衝動と竹

雨からの薄曇り　ベランダにかかり気味の桜の
葉っぱ　水濡れ　葉が埃や土　細かいごみを
表面から排除する仕組みはどうなっているのだ
ろう　今日は通院日　前日夜遅くまで人に言えな
いサイトを覗いていて目が冴えてしまい寝不足
だ　通院で無駄に気を張っているというのもある
たかだか通院でですよ

自転車で駅へ行く途中　黄色いワーゲンに幅
寄せされて殺意が湧いた　交差点でやられて
次の信号待ちで追いついた　運転席を見たら
ハンドルにしがみつくようにまっすぐ前を向いた
中年女だった　運転と言うのはルーム　サイド
のミラーに常に気を配りながら前方に進むとい
う多タスクだが　それができるような顔に見え
ない　とても純粋で　研ぎ澄まされた加害衝動
が脳天を貫く　恨みとか疎外からくる熟成された
怒りとは全く別物　もっと本能的で極めて強力
な衝動　もちろん無理やり抑え込む　人生を
棒に振るから

医者では　身体のかゆみがもしや糖尿からくる
物ではないかと言う自説を披露　のどは乾くし
身体は痒い　まだ痩せていないだけましでしょう
か　というと　痩せたら末期よ　と言われ背筋が
凍る　検診受けたら　とのこと　もう五年ちかく
受けていない

で　床屋　三月に一度　たいてい通院とともに
に済ませる　前回と同じ人だ　髭剃りが丁寧だ
が　８２分けにしたがる中年女性の理髪師　頭
髪をなすがままにされていると　静かな店内に
人生相談のラジオが流れる　３６歳の息子と
嫁　別れさせたいという母親　嫁から何か言わ
れて　こんな女と息子が一緒になのは許せな
いという相談　回答者にこてんぱんに人格否定
される相談者　あなたが気が付いていないだけ
でお嫁さんに相当ひどいことをきっとしている
自分の常識にとらわれて周りが見えてない　あ
なたはきっとそういう人　そう断言されて電話
口の向こうで泣き出す相談者　髪を切る鋏の
音ともに鳴り響くラジオの声　散髪してもらいな
がら内心で苦くおお笑い

本日のブックオフハンティングでは　なんとなく
吉田拓郎の本なんて買ってしまった　私にとっ
ては全くなじみのないアーチストなのだが　あれ
だけ人気があったからには何か秘密があるだろ
うという興味で　他に　対談でアグレッシヴに
車谷長吉を攻めていた玄侑宗久の対談集と
川上弘美の日記　娘が川上弘美を読み始めた
ので　読み終わったらおさがりにしようと

坂の下のカーブから　坂の途中を見上げたら
はげ山にされていた高台の山肌に　まばらに
新しい竹が生え始めていた　あれは孟宗竹と
言う奴だろうか　竹の和竿に使えない竹　また
糠雨が降り出してきてただでさえ薄緑の若竹
が淡い　衝動などとっくに消え去っている　その
代わり腹が凄く減っている