博物館にて
電車に乗ったのは娘の入学前 オープンキャン
パスへ行った時以来だからほぼ二年ぶりという
ことで 昼前の電車は丁度体が触れるかどうか
と言った込み具合 これが 一番私の嫌いな
込み具合で いっそ満員で身動きが取れない
ぐらいの方が楽でいい ちょっと触れたり なんと
なく押されたりするような立具合が駄目だ と
思いつつ 中川 荒川 隅田川と都会の黒っぽ
い水の川を上野の山へと緑の電車で上って
いく
結局 娘が課題として行かなければならない
東京国立博物館に妻ととともに先入りしている
朝 ひとときこぼしたような強めのにわか雨が
窓の外の桜の木にたたきつけていたのが止んで
今のところ傘を開かずに動物園むかって右へ
流れていく 樹々を挟んだ向こうに立ち並ぶテン
トは何か 今 ほとんど上野に出ることはないが
子供がまだ小さかったころしばしば訪れたと
きに 何かしらのイベントがいつも開かれていた
広場で いつだったか背の高い志茂田景樹が
ひょろりとピンクのぴったりした服で踊るように
歩いているのをそこで見たことがあった
体質変化か病変かここの所少し動くと怒涛の
汗が噴き出してくる 一人で汗だくになりながら
博物館に入ると フェイスタオルで顔から首から
闇雲に拭いて 見渡すとなんと外国人観光客
の多い事 広場横の通路を歩いているときにも
ちらほら外国からの訪問者がいると思っていた
が館内は見た目八割が他国の方々で ほとんど
マスクの着用はなかった 私などは臆病者だから
大汗でマスクが湿るようなのに頑なに外さない
ここ数年風邪もひいていないのにコロナに耐え
られる気がしない それは妻も同じで口を隠した
他の顔は目に眼鏡の化粧っけなしで そういえば
妻の化粧は妻が仕事をやめてからほとんど見る
機会がなくなった 人に言われたか何とかでや
けに赤い口紅だったが それ似合わないよ と
言って それかどうか今は化粧はほぼしない
妻はミュージアムショップが目当てのようで そ
ういえばどこへ行っても土産物屋にまず行きた
がる 館内閲覧の前に店に行くとさながらハワイ
の免税店にでも来たようで と言って地元民は
免税店に来ないか と気づくもまあ雰囲気として
とらまえていただくとおちょこや手ぬぐい ハニワ
のレプリカなど 手に取ったり友達と見せ合って
見たり 妻は仕事で来ていない 後で駅で
落ち合う予定になっている息子に 館のキャラ
クターになっている白い犬の描かれたキーホル
ダーと夏秋草図の一部が館に印刷されたゴー
フルを買っていた 私は蒔絵の万年筆など見て
いたがとても手軽に買える値段ではなく 筆記
具のあたりに置いてあった和綴じのノートに強く
惹かれた
四ツ目という伝統的な閉じ方でもともと中国か
ら伝わった製本とある 千円の値がついていた
同人雑誌にはるか昔参加していたこともあり 本
の体裁 製本 それらに興味を持ち続けている
つい先日 天アンカットの古い本を読み終えた
ばかりでもあった 暇はあるのでいつか小さい
本でも編んでみたい 和綴じで 手作りで など
と考えることもしばしばある 読むのもめでるの
も本は好きだ 手に取って参考にしようか しば
らく悩んだが結局高いと思ってやめた ネットに
和本の綴じ方みたいなものがあるだろうと考え
たからだった ネットのせいで買わなくなったもの
が沢山ある しかし買うものの少なくないものを
ネットで買っている 結果 街を歩かなくなった