短いバカンスの話
それは突如訪れた。短いバカンスである。
短いバカンスとは、私が何度かやってきた「長いバカンス」の派生にあたる。職と職の合間に発生する履歴書には書けないふわふわした期間について、開き直って楽しむつもりで「長いバカンス」などといつからか言い出した。
長いバカンスの「長い」とは、終わりが見えないことを表してもいる。いつまで続くかわからない、しばらく見通しが立たない。それはつまり、視界一面が自由で行き先がないことでもある。どこまでも続くようなその風景が、確かにバカンスに見えた瞬間があった。
さて、短いバカンスである。終わりは見えている。いろいろあって捻出できた短いバカンス期間ではこういうことをこなしていこう、普段はできないことをしよう、そんな気持ちで事前にやること/やりたいことリストを作成していた。以下がその一例である。
髪を切る
服を売る
写真の整理
レンジフード掃除する
一度以上は自転車乗る
バスタオルのつけ置き
風呂の掃除
マイナンバーカードの申し込み
ヒゲ脱毛のカウンセリングに行く
プロテイン始めるか検討して試す
天井照明の交換を検討
パフェ食べたい
プリン食べたい
カラオケしたい
飲み歩きたい
大きい風呂に入りたい
ファブル全部読む
なんという箇条書きするまでもないラインナップ。そんなのいつでもできるのでは、普段からやっていることなのでは、いや完全にその通り。実現可能なものを優先したせいか、また生活が趣味と化しているためか、とにかく夢が詰め込まれなかった。そして上記は早々に完遂しており、大半は開幕ダッシュ期間であっという間に終えた。まあそうなるだろう。
短いバカンスだからこそ、もっと限界まで攻めることができたかもとは思う。短いと言っても昭和や平成のサラリーマンなら定年まで一度も訪れない長さの休暇。これだけの期間大人がヒマなら、やはり遠出などを考える。ご時世的に叶わないものはありつつ、平時なら丸ごと海外に行ったりしてもよかった。そもそも本州から出たことがない私であれば、本州の外へ出る、といった目標を掲げても良さそうだ。せめて自宅以外のどこかに一度以上泊まる、にすれば現実的目標にも感じる。しかし結果的にはずっと23区内に収まってしまった。余談だがバカンスに入る少し前、久しぶりに県境を越えて野毛へ飲みに行ったのがこの半年で最大の遠出になる。
有り余る時間を浪費してしまった感覚は拭えないが、おそらく今最初からやり直してもこの感じになるだろう。あまり気張らず、なんとなく望み通りやった結果がこれである。いつもより穏やかに過ごした分だけ家や生活のことと多く向き合い、少しだけ心の体力がいる不要不急の用事をいくつかパスした。次という現実が見えている「短いバカンス」は、地に足がついた日々を私にもたらした。
というわけで、短いバカンスの間にやりたいことリストの残り少ない一つである「noteを書く」にもチェックを入れる。他にも多少残っているが、シンクのつけ置きとか全然いつでもできるやつなので、普通に仕事しながら気が乗ったタイミングでやりたい。