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二度水

先週は二回も水場に行ってしまった 夏風邪
がほぼ回復し一週置いての出動を月曜にして
その結果が不本意だったために金曜にさらに
出撃を追加したという訳の

久しぶりに炎天の中東京から埼玉へつながる
大通りを流すと刈り取られたすかすかの竹藪は
すっかり細い青竹を繫茂させて土手の下を隠す
ほどの葉の茂りよう しかしここは土手下の道
があってそちらから中をうかがうことはできる
が フェンスがあって立ち入れない いずれ青竹
は釣り竿には向かないしそこは藪蚊の王国だろ
うから当分は用もない 

蝉がなき始めている 夏の走りはむかしなら
ニイニイゼミだったのだろう 今はあの小ぶり
なの見ない 鳴く声も忘れたと思ったら名の
通りにいにいか どうだっけか 鳴き声はあちこち
から飛んでくる連続音でこういうの現代音楽で
クラスターというのではなかったかなどと思い
浮かべる そういう名のバンドの音楽の事だっ
たろうか 暑くて朦朧

水路は広場から水が流れ込むようになってい
るがなんと水を止めて工事作業 しかも水道
にホースが繋がれ水使用不可 それで 上に
向いた水飲み口から水を噴射してバケツに汲ん
で しばらくじりじりと釣り竿を垂れていたが芳し
い成果もなく 次のポイントへと移動

いつもなら何人かいる釣り人が今日は一人 流
れから突き当たる池の方で再び釣り開始 日陰
が無くて髪が焦げそうだ しばらくして奇跡のタナゴ
が一尾釣れたがバケツの中で弱ってしまった
雌で お腹に卵を抱いていたのかもしれない
池にかえすとうごかずにそのまま沈んでいった
水筒の残りの冷水を飲んだのがまずかったのか
葛飾橋の途中で肩の力が抜けてしまって自転車
のハンドルを握れなくなってきた 軽い熱中症
状今期二回目 

改めて金曜日 地球が一番暑いの三日目 今回
は覚悟と準備で タオルを何枚も用意して 水場
で水をかぶろうと思っていた 水飲み場の水だけ
れど 広場のヘリを通っている水路はかいぼり
というのか 水を抜いて底の泥を乾かし中 流れ
込みがないために水は真緑に濁り 泥と藻が
水の中に煙のように立ち込めて ぬるま湯の
なか 魚も少ない 今はクチボソが婚姻期で深
紫の魚体に一枚一枚の鱗の縁取りが色濃く出
ている 祖母と男児の組み合わせでこちらに近
づいてくる子の方が くわがた と叫んで祖母を
呼んでいる どこかで飼われていたくわがたの
番の死骸が捨てられているのは目ざとく発見して
その妙に艶のある黒い甲は多分外来の物だと
確認していた 子は 死んでるー と祖母に告
げ 祖母は 死んでるんじゃほっときな と返す
近くを通る時に軽く会釈を交わして 暑いから
捕れないですね というとあら 小さいの捕ってる
のね と壜をのぞいた 子は ざりがにとった
と話しかけて来て このあたりにはざりはいない
んだよなと内心思ったが言わなかった

六時過ぎまで残業を粘ったものの今日も空振り
夏の間は厳しそうだと見通すも多分また来週
来ずにいられないだろうと思う その位しか
することがない 蓮田の花は夕方には閉じて
終わりの花は四方八方に花びらがやけになって
いた 近所の坂道で妻の服を着た大学帰りの
娘に追いつき ヘイ グール と声をかけた
時間を合わせた

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