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よるのせいかつ

夜の生活がない もう何年も あの夜の生活の
淫靡さ とか言いながら閨房での秘事について
事細かに語り始める というのもあるだろうが
ではなくて 夜の町の 薄暗い場所での陰事
というほど淫靡でもなく まあ 付き合いで行っ
た二次会のスナックとかクラブとか そんな手の
話なのだけれど

私のいたところは時代遅れなのか 営業という
職種柄なのか よく取引先との会食があって コ
ロナ以降 飲み会を会食というのね まあつまり
飲み会ですよ 幸い 時代もあってか飲みしろ
は経費か上司の負担だったので さんざんタダ
酒にありつけた というのは多分酒好きの人の
話で 下戸の私からすれば夜の付き合いという
のはまあ軽度の地獄で ビールの苦さと煙草
くささの 夜の数時間の苦痛 しかしながら遥か
に遠ざかってみるとやや懐かしく思わないわけ
でもない 辛い思いをしたのに何となく懐かしい
事と 二度と思い出したくもない事があるのは
やはりその辛い事の中に少しでも快が含まれる
かどうかなのだろうか 特に飲酒や酒場での
女性との会話に快を感じたという記憶もないの

二軒目 三軒目 私に拒否権はない 仲間内
という事ではないのでどこかで正気を保ってい
なければならない 私の場合 記憶が飲酒に
より飛ぶ というところまで行く前に気分が悪く
なり頭痛がしてくるので やや霞がかった意識
のなかでも記憶や思考は割合クリアで ともすれ
ば素面の時よりましかもしれない そんな中
色々な酔っぱらいを相手にして おもねりはしな
いけれど失礼にもならない そのようなスタンス
で酒席を務めた 私は おべっかやおじょうずを
言うというのが人間で一番恥ずべきことだと若い
ころ思っていたが 年を取るにつれ その人物の
長所を少し誇張して言うという事は覚えた 特に
大袈裟には騒がない しかし本心から言う そ
れは本心なのでおじょうずにはならないという
ロジックだ

内部は見えない 少し重めの 雑居ビルのドア
の内部には実に様々な空間が広がって また
は狭まっていた 明るさも空気の淀みもまちまち
で 視覚的早い時間に訪れることが多かった
ので 口きりの客という事も多く しかしながら
私たちのグループは比較的にきれいな飲み方
の方だったのではないかと主観的には思う
しかし 店側からすれば多少汚くても沢山ボトル
を入れたりした方が上客という事なのだろうか
側につく女性 いわゆる夜の女性からすれば
多分紳士的な態度だったのではないか それが
いいのかどうか相手の内心は知れない

どこの箱にも必ずカラオケがある 薄暗く落とし
た照明の中で 時には色のついた光のライト
または小さなミラーボール それらの明滅が
酔いを攻めてくるように視覚に乱れ 眞露など
舐めながら店の女性とかんぱーい などとかちん
とやって 手渡される選曲のタブレット様の機器
に顔だけ薄青く浮かび上がらせ 間違っても
ピーモデルの 美術館であった人だろ など
選曲せずに 若くも古くもなりすぎない無難な
曲 例えば松山千春の大地がどうした みたいな
曲をリバーブに溢れたぼやけた歌声で歌わされ
たりしていたりする 誰も聞いてなぞいないもの
の間奏には奇声を上げ 終曲には打ち慣れて
店内に大きく響く拍手などする 子供の参観
で拍手が大きいと妻に叱られたりしていた

ボンゴやコンガなど おいてあればしめたものだ
興に乗って乱れ叩いたりする タンバリンやマラ
カス 本格仕込みの奏法で 無暗にリズミング
良く刻んだりする コンガのへりを親指を立て
気味にこすってフクロウのような音を出すと受け
た それはタンバリンのへりでしゃららららと連続
音を出す手法と原理は同じだ なんだかんだで
ノリノリで思い出し書きしている 隣に座る女性に
ついて書こうと思ったが集中力が切れてきた

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