ゲーム紹介 ユニコーンオーバーロード
最初に
絶滅しそうでしないゲームジャンル、シミュレーションRPG。
もはや進化も止まって細々とファイアーエムブレム(FE)シリーズのみが灯を掲げてきたこのジャンルに、ついに歴史にその名を刻まれるべき作品が現れた。
今回の記事ではヴァニラウェアが開発し、2024年3月8日に発売となったSRPG「ユニコーンオーバーロード」を取り上げる。
ストーリーのネタバレはアマゾンの商品紹介に書いてある以上のことは触れない。つまりほぼない。ただし、どういう傾向の話なのかは説明する。
システムについては書いていくので、完全にまっさらな状態でこのゲームをプレイしたいのなら、以下は回避推奨。
私はこのゲームを起動してタイトル画面が表示されカーソルをかつかつと数回動かした瞬間に、良作以上の完成度だと確信した。
カーソル移動の操作感、効果音、ともに心地よい。こういう基礎がしっかりできているゲームにハズレはない。
とりあえずの結論
結論から先に言うとSRPG好きなら買って間違いなく損はしない、完成度の高い名作だ。
プレイ時間は60時間。ステージ敗北でやり直しなどなかったのでほぼ実プレイ時間。
そのうえであとは好みの問題。
システム
ゲームシステムはRTS。
敵部隊と接触すると戦闘画面に切り替わる。
戦闘は自動で処理され、戦闘結果で与ダメージが低かった方の部隊が弾き飛ばされてウエイト状態になり……
……まんま「伝説のオウガバトル」だ。
オウガ知らんSRPGプレイヤーなんていねえよな? えっ30年前だと!
公式サイトには「1990年代の名作シミュレーションRPGが持つ重厚な雰囲気や戦術性を継承しながら~」とあり、さすがに具体的なタイトル名こそ明記していないものの、製作者もオウガを意識しているのは明らかだ。
オウガをSRPGの金字塔たらしめているのは、プレイヤーのすべての行動が画面右の一本のゲージに集約されるカオスフレームにあったわけだが、ユニコーンオーバーロードにはそういうシステムはない。
もっとミクロな戦術レベルの駆け引きがゲームの主眼に据えられている。
申し訳ない、オウガを知らない方には通じない話しが続いてしまった。とにかくRTSベースのファンタジーSRPGだよということ。
部隊編成と作戦設定
ユニコーンオーバーロードのミソは部隊編成にある。
ひとつの部隊は5ユニットで構成されており、数多くのクラスの中から相性や戦術を工夫して組み合せを試すのがまず非常に楽しい。
しかも、ゲーム開始当初は1部隊あたり2ユニットからはじまって徐々に拡張されていく方式なので、膨大な組み合わせを前にどうしたらいいかわからないなんてこともない。
盾役と攻撃役のシンプルな編成からスタートし、そこに回復を足して補助を足してといった感じで自然にゲームに慣れていけるし、解放で部隊の戦闘力が大幅に強化されるのが待ち遠しく、ついついもう1つ、もう1つとステージをおかわりしてしまう。
そしてさらに。
個々のユニットには作戦と称してスキルの発動順と条件設定が可能だ。
いま、カルネージハートとかガンビットとかが脳裏をよぎったかもしれないが、そこまで複雑ではない。
画像で見てもらうのが一番早い。
設定なしの状態だと正面の敵にひたすら技をぶっぱするだけだ。
これだけでもちゃんとゲームを進められるのが本作の偉大なところだが、ひと手間、ほんの10秒かけて、魔法に重装を狙わせようとか、弓兵に飛行を狙わせようとか設定するだけで戦闘が劇的に有利になる。
そうするともっと工夫できるんじゃないかと欲がでてあれこれ試すうちにまたどんどんゲームが進んでしまう。
この、プレイヤーがやったことがゲーム内に明確に反映されてキャラクターの動きが変化して有利になっていくサイクルがとっても気持ちいい。
適当にやる人でも適当にやった分だけ有利になるし、こだわり派は接敵直前に相手の編成を確認して都度作戦を変更してもいい。
とにかくプレイヤーの行動を無駄にさせない、本作の哲学はここにある。
ステージ攻略
ゲーム進行はこれまたSRPGにありがちなステージクリア方式だ。
古のSRPGは、爪に火を点すようにせこせこリソースを節約しつつ限界まで経験値を稼ぎ、やっとクリアしたら即次のしんどいステージがやってくる……。
そういうイメージを抱いている人も多いのではないか。
ここでもユニコーンオーバーロードは工夫を凝らしている。
ゲームの舞台となる大陸を探索収集する要素があるのだ。
街を復興するための素材を収集したり、武具を発見したりといったもので、この要素がステージの合間の息抜きにちょうどよい。
ただ、このあたりは本作に限らずFE風花やエンゲージも同様であり近年の傾向を素直に踏襲したとも言える。
