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それで傷ついた

住む町に大規模なインターチェンジが出来て
もう数年経っている 工事の進捗を通りかかり
ながら見ていてあと二十年は無理だろうと思って
いたらいつの間にかつながっていた 反対して
いた地所の人も何かの折り合いで移ったのだ
ろう 何度も高速道路の下をくぐっていながら
いまさらそんなことを思う 大きな幹線道路が
出来ると下に通っていた道は寂しくなる そもそも
そのあたりは特段抜け道という事でもなくずっと
前から寂しかった 

そういった地勢の上に大きな高架道が何本も
入り組んだ そこへ合流するための二車線道路
も 完全に車道と分離された歩行者自転車通路
もきっぱり整備されていた あたりをでたらめに
流しているといつの間にかその道につながって
いたりするがいつ来てもほとんど往来がない
そのくせ物蔭にパトカーが隠れていたりする
平日だろうが何だろうがパトカーはふらふらして
いる自転車など黙殺しひたすら赤いネズミな
ど待っている

それなりに大きな川と土手があり鉄道橋と高架
の高速道 そこにつながっていく合流 鉄路の
下をくぐるトンネル それからアンダーパス 気が
つくとこの辺りはどこもかしこも橋の下というか
軒先のようなものだ コンクリートの構造物は縦と
横を直交させ その隙間から切り取られて空が
狭まる 大きく影が地面にかかりしばらく行くと
くっきりと光が降りる 細くて四角く通されるトン
ネルの向こうは光のある茂みになっている 鉄橋
が入り組んで 逆光にくじ引きのようになる
そんな角張った入れ組みのこのあたりをひとり
で流すのが好きだ いつ来てもどこがどうつながる
のか覚えられないところもいい むしろわざと
覚えない 町工場や資材置き場が建売地のあ
ちこちに点在し 二色のパネルで一階と二階
が張り分けられた新しい住宅に名前の知らない
花びらの薄い一重の花がひと塊咲いている

町へ向かう方を反対に行けば土手か線路の下
に出る 線路の下には大きな川につながる町
からの川が何本もの橋を渡して流れている
橋や土手を切り開いているトンネルで区切られ
いるのはつまり窓からの眺めという事で何かが
開けているよりも区切られた中を覗くのがこの
ような界隈でのあり方なのだと柔らかく思った
直線や曲線の整形された線はつまり人工物な
のだ書いた人があってそれを読んでから放置
された茂みなどを眺めているとなぜか空恐ろし
くなる感覚がある と同時に時折その感覚を
狂おしく欲しもする

何も起こらない それを掘り起こして書く 私には
私の悩みも悲しみも喜びもあるけれどそれをこ
とさら書くことはしない 日々は出来事の連続で
雨が降り雨が止む その雨上がりとしての河川
の草束の浮かんだ淀み 水門が閉じているか
ら今日は流れが緩やかだ この間 素直に川
をさかのぼればやや広く川が湾曲している浅い
流れに出ることがわかって そこは以前音を立
てて水が激しく流れていたが大きな亀が浮か
んでいた その橋からやや東京から遠ざかり
路線と並行が近くなる細い道を通ったことがな
かった もう一つの橋があり 流れが分岐して
いるのがわかって 鉄橋と蔓草が水辺を四角く
区切っている浅瀬に青鷺がいるのを見つけた

君がそこにいるのを驚いて それで傷ついた
痒みもあった などとふといたずらを思ったが
何枚か写真を撮って もう老眼でビューモニター
なんてほとんど見えていない それでも貨物列車
の通過と鷺とを一緒におさめようとしてズーム
をいじったら行ってしまった 今時分の光は目に
熱くはないが痛い感じがすると思った すぐに
何かが細かく瞼に飛び込んでくるような そもそ
も埃っぽいところだけれど草が伸び放題になって
少し緩和されているような気がする

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