カオヤイ国立公園で睨めっこ
最近、旅行をしてないなぁ。旅行をすると俗語でセロトニン、一般的には旅汁と呼ばれる脳内麻薬が多量に分泌され、心身ともに毛持ち良いらしい。私の唯一の友人である印田熱斗君が、そう教えてくれた。
しばらくの間、旅に出る予定もないので、今年3月の旅を振り返り、旅気分を味わうとしよう。また、本文がこれからカオヤイ旅行に出向く諸君のお役に立てば何よりである。
ビザ更新のため、バンコク北部にある移民局に出向く必要があった。ビザ更新の後、さらに北上して旅行でもするかと企て、バンコクから車で3時間ほどのカオヤイ国立公園に出向くこととした。世界自然遺産に登録されている自然保護区だ。象や虎、人が生息していることで有名である。
カオヤイには2回目の訪問である。前回と同じく、公園の南ゲートから入園し南北を貫く有料道路を北上し、北ゲートを抜けてから公園近郊のリゾートで1泊するプランである。
その日は平日だったので車やバイクが少なく、絶好のジャングルドライブ日和であった。のだが、全くもって気持ちが高揚しない。理由は考えるまでもなく明白だった。
昨年の東北旅行で、東北の名だたるチョメチョメラインをのんびりドライブして昇天したばかりなので、カオヤイドライブではいろいろと物足りないのだ。カオヤイでは山の標高が足りない、強風が足りない、湖が足りない、荒地が足りない、蕎麦屋が足りない。
もちろん、カオヤイ国立公園の良さも知っている。運が良ければ全裸の象に出くわし、さらに運が良ければ象に車を破壊してもらえる。
しかし、道中象に出くわすことは叶わなかった。
「鼻が長い動物の中で、一番好きな動物は何ですか。」
と聞かれれば、
「う〜ん、そうですね〜、象かな。」
と即答するほどの象好きの私にとって、全くもって残念な結末であった。
リゾートにチェックイン後、飯を喰いビールを飲みさっさと寝て、翌日牧場でソフトクリームを食べさっさとバンコクに戻るカオヤイ詣であった。
全力で旅汁を出したと思えるようなカオヤイ旅行ではなかったが、ふと、公園の南ゲート料金所に差し掛かったときのことを思い出した。不意に、中年男性公園スタッフが10秒ほど私の顔を舐め回すように見てきたのだ。
「何かな。タイに不法滞在していることがバレたかな。」
こんなことを思っていたら、彼は口を開いた。
「あんた、外国人だね。外国人の入園料を払いな。」
そうだった、忘れていた。タイの国公立公園はほとんどが二重価格設定だったのだ。かのスタッフはタイ人なのか外国人なのか、舐め回すことで正しい見極めをした。
外国人観光客は通常、公園の維持管理費に寄与しない非納税者なので仕方がない。タイ人より数倍高い入園料を支払い、中年男性スタッフとの睨めっこを終えた。
最近、日本で二重価格設定の論議があるようだが、さっさと実行に移して、外国人から高い料金を徴収すべきと思う。チケット売り場や料金所のスタッフは国際交流として、観光客と睨み合う関係でいて欲しい。