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杉並区住民、住民意見を無視した東京都市計画案に反対、環境保護と迅速な水害対策の両立を求める

善福寺川緑地緑の会、せきれい橋住民、関根文化公園住民、原寺分橋住民及び西荻・善福寺の環境を守る会は、 環境保護と迅速な水害対策の両立及び都市計画の適正な手続を求める立場から、東京都が提示した東京都市計画河川第 8 号善福寺川の変更案につき、 住民意見を無視して違法に作成された現行案を撤回し、住民との対話に基づき新たな素案を作成することを求めます。

善福寺川沿いの豊かな自然と人々の暮らしが今、 存続の危機に瀕しています。 杉並区民にとって掛け替えのない場所が、東京都が拙速かつ強引に進める過剰工事により、 破壊されようとしています。私達は、計画内容と手続の両方に大きな問題があると考えています。

計画内容の問題点 ~環境を破壊し、喫緊の水害対策ともならない長大な工事~

東京都は、50mm/hを超える降水の発生回数が増えていること、善福寺川では氾濫による浸水被害が歴史的に多く、様々な治水工事を経ても上流域では未だ溢水が散発すること等を理由に、1,000億円以上掛けて、善福寺川上流に巨大な地下トンネル式調節池を作ろうとしています。この工事に伴い、地上接続部に当たる善福寺川緑地(ロケット公園/センター広場)、関根文化公園、原寺分橋付近の3カ所が破壊されます。

ロケット公園は、善福寺川緑地内でも象徴的な場所で、多くの遊具に加え、プラタナスの大木が何本も聳え立ち、真夏の炎天下でも小さな子供達が遊び過ごすことのできる特別な空間として、センター広場は、毎朝100名を超える人々がラジオ体操に励み、子供達がサッカーやバスケットボールを楽しむことができる貴重な広場として、多くの区民に親しまれています。また、関根文化公園は、近年近隣2つの児童館がなくなった影響で地域の遊び場が少ないなか、地域の子供達が集まる貴重な居場所となっています。

このように地域住民にとって大事な場所であるにも関わらず、この工事が始まれば、10年超に亘って公園は閉鎖され、多くの木が切り倒され、大量の土砂が運び出され続けることとなります。また、完成後は、公園の大部分は潰され、巨大な取水管理施設が建てられ、景観は一変してしまいます。更に、原寺分橋付近では、20軒以上の住宅が立ち退きにより暮らしを奪われます。また、この地域には都内随一の貴重な天然の湧水があり、工事により消失の危機に面しています。工事期間中は、騒音、振動、多数の工事用車両による交通渋滞等の悪影響も予想されます。

私達自身、善福寺川流域の住民であり、大雨のたびに河川ライブを注視し、氾濫アラートに怯え、氾濫被害に心を痛めており、治水の重要性は痛感しています。巨大な地下トンネル式調節池の建設は単純明快な対策であり、抽象的にはそのメリットは理解できます。しかし、私達にとっては、デメリットの方が遥かに大きいのです。また、この工事は完成までに10年超を要する見通しであり、喫緊の課題である水害対策において最善の解決策となっていません。

善福寺川は歴史的に水害の多い河川であり、2005年9月の豪雨では氾濫により約1,600軒の家屋が浸水しました。一方、こうした水害を受けて、下流域を中心とした護岸や調節池の整備に加え、杉並区内の新築マンション等における雨水貯留施設の設置義務化等の流域対策が行われてきました。中流域の成田東地域においては、プラウドシティ阿佐ヶ谷における地下貯留槽や溢水常習箇所における下水パイパス管の設置等が奏功し、水害が軽減したことが知られています。このように上~中流域においても、少しずつ着実に治水能力は向上しています。今年6月の豪雨でも中流域の一部地域で溢水が生じましたが、浸水家屋は10軒未満に留まりました。これまで積み重ねた水害対策の効果を鑑みれば、東京都が計画する地下トンネル式調節池は、あまりに突然打ち出された長大な工事であり、本来行うべきは、迅速に実施可能な小規模対策を上流域でも更に積み重ねることで、治水能力を一層引き上げることと考えます。

