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映画感想『コーダ あいのうた』
原題「CODA」
◆あらすじ◆
マサチューセッツ州の海辺の町に暮らす高校生のルビー。両親も兄も耳が聞こえず、家族の中で健聴者は彼女だけ。そのため、手話の通訳や家業である漁業の手伝いなど、家族が日常生活を送るうえでルビーのサポートは不可欠となっていた。そんな中、高校の新学期に合唱クラブに入部したルビー。そこで顧問の先生に歌の才能を見出され、名門音楽大学を目指すよう熱心に勧められる。ルビー自身も歌うことの喜びを知り、初めて夢を抱くようになるのだったが…。
タイトルの『CODA』とは「Child of Deaf Adults」の略で「聾唖の親を持つ子供」と言う意味。
そして楽曲に於ける独立した終結部も意味し、ダブルミーニングだ。
今作の主人公は自分以外の家族が全て聾唖者と言う設定。
それ故、両親と兄を演じる俳優達は皆聾唖の役者で手話演技がとても素晴らしい。
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これは当事者である俳優を起用する事でリアルで生きた手話会話が体験出来る事と劇中、兄の手話に対してルビーが「新作ね」的な発言をしてるシーンが見られる事から、なかなか手話に馴染めない聴者が手話も私達の話す言葉同様【変化のある言語】である事を認識する機会に触れられる事が大きい。
或る意味【方言】と言える様な地域差もあるそうでとても興味をそそられる。
職業柄、手話が出来たらイイなと思った事も何度かあるが簡単な挨拶程度の物しか覚えられずその難しさには私の根気の無さを実感させられるが…
そう言う意味でもその通訳係を幼い頃から務めているルビーを演じたエミリア・ジョーンズの手話特訓の成果が見事で、あのスピードで手話会話をやってのけるなんて・・・脱帽以外の何者でも無い。
そして彼女の歌唱も美しい。
その歌唱力がこの作品により現実味を齎している。
今作に描かれる聾唖者と聴者の壁が"お互いの歩み寄りでしか解決出来ない"と言う事に気付かせてくれる展開は当事者を起用する事で成り立っていると思う。
これを健常の俳優が演じていたら多分慣例的な聾唖者の障がいばかりをフィーチャーしたものになって、まるで進化の無い作品になっていた事も想像出来る。
だから、今後の彼等聾唖役者達の活躍は期待出来ると思う。
いや、そうなってほしい。
アメリカの労働者環境や貧困など社会の理不尽を生む背景も描きながら愛する家族と自分の夢との板挟みに葛藤するルビーの不安定さにこちらの想いも揺さぶられる。
全てを語るように歌われるジョニ・ミッチェルの『青春の光と影』がまた良い。
家族の再生物語・・・心の芯に響く秀作。
いや、素晴らしかった!
もしや【I love you】と【good luck】を合わせてる?
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手話での下ネタを訳すルビー。
「ルビーは子供の時から大人だった」とやや後悔を含む父親の言葉に胸が締め付けられた。
2022/01/22