また、ステージにしても基本的な攻略順は決まっているものの、常に複数の攻略先が提示されていて、街ひとつ解放するだけの小さなステージと侵攻ルートをしっかり考えなければならない大き目のステージがほどよく緩急をつけて登場する。
これらを自分でマップ探索して発見し、選択して攻略していくので、やらされている感がない。
ストーリー
ストーリーはSRPGではオーソドックスな戦記物となっている。
内容はかなり王道ファンタジー寄り。善悪二元論の世界だ。
対立する陣営それぞれが己の信じる正義を掲げ貫かんとするが故に戦いが避けられない……個々のエピソードレベルではなくもないが、基本的にはそういうものではない。
戦記物のストーリーに、王道と覇道、崇高な理想と厳しい現実の狭間で懊悩する若き王子といった描写を期待する人は肩すかしを食らってしまいそうだ。
キャラクター
固有キャラクターは60名以上(公式サイトによる)。
ヴァニラ謹製のシコい女子と渋いおっさんがこれでもかと大量投入されている。
キャラクターには相互に好感度が設定されており、高めていくと会話が発生する組み合わせも大量にある。
そしてヴァニラと言えば飯。
リンゴをもぐもぐお上品に頬張るグラドリエルからの伝統。
今回の飯要素は宴会システムで、部下を強制的に宴会に参加させる飲みハラアレイン王子と化し、好感度を稼げまくれる。
よってユニット同士の好感度を稼ぎたいから仕方なくシナジーのない組み合わせでも部隊に配置するといった配慮はまったく必要ない。飲みニケーションでみんな仲良し。これが令和のSRPGスタイルだ。
固有キャラクター以外にも汎用ユニットが雇用できるうえ、キャラメイクも可能。
カラーリングやボイスタイプを決められるだけでなく、成長タイプまで設定可能なので、固有ユニットとは異なる能力傾向のユニットを自作できる。
さらにキャラリメイクの消費アイテムを使えば固有キャラのリメイクまでやれてしまう。
音楽と効果音
BGMはちゃんと良い。ただし、サントラが欲しいとかゲームを離れたときまで聞きたいと思わせるほどではない。
効果音は非常に良い。私は金と手間をちゃんとかけたゲームは効果音でわかると考えている。
戦闘時のガツッという、長剣を木製の盾で受け止めたようなSEなど、戦闘の臨場感や操作の心地よさを底上げする素晴らしい効果音となっている。
難易度
ゲーム開始時点ではカジュアル、ノーマル、ハード、エキスパートの4段階から選択可能で、ゲーム中にいつでも変更可能。
そしてノーマルだと相当ぬるい。
ぬるゲー大好きの私でさえ歯応えがなく失敗したと感じたので、SRPGかRTSジャンルのゲームをひとつでも最後までプレイしたことがあるなら、ハード以上の難易度を強くお勧めする。
後からこの記事を書くために調べてわかったことだが、どうも体験版のカジュアルが製品版のノーマルに相当しているらしい。
途中で難易度変更しようと何度も思ったが、ハードに変更したとしても、結局それは「途中までノーマルで進めたハード」にしかならないわけで、ノーマルで通した。
こんな人におすすめ
・久しぶりにSRPGをじっくり遊びたい。
・王道ファンタジー戦記RPGの雰囲気にどっぷり浸りたい。
・伝説のオウガバトルの戦闘システムが好き。
・ヴァニラウェアゲームのファン。
おすすめできない人
プレイ時間が30時間以下でないと最後まで遊べない人。おそらく普通にプレイしたらまず50以上はかかる。イメージとしてはフルプライスのRPG1本分。
SRPGに周回プレイやリセット厳選を求めている人には物足りないだろう。そういう要素を意図的に排していると思われる。個人的にはやりこみ周回ってゲーム側でやらせるものではなくプレイヤーが自発的にするものだと思っているが。
重厚なストーリーを期待している人。あとは昔のラングリッサーとかでたまにあった敵味方の軍師が戦略をバチバチ戦わせるような展開もない。敵国は主人公から領土を切り取られるままで、本気をだして逆侵攻してくるとかもない。
まとめ
これまでのSRPGの良い部分を引き継ぎつつ、部隊編成と作戦の楽しさをとことんまで追求した意欲作。
プレイに没入させる細やかな気配りがゲーム全体に行き届いており、特にゲーム開始から15時間くらいまでは本当に止め時を見失ってしまう。
SRPGはめんどくさくなって途中で投げ出してしまう人も多いのではないかと思うがプレイを最後まで牽引させるパワーを持っている。
システムはもう本作で完成の域に達している。是非続編を製作してほしい。
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