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昨夜から昼までの流れを追って

あなたの抱いている人形の顔 どうしてそんな
に怒り顔なの などとふいに頭に浮かんだ 一行
怪談 という本があって これに似たような一行
が何百か並んでいたが ともすれば詩のような
一行もあった 現実の事も非現実の事もどちら
も文芸と呼ばれる書き物の守備範囲だから
怪談も猥談も奇談も含まれるのは当然で そう
なると極限まで切り詰めて短くした場合 これは
小説 これは詩 と仕分けするのは難しいのだ
ろうけれど それでもこの行は詩だ こちらは
小説だ と微弱信号で振り分けられるように直感
したりするのはその言葉のどこに散文韻文が
わかれる分かれ目のような物があるのだろう
ちなみに言うと いかにも詩 みたいな言い回し
にはもう飽ききっている 特に直喩にくさみをか
んじる

文章は昔に比べて簡単になっている などと
言うといつと比べて とか 単なる印象だ など
と反論がありそうだ 難しい文章の難しさの質
にこだわる などといった読み方はしてこなかっ
た びっしりと描写が書き込まれたとっつきにく
い感じの文体は 読んで骨が折れるけれど そ
う言う読書に快楽を感じる人も少なくないのだと
骨が折れた本が何刷も重ねているのを見て思う
無数の本 無数の映画 無数の音楽 どうせ死
ぬまでに満足いくほど楽しみ尽くせるわけもなく
そこばかりにかかずらっていられないという思い
も強く 論旨も定まらず書き始めてしまった途中
の 当てのない感覚がうっすらと快かったりも
する

今朝 町内で二人の少女がマンションから飛び
降りて亡くなったとのことだ 妻と駅に向かう途中
大きな交差点に三脚をたたんだテレビカメラを
抱えた人たちが何人か集まっていて 妻が気
にしているように感じて こんにちは 何かあっ
たんですか と声をかけてみた カメラの台座
に民放キー局のシールが貼ってあるのが見えた
つまり このカメラのそのテレビ局の備品なのか
などと考えながら何があったのかわからないま
ま 行けと言われてきたんですよ との回答に
まあ 何があったか言えないこともあるでしょうし
ね と言い添えたところ いや ほんと 管理人
さんも何があったかわからないっていうし と
ほんとに知らないという風に返してきた 

今日は別のサイゼリヤで妻と食事をしながら
妻のスマホでテレビクルーの取材対象を知り
と ここのゼリアは駅に近いせいか次から人が
出入りしてきて ここもワンオペか 忙しく立ち
働いている女性店員に目をやりながら 後方の
席では多分高校生らしき少女たち 平日なのに
何故と思うが多分学校の記念日か何かなのだ
ろう やや騒がしく感じつつも楽しそうなのはい
い事だな などとほのかに感じ 厨房からは
しきりに中国人がどうしたこうした という多分
私語がずっと続いていて おそらくその会話の
一方 または双方が中国出身者なのかと想像
出来るような内容で どうにも二度目の青豆
サラダを感動できずに店を出ようと扉から行き
違いに入ってきた女性たちのためにドアを開き
続けると ありがとうございます と小声ですれ
違われて 他の客が私たちが階段を下りるのを
待っていてくれたものの その階段は充分すれ
違える広さだった

妻は50万円持っていて私があと5万を立て替
えて 娘の前期学費を払いに駅前の銀行にむ
かう途中で 郵便局でたばこ会社の配当金を
現金に換えてもらうべく若い局員に順番札と
配当通知をトレイに乗せると 今までの最短
記録で処理がなされ かなり若そうなのに仕事
の早い女性局員に好意を抱きつつ 端数の
硬貨がトレイからつまめずに何だかあせあせし
てしまった 受け取った配当に数万足して建替
金と自らの小遣いを作り 久しぶりのブックオフ
で深沢七郎と後何らかを買って肩掛けカバンの
なかを探ると 別のブックオフで買った川上
未映子の対談集がいれたままになっているのに
気づいた 買うものがなくてそのまま帰るのも
無駄足のようで消極的に買った文庫本であり
今回学費を払ったから後五回払えばいいな
と妻にふりかえって同意を求めた 

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