例えば、グリーンインフラの活用や武蔵野市における排水区見直し等による善福寺川への流入水の低減、上流域における掘込式の調節池(cf.和田堀第六調節池)や地下箱式の調節池(cf.善福寺川調節池)の建設等が考えられます。こうした工事であれば、過去実績に照らし、5年以内に完成可能と考えます。纏まった広さの好適地は限られますが、1,000億円以上という莫大な予算を再配分すれば、民間からの用地取得も十分可能なはずです。

なお、上記提案は、2020年7月に答申が取り纏められた国土交通省「気候変動を踏まえた水害対策のあり方について」にも従ったものです。同答申では、「降雨が河川に流出し、さらに河川から氾濫する、という水の流れを一つのシステムとして捉えられるよう、集水域と河川、氾濫域を含む流域全体で、かつ、これまで関わってこなかった流域の関係者まで含め流域全員参加で被害を軽減させていくことが必要」とし、流域全体で行う総合的かつ多層的な水災害対策として「流域治水」という考え方を提唱しています。河川地区における巨大工事に拘泥し、豊かな自然と人々の暮らしを壊そうとする東京都の計画は、時代錯誤なものと言わざるを得ません。

手続の問題点 ~住民意見を無視して強引に策定された違法な都市計画~

これほど大規模な計画であれば、地域住民に対する十分な説明と対話を経て実施されるべきですが、東京都は、長年に亘り地域住民に対するヒアリングを一切行わないまま、秘密裏にこの計画を進めてきました。入札情報を調べたところ、下記の通り7年以上前から10億円以上の公費を掛けて、着々と準備が進められていたことが分かりました。

一方で、一部の地域住人がこの都市計画の変更を認識したのは、今年8月23日~27日に行われた「都市計画変更素案説明会」が初めてのことです。素案説明会の告知チラシは、工事対象地域近傍の住民に対し合計13,000枚が配布されたとのことですが、実際には対象地域でもチラシを受け取っていない住民が続出しており、ポスティングが適切になされたのか疑問です。また、結果的に4箇所で計159名が参加したとのことですが、影響を受ける住民の数に対してあまりに少なく、地域住民との対話が著しく不足しています。また、素案説明会における東京都の説明は、極めて一方的かつ不十分なものであり、切り倒される樹木の本数、工事に伴い封鎖される範囲、建設される取水管理施設の大きさ等を尋ねても、「詳細は決まっていない」、「まだ素案の素案の段階ですから」等の言い逃ればかりでした。一方、その背後では、工事業者の選定等を急速に進めていたのです。

私達は11月上旬から、公聴会の開催や素案の見直しを求める署名活動を始めましたが、未だにこの計画は一部の住民にしか知られていません。工事によって破壊される公園内で署名を呼び掛けても、そんな計画は初めて知ったと驚き嘆く住民が大半です。また、あまりに水面下で物事が進められ8月下旬に素案が突如提示されたため、原寺分橋周辺の立ち退き対象地域では、今も住宅の建設が行われている状況です。

なお、前掲表に記載の通り、今年10月12日にはパシフィックコンサルタンツ㈱が「善福寺川上流調節池(仮称)工事に伴う詳細設計」を4.8億円で落札していますが、同社は、富山市における官製談合を理由に、国土交通省より2022年10月21日から4か月間の指名停止を受けたほか、2022年4月に起きた外環道工事の大泉JCTにおける事故原因となったシールドトンネル工事の設計ミスを理由に、国土交通省より今年10月27日から1か月間の指名停止を受けています。こうした業者に対し類似のシールドトンネル工事を随意契約で委託することは適切なのか疑問に感じますが、東京都は「国土交通省の指名停止であって、東京都の指名停止ではない」との形式的な説明に終始しており、地域住民の不安を著しく軽視しています。

私達は今年11月28日に東京都庁を訪れ、10,000筆を超える署名を提出しましたが、東京都はこれを無視し、11月30日の東京都議会都市整備委員会にて、「素案」から「案」へと格上げを強行しました。

なお、私達は8月下旬に行われた素案説明会では住民周知が不徹底であると主張し、公聴会の開催を東京都に対し再三求めてきましたが、11月中旬になって漸く、12月1日~2日にオープンハウス形式の説明会を実施するとの不十分な回答があったのみです。これは、「素案説明会」の追加開催ですらなく、11月30日の東京都議会都市整備委員会後の「案説明会」として、意図的に遅い日取りに設定されたものです。そもそも私達が求めるのは、住民が公開の下で意見陳述し相互に質疑・議論を行うことのできる「公聴会」であって、一方的な「説明会」ではないと申し入れましたが、東京都からは「要望を増やすようならば、12月の説明会すら開催しない」との脅しを受けました。

