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映画感想『ボーンズ アンド オール』
原題「BONES AND ALL」
◆あらすじ◆
生まれながらに人を喰べる衝動を抑えられない18歳の少女マレン。ついには父親にも見捨てられた彼女は、自らの謎を解くために顔も知らない母親を探す旅に出る。やがて、同族の若者リーと出会い、彼に母親探しを手伝ってもらうマレンだったが…。
人肉を喰らうカニバリズムを描きながらここまでピュアに描けるのか⁈
異形と言う何処にも属せないマレンとリーのラブストーリーだがロードムービーの要素も加味してまるで青春映画の様でもある。
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主人公の少女マレンをテイラー・ラッセルが演じてるのだが、彼女『WAVES/ウェイブス』の時に凄く良かったのを覚えてる。今作でも父親に見捨てられ、同じ運命を持つ母は施設に居る。たった一人で世間に放り出され生きる術を失うが時を経る内に僅かながら息を潜め生息する同族達に出会う。
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この辺はちょっと『トワイライト』を含む吸血鬼モノを彷彿とさせたが血を吸うだけではなく“人肉を喰う”というコチラから見たらあまりに残忍な特有性を如何に受け入れ生活し生き抜くかと言う描写が嫌悪よりむしろ純一無雑を感じその描き方が巧みだなと思った。
マレンがティモシー・シャラメ演じるリーと出会ってから加速的に二人の世界が広がる。
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リーは既に人を喰う習性を受け入れ時には我慢し、時には如何に上手くそれを遣り終えるかの術を持っている。
マレンは彼に魅せられ共に歩むが彼らの特有性は1つ間違えば“殺人”と言うムショ行きなどでは済まされない現実を意味する。
その現実を突き付けられるエピソードが彼らの繋がりのカタチに変化を齎し2人がそれぞれの生きる道を選択する亊になるが・・・。
もちろん題材的に凄惨な描写はあるものの彼らのお互いを求めるココロや居場所を作りたいアイデンティティ探究の想いが切なく流れる。
純真なラブストーリーとしての個人的評価は高い。
がホラー映画としても成り立つのがマーク・ライランス演じるサリーの存在だ。
最初にマレンが出会う年配の同族だが異様性は初めからムンムンしてる。
現れる度に身構える程の異物感に圧されるのだ。
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終盤、サリーがマレンに執拗に迫り、リーに羽交い絞めにされ3人が血塗れで揉み合うシーン、途中で挿し込まれる木々やレンガ壁に表される静寂が外界(他者)と彼らの世界との大きな異なりを表現していて今作に於ける最高の描写では?と感じた。
そしてサリーが喰う度にコレクションしていた髪の毛があんな伏線回収に繋がるとは・・・。
荒涼としたアメリカ中西部の景色が彼らの生そのものの様で善悪で語れないマイノリティ達の孤独がペイルトーンの色彩に映される。
そこにジョイ・ディヴィジョンやニュー・オーダーの曲がマッチする。
グァダニーノ監督恐るべし!
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