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師走河川沿酔狂輪行

久々に起き抜け体調もいい 晴れている
真冬 暮れ 日曜 昼食後に自転車に乗ろう
と言うわけで 日曜の昼下がり 国道から
川へと下り 国府台の坂を上って帰宅する
いつものコースの輪行へ出た とはいえ
いつもと言うには年に数度の事であり
それをいつもと言っていいのか 電動の
電池残高は40%である 一応替えのバッテリー
を籠に積んで よろよろと自宅を出る

国道の県道交差地点に出る前に富士山が
うっすらと見えた ここは富士見の高台なのだが
昼間にかなり大きく見えるのは珍しい
恐らく強い風のせいだろう 富士山のふもとで
カメラを望遠にして山頂のあたりを見たこと
があるが 麓は無風でも山頂は凄い風で
雪が吹き飛ばされていた こちらが
強風でもあちらの風速はわからない 距離と
はそういうものなんだと思う

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今回 一つには写真のストックがなくなって
きたため さびしい水辺の荒涼とした風情を
撮りに行きたいと思ったこと もう一つは
川が二本流れているが そこにひょっとしたら
淡水魚の中で最も美しいかもしれないオイカワ
の情報が得られないかと言う事 その二つの
目的をもってサドルを跨いだが やはり強風の
寒気に打って出るためには何らかの動機が
要る 真夏にも行ったのでその対としての意味
もある

今日は10度を下回る寒い日で 風も強く体感
では雪のない吹雪のようだ 首からカメラと
熱い紅茶の入ったポットを入れた小さな肩掛け
をぶら下げている マフラーをしていると体は
それほどは冷えない もう20年近く同じマフラー
をしている

坂を下って高架下を曲がる 裏道になっている
静かな道の 住宅の切れ目から 葱畑の広がる
広っぱに出る この畑を区切る細い水路が
交錯し そのおおもとは江戸川につながる坂川
と言う川となる 向こうには高校ではなくなった
支援学校の校舎がポツンとある 高圧電線
の鉄塔が似たような間隔でそびえている

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むしろオイカワは坂川にいる と言う情報を
頼りに きちんと護岸されていながら落ちれば
かなり危険だというすり鉢状の川岸を伝い
遊歩道を進んでいく 紺に近い水は波立ち
耳には風の吹き抜ける音が響く さすがに
釣り人が一人もいない

千切れ雲が多く出ていて流れるために 空は
照ったり曇ったりしている 照れば水面は波を
光らせ 曇ると紺色に皺だっている 生き物の
気配はいずれにせよない 勝手に設えられた
鉄製の釣り座にも ただ波が打ち付けている
以前 おしぼりの保温庫が捨てられていたが
今回は折り畳みの骨格のようなベッドが 白い
絹のような光沢のある生地に金の刺繡が草の
模様に施された 布団袋かと思われるものに
くるまれて捨てられていた お骨を入れる布
みたいに見えた

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この葱畑を挟んで 鉄橋が二本渡る 常磐線
 北総線 そして 水門を超えると大学が二つ 
線路がまた二本 京成線 総武線 どれもが
すこしずつ方向を違えて下町に上る さらに
河口へ下っていけば 可動堰と東西線
さらに下れば東京湾 海までは15キロほどだが
バッテリーが切れてしまう 予備と合わせても
切れてしまう

夏に来た時に水がいっぱいであふれそう
だった水路は すっかり水を止められて うすく
張った水面からすぐ水の底が見て通せた
土底が波の形にうねっていて生き物は
確認できなかった とその時 青い鳥が目の
前を横切り 少し離れた水際に止まった
カワセミだと知っていたので 音をたてないよう
にカメラの電源を入れて よく確認もできない
まま そのあたりにレンズを向けて撮った
うまく写っているといいと思う

そういえば 今日 水晶をもって出ようと
思っていた 水晶を冬の陽にかざして
何か面白く写真が撮れないかと思ったのだ
しかし それは人に見せようと思ったからで
自分が面白いと思う気もちがそれほど強くは
なかったので忘れた 土手に上がる途中で
忘れたことを思いだした

土手からはスカイツリーと富士山がみえた
スカイツリーははっきり近くに 富士山は
かすかに遠く 川の向こうから吹いてくる向かい
風に手指が凍え切っている ミルクティーの
入ったポットを思い出し ゆっくりと口をひねる
唇に触れた中身の熱さに不意を突かれて
舌の先をやけどした  つい一時間前に沸騰して
いた湯で入れた茶だった
水門のところから水辺を見下ろすと枯れた
葦の向こうで揺れる影が見えた 逆光に
光る枯草色に人の影があるのがわかった

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自転車が籠の重さで自然に回転するのを
おっかなびっくり抑えながら 自転車を
降りて 土手を下る 転落防止の柵と葦の
間の細い隙間を小走りに近づいていく

二人の老人が何かしゃべっている 一人は
竿を出し 一人は見物のようだった その話が
途切れるのを待って声をかけた
 へらをやられているんですか
 いや へらも何も この寒さじゃつれないよね
と返ってきた 
 江戸川でもオイカワが釣れるって聞いて 釣れる
ところ探してるんです
 ああ オイカワ 釣れるよ ヘラの外道でたまに
釣れる
 あ やっぱりいるんですね
 でも この寒さだから 今は時期じゃないよね
 今日は釣れました?
   いや といって竿を上げた                                                                         二股の昔ながらの
ヘラブナ仕掛けだ 目盛りのような浮子先で
風の中 アタリをとるのだ
  オイカワならもっと先の 里見公園の下あたりが
いいよ
  あの辺 ハスもいますよね
  ああ あの肉食のやつね 小さいサイズが
群れてるけど今じゃないね
  やっぱり 春過ぎ 夏前位ですか
  そうだね
  今は水元でタナゴやったりしてるんですけど
  釣れる?
  いや 全然 釣れるところがあるみたいなんで
すけど 場所が秘密になってるみたいで
  私はね 千葉ニュータウンの方で 昔やって
たんですよ                                                                                                      ともう一人の老人が話に加わる
  誰か 繁殖させてる人が放流してたみたい
  だけど 地震からは釣れなくなっちゃった
  カネヒラなんかもつれたけどね
  え カネヒラですか
  そう 今はやめちゃった
あっちの方は印旛沼の水系だ このあたりの
汽水とは違う しかし オイカワは塩水が
混ざっても平気なのかと思った
  ま 春過ぎだよね
  春より後ですね
といって彼らと離れた

今日はバッテリー残量が少ないので里見公園の
坂から県道一号線に入るかとも思ったが なんと
なくその先の自動車進入禁止通路に自転車を
進ませた 
夏はもっさりと通路に緑が垂れこめていたが
葉が落ちてすっかり骨と痩せこけていた
途中で猫二匹とすれ違う
茶とらとしろサバ模様の決して太ってはいない猫
水辺には猫がいるなと思う この時期は釣れた
魚の分け前もないだろうに続いて堂々と歩いて
いた

土手を国府台の坂下で降りて ここからは県道
一号線で帰る バッテリ残量は10%を切っている
県道を挟んで女子大と商科大が向かい合う
女子大の方に高い壁があって ベルリンの壁
と呼ばれている 本家はとっくに崩壊したのに
市川の坂にはまだ厳然とある

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坂を上り切って里見公園の入り口のところで
電池残量が0%になった しかし 表示がふっつり
消えるわけではない そのまま消えるまで走る
事にした 
この道は以前は京葉道路へ向かう大型車で
いつも渋滞していたが 手前にインターが出来た
せいか 日曜年の瀬のせいか 特段渋滞は
なかった
道は矢切方面に向かいゆるやかに下り また
上る そこに新しい高速道路をつなぐ道が
できた 車で通行した時は昔のバス通りが完全
にずたずたにされていたので どのように通って
いるのかよく理解できなかった
ここの帰り道においては 県道を切断する
だけだったがやたらに信号が長く 冷たい風を
受けた手と頭がかじかんで締め付けられた

自転車はゼロのまま快調に踏み込みを
アシストする 進んでいる以上残量は完全に
0とはならないのかもしれない
帰りに無人販売所で餃子を買おうと思ったが
恐らく一万円だとおつりがないなと 失敗の
気持ちで県道を渡った



家で写真を整理すると 確かにカワセミが写っていた

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ここから一カ月過ぎましたが 米国株式相場が大荒れで年初からとんでもない金額を減らしとりますわい 株ツライ

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