイトルにもある様にこの事件によって知らなくていい事を知ってしまったと言うのもテーマだよね。
ただ、バレなければ何をやってもいいのか?と言う問題提起でもある。

そして、愚行はいつかバレる。


人間の愚かさと無恥な欲望はトコトン痛い目を見ないと気付けないと言う教訓。

ただ、この内容を違う撮り方されてたら怒り心頭だしホントに許されないけど前述したようにプロットの緻密な計算と何処か憎めないキャラ設定をきちんと演じた役者の巧さに唸らされる!

だって彼等ってその部分を除いたら凄くイイ奴等だからね。
だから「なんで止めなかったのお~~~~!!!!」って思ったよね。

・・・・そして彼等に罰は与えられる。

でも、人生は続く。

充分に反省して身を清め給え、アーメン。


2020/08/14