もう一度死なせ・い
父の遺品を整理しに来て、俺はそいつと出会った。
父は機械工学の研究をしていた、と聞いていて、その他のことは何も知らない。俺は高校卒業と同時に家を出たし、それ以前から父とマトモに話したことなんて無かったから。
だから俺は最初、それが何なのか分からなかった。
「初めまして、ユウゴ。早速ですが、あなたには二つの内どちらかを選んでもらわないといけません」
滑らかに話すそいつは、だけど関節が明らかに人間のものでなく。
「今すぐ僕の頭をハンマーで粉々に叩き割り、ゴミ袋に詰めるか。
それとも、あなたの命をかけて、僕のことを守り抜くか……です」
それはアンドロイドだった。
問題は、それが俺の知っている科学水準を遥かに超えた『人間らしさ』を備えていたことと。
「どちらかです。見なかった事には出来ないし、置いて帰る事も出来ない」
決断を迫るその機械人形は。
俺が死なせてしまった兄に、よく似ていた。
【続く】
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