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十三回忌

亡父の十三回忌は僧侶も呼ばず 姉夫婦も
交えて墓参りに行って済ませた 本来なら法要
をするべきなのだろうが 今どきは十三まで行く
と そうそう法要も営まないらしい ましてや
十七 三十三ともなれば おそらく母もその頃
には父のもとだろうし 代替わりしたら法要の
手筈もよく知らないし まあ 故人は心の隅に
置いておくのが一番の供養ではないかなどと
都合よく考えてみたりする

三年ぶりに姉夫婦にあった 義兄は病気をして
いると聞いたので 現れて驚いた 後期高齢者
に入っているので 仕方がないがけっこうよぼ
よぼになっていて 心臓や腎臓に病を抱えて
いる 好きだった酒も今はほぼ飲まないらしい
穏やかでいつもニコニコしている人で 会うと
なんだかこちらまでニコニコしてくるような人だ
よくお茶の水あたりを黒くて大きな昔の自転車
で流していて 二度ほど中古レコード屋や古本
屋で出くわした お互いに 仕事は? と言い合
って笑い合ったりした オーバーオールがトレ
ードマークで 風体はとても堅気には見えない

歳をとっていく と思った 幼児だった我が子ら
も改定された法律上では二人とも成年だ 今は
母も呆けずに歩けているが数年で九十になる
姉は商売をしているがここの所芳しくないようで
ここへきて家賃がかなり負担となっているよう
だ 姉は子がいないので一回り年上の義兄が
いなくなれば一人で何らかの食い扶持をもって
暮らしていく気でいるようだ 本人の年金と遺族
年金 そして家賃の負担がなければそれほど
心配はいらないのではないかと思うが 本人は
わりあい重く行く末を考えているようだ

先日も電話で話したが 帰ってくればいいじゃん
と改めて言った 住むところもあるし甥も姪も
いる 同じ屋根の下には住まないだろうが見え
る範囲に家もある 単体では貧しくなるかとして
も固まっていればいろいろ融通も効かせられる
しかしながら深くお互いにかかわらなければ
それほどの家族憎悪も生じないだろう このよう
な考えは 甘いのだろうか

ばらけるから厳しくて生きるのがつらい できる
だけ縁者が固まって融通し合えば 少しはまし
になるのではないかと牧歌的に考えているが
兄弟は他人の始まりともいうし 実際にそうして
みなければわからないこともたくさんあるのだろう
年が離れているというのもあるが それほど互い
に何かを言い合うという関係ではなかった お
互いさまで節度と距離が保てれば ある程度の
経済的やり取りもそれほど濁ったものにはなら
無いのではないかなどと今まで苦労がほぼな
かったから軽く考えているがそんな風にはいか
ない と強く警告したいという人が沢山いるかも
知れないとは思う

ぼんやりと考えながらようやく空いていた七人
の席に座って それぞれにラーメンや餃子を
注文している 土曜の昼過ぎ それほど大きくも
ない味噌ラーメンの専門チェーンは人の話声で
わんわん鳴っていた 注文を取りに来たバイト
かと思われる若い女性 マスクに隠れていない
目がすきっとしていて てきぱきと注文を取って
復唱している どこかの高校生か大学生か 仕
事がきちんとできそうだなと見ていたら 最後に
私の目を見て確認を促された それで彼女の
目を見つめてさっと会釈をし返した


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