また、12月1日~2日の案説明会は、工事対象となる3地域のうちロケット公園/センター広場に近い施設で開催されたのみであり、関根文化公園及び原寺分橋の付近の住民に対する配慮に欠けています。なお、会場には、来場者が付箋に意見を書き、各工事対象地域の計画図の上に貼ることができるコーナーがありましたが、反対意見が圧倒的大多数であり、特に説明会場に近いロケット公園/センター広場に関しては、反対意見で埋め尽くされていました(下図)。

これまで述べたように住民を置き去りにして強引に事業を進める東京都の姿勢は、災害対策に必要な行政と住民との信頼関係の醸成に逆行しており、地方自治の本質とされる住民自治と団体自治を軽視していると言わざるを得ません。

最後に、上記経緯を法的観点から見るに、私達は、東京都の手続きには違法性があると考えています。東京都市計画河川第8号善福寺川は、これまで善福寺川流域を対象範囲とし、当該都市計画に基づき護岸整備等が行われてきました。今般東京都は、巨大な地下トンネル式調節池を計画するに当たり、都市計画法(以下、「法」という。)第21条「都市計画の変更」に基づき、対称範囲を平面的(流域以外の住宅地等)にも立体的(地下)にも大きく拡大することで行おうとしています。しかし、計画の対象となる範囲も工事の内容も従前の計画とは全く別の物であり、かつ、環境にも人々の暮らしにも甚大な影響を与える内容であって、本来、変更ではなく新たな都市計画として扱われるべきものです。

そのうえ、東京都が長期に亘り住民に秘密裏に準備を進め、騙し討ちのように今年8月に突如素案を提示し、住民に対して不十分な説明に終始し、住民による度重なる公聴会開催の要請も1万筆を超える署名も無視し、僅か3か月で案への格上げを強行したことは、「法第16条第1項」及び 以下の国土交通省「都市計画運用指針第12版(令和5年7月11日一部改正)343頁」若しくはその趣旨に明らかに違反しています。

「法第16条第1項では、都市計画の案を作成しようとする場合において、必要があると認めるときは、公聴会・説明会の開催等住民の意見を反映させるために必要な措置を講じることとされている。これは、都市計画の案が作成された後の手続としての法第17条の縦覧及び意見書の提出とは別に、都市計画の案の作成の段階でも住民の意見をできるだけ反映させようという趣旨である。特に、法第16条第1項において公聴会の開催を例示しているのは、住民の意見を反映させるための措置として、住民の公開の場での意見陳述の機会を確保するべきという趣旨であることに留意する必要がある。この点、説明会は、都道府県又は市町村が作成した都市計画の原案について住民に説明する場と考えられ、公聴会は、都道府県又は市町村が作成した都市計画の原案について住民が公開の下で意見陳述を行う場と考えられる。都市計画への住民参加の要請がますます強まる中で、都市計画決定手続における住民参加の機会を更に拡大していく観点から、今後は、都市計画の名称の変更その他特に必要がないと認められる場合を除き、公聴会を開催するべきである。」

今年11月30日付の東京都議会都市整備委員会の議決を受け、都市計画素案が都市計画案となり、既に法第17条に定める公告縦覧が始まっていますが、そもそも違法な手続によって作成された以上、この都市計画案も違法なものと考えます。私達は東京都に対し、現行案を撤回し、地域住民との対話のもと、環境保護と迅速な水害対策に配慮した新たな素案を策定することを求めます。

なお、現行案を撤回すべきとの立場ではありますが、縦覧期日である今年12月15日までに、署名に協力いただいた多数の住民及び利害関係人が、法第17条に定める「意見書」を東京都に対し提出する予定であることを申し添えます。

<お問い合わせ先>
・メールアドレス: sekirei.bridge@gmail.com
・計画見直しを求めるオンライン署名: www.change.org/SaveZenpukuji
・X(旧Twitter)アカウント: @zenpukuji_